白ひげが傘下の海賊に刺された。
それは遠く離れたミコトにも見え、目を丸くする。
その刺した男はすぐマルコに取り押さえられ、何か叫んでいたがミコトには何も聞こえなかった。
(やっぱり……変えられない…筋書きは絶対なのね…)
ミコトは白ひげが刺されたことよりも何より変えようとしたのに未来は変えられないものだと受け入れた。
もうこの先の事は彼女の知る物語ではなく、ただ、最後に見たのは白ひげが刺される場面…
だからこそマルコに白ひげから離れるなと忠告していたのだが、神はそれを許してくれなかったらしい。
「ミコト!!」
「はい」
センゴクに名を呼ばれミコトはすぐ顔を挙げ一瞬にして電伝虫を持っているであろうバギーの元へ行き、バギーと囚人達を凍らせる。
「……………」
白い息を吐きながらミコトは白ひげを見上げる。
そこには反乱したはずの海賊を抱きしめていた。
それを見てミコトはすぐ目を逸らし、目の前で繰り広げられる戦争を見ていた。
そこに居る海軍、海賊達は己の目的のために命をかけてここにいる。
エースを、仲間を救うため。
己の正義を貫くため。
だがミコトは違った。
ミコトはもうこの先の物語は知らなかった。
いくら原作を知っているとしても彼女は完結する前にこちらに転生した人間。
エースが捕まり、戦争が起きる事は知っていた。
しかしその先の事は知らない。
知る術も持たないただの海兵になってしまった。
だから彼女は筋書きを書き直せないこの世界を、エースの最後を見届ける為にこの場にいる。
己の覚悟がどこまで通じるのかを見極めるために来ていた。
命や正義など彼女にしてみれば小さな理由であり、彼女には必要のないモノ。
この戦争の結末がどうであれもう3人とは会えないと覚悟してこの戦争に参加する。
それが彼女の決めた事なのだから。
ミコトは何も考えず、ただ海賊を処刑するためにここにいるのだ。
だけど心は白ひげに寝返りエースを奪いたいと悲鳴を上げていた。
「お帰りー」
大将3人がすでに先に下がっていたので3人のもとへ飛んで戻っていくと青雉がゆっくり降りてくるミコトの手を取って降ろしてくれる。
笑顔で迎え入れる青雉に微笑み、心の奥を悟られないように隠す。
「白ひげ、動き出しましたわね…」
「まあ、あんな事されて怒るなって言うのは無理だしねェー…ミコトちゃん見た?サカズキの演技。」
「いいえ?おじ様達のところにいましたから…」
ちょっと笑ってる青雉に首をかしげ、ミコトは不思議そうに青雉を見る。
「それがもう、おもしろ…」
噴出しそうな青雉だが突然足場が斜めになっていき、バランス感覚が狂う。
「おっとっと…」
「あらあら……」
青雉とは違い、ミコトは急に斜めってしまい踏ん張る事も忘れて赤犬へと勝手に寄って行ってしまう。
「こういうことも出来るのですね、白ひげは…」
「…………」
「ミコトちゃんさァ〜なんとかしてくれないかな〜…立ち難くてねェ〜おじさん足がもうプルプルなんだよね〜」
「そうですね…これじゃあ戦うにも戦えませんし…」
黄猿に言われ、赤犬の腕に掴みながらミコトは指を1つ鳴らす。
するとゴゴゴ、と音をさせて斜めっていた地面がゆっくりと元に戻っていく。
「!…戻っていくぞ!?」
「なんで…」
戻っていく地面に海兵も海賊達も唖然とするが白ひげだけはミコトを見上げていた。
白ひげと目が合い、ミコトは地面が戻っても赤犬の腕に自分の腕を絡めて白ひげに手を振る。
「離さんか、女…」
「えー!いいではありませんか!このままでも何も問題はありませんわ」
「あるんじゃボケ。精神的苦痛でわしの戦力が減らされるわ」
「あら、ならわたくしがずっとお傍についてサポートして差し上げますわ」
「……………」
「ほらほら、離れて。」
ね?、と可愛らしく首を傾げるミコトに赤犬は照れているのか、それとも本気で嫌なのか分からないが額の青筋が1つ、また1つと増えていく。
それを見かねた黄猿が青雉に目で訴え、青雉は仕方なくミコトの肩に手をやって離れさせる。
そんな青雉にミコトは頬を膨らませて青雉を見上げる。
「クザンさんってば!今せっかく楽しかったのにー」
「まあまあ、サカズキで遊ぶならこの戦争が終わってからでもできるし、ね?」
「ぶー」
「ほら、前見てよミコトちゃん。」
「あら。」
楽しかった、と自分で遊ぶ、という言葉を聞きサカズキがまた青筋を立てているとは知らず青雉は目の前を指差す。
そこには白ひげの攻撃がこちらに向かってきていた。
「止めなきゃ怒られるよねー…」
「当たり前じゃろ」
「面倒だけどねェー、センゴクさんに怒られるのはもっと面倒だしねェー…」
「ではやりますの??」
「そうだね、それしかないでしょ」
白ひげの攻撃に焦る事無く4人は腕を上げる。
そして、
「危ないですわねェ」
「さっさと包囲壁張らねェからだ」
「お前の氷のせいじゃろうがい…」
「オー…君が溶かせばいいよォー……サカズキ」
ミコトを含む対象が白ひげの攻撃を逸らし、処刑台は無傷となる。
ミコトは遠くにいるルフィとアスカを見て気付かれないようにホッと息をつき、白ひげに目を移す。
「構うな!突っ込め野郎共ォ!!!」
「「「ウオオオオオオオ!!!!!」」」
海賊たちは大砲も恐れず処刑台を目指して進む。
「恐いねェ………」
「全員が相当お怒りだな……」
そんな海賊達を見下ろし黄猿と青雉は静かに呟き、ミコトは目を細める。
包囲壁を発動させるもオーズの体重、そしてその血で一部だけ動かなくなってしまう。
「あら…トラブルですわ」
「国引きの子孫か…血が入ったか?」
ミコトは『困りましたね』、と頬に手を当てるがどうも困ったようには見えない。
「締まらんが…始めろ赤犬…!氷を溶かして足場を奪え!!」
センゴクの命令に赤犬は"流星火山"でマグマを降らせて氷を溶かしていく。
「まあ、綺麗」
「ミコトちゃん…」
笑み深めて眺めて全く緊張感のないミコトに青雉は苦笑いを見せた。
その頃広場の向こう側では赤犬のマグマが氷を溶かしたせいで足場を失い、海賊たちは熱い海のなかを浮かぶしかなかった。
しかしそれを海兵達が見逃すはずもなく、砲弾が海に浮かぶ海賊達に集中してしまう。
ドォン、という重い音をさせたと思ったら広場に広がるように衝撃が襲い掛かり、ミコトはその衝撃からでる突風から逃げるように青雉の背中に隠れる。
「ミコトちゃ〜ん…」
「だって、風が強くて髪の毛が乱れますし…」
「おれも髪が乱れるんだけど…」
「あらクザンさんはいいじゃないですか。いつも寝癖がついていますし」
「え゙…そんなについてた?」
「はい」
笑顔で答えるミコトに青雉はあちゃ〜、とバツの悪そうな顔をする。
「だからいつもセンゴクさんにサボったのバレてたのね…」
「ええ、おじ様にバレバレでした」
ほのぼのと会話をしているとオーズが立ち上がる。
「まあ、起きちゃいました…」
「あーらら…でも長くなさそうだねー」
青雉の言葉にミコトが『そうですね』、と返すと黄猿が動いた。
「撃て!立ち上がろうとも虫の息だ!!」
「オ〜…いいよォ…わっしがやろう」
「黄猿さん!」
「こういう時は…頭をブチ抜くといいよね〜〜…」
そう言って指を光らせオーズの頭へと狙うと包囲壁の向こうからミコト達の前に水柱が広場に入り込みルフィが大将達の前に着地する。
「あらら…とうとうここまで……お前にゃまだこのステージは早すぎるよ」
「元気ねェ、ルー君は」
「堂々としちょるのう…ドラゴンの息子ォ…」
「恐いね〜…この若さ………」
四大将を前にルフィは臆する事なく睨みつけていた。
ただ姉を目の前にすると少し困惑を見せ、青雉は目を細める。
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白ひげの衝撃を大将が逸らしたときのセリフ…あまりにも三人のキャラが掴めてないから舞台裏みたいな会話になってしまったっていうね…(;^ω^)
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