ナミは自分を追いかけてきた鳥に乗り海中を進む。
プールから抜ければそこはサンゴや魚が泳ぐ空中の海だった。
海水も共に浮いている島からナミは脱出し、空中を降下していく。
そのまま真下にある火口の湖へと落ちた。
…のだが……
「―――ッ!!!」
その湖には海王類にも劣らない怪物が数多く生息しており、飛び込んできた鳥とナミに気付きゆっくりと近づいてくる。
そして怪物達は我先にとナミと鳥を食べようと口を開いたその瞬間――…
「"ミスト・アロー"!!」
頭上から無数の白い固まりの矢が怪物たちに降り注がれた。
ナミは目の前で無数の白い矢に注がれ血を流す化け物達に目を丸くさせていると新たに左右に白い網状のモノが現れた。
「"霧網"」
「―――っけほ!げほ…!!」
「ク、クアー!!?」
その網状のモノはナミ達が逃げる前に目にも留まらない速さで1つとなり、まるで漁の網のようにくっ付きナミ達を囲む。
逃げ出そうと暴れても鉄のように頑丈な網に足掻くだけ体力が奪われていく。
網が引かれれば深く潜ってもいなかった水の中から一気に外へ上げられ、突然の酸素にナミはつい咳き込んでしまう。
鳥も理解できない出来事に多少は混乱しているようで、オドオドとしていた。
「あーあー…ずぶ濡れっすね〜」
「!!――モ、ニカ…!!」
咳き込んでいたナミは背後からの聞き慣れた声にハッとさせ振り替える。
そこには足だけが霧となり宙に浮いているモニカが立っていた。
ナミを引き上げた網はモニカの霧で出来た網だった。
その証拠に引き上げられている網の色は白く、その先には吊り上げている機具さえない。
霧となり消えている網の先を見た後、ナミはモニカへ睨みつけるように見つめた。
モニカを睨みつけるかのように瞳を鋭くさせいたが、ナミの顔色は見つかり捕まったと血の気がなく青ざめていた。
そんなナミにモニカは目を細め小さく笑みを深め岸へと向かって移動するとゆっくりと鳥とナミを傷つけないように静かに降ろす。
何故か網も解除し、パチン、とモニカが指を鳴らせば霧で出来た網は一瞬で霧となり散っていく。
網を解除し体の自由を奪うことなど一切せずニコニコと笑って自分を見つめるモニカにナミは警戒心を高め1歩2歩と下がる。
自分に怯え逃げ出そうとする素振りを見せるナミを見てもモニカはまだ笑っていた。
余裕の表情を浮かべるモニカにナミはグッと顔を歪めたその時…
「クエエエエエ!!!」
ナミが怯えているのが分かったのか、モニカを敵だと判断した鳥はモニカへ向かい電撃を放出させる。
突然の行動にナミは止めようとしても止めきれず、モニカは鳥の電撃をもろに受けてしまった。
しかし――
「酷いっすね〜」
「ク、クエ…ッ!!」
「え…!?」
鳥の電撃をもろに受けたはずのモニカだったが、鳥の細い首を掴んでいた。
その間にもモニカは電撃を浴びて身体を光らせている。
電撃を浴びているのに関わらず平然としているモニカにナミは唖然としていた。
「クエー!!クエ!クエエエ!!」
「ねえ、ちょっと黙ってて貰えませんかねェ……
その首、へし折られたくなかったら…ね?」
「ク、エ…ッ!」
唖然としているナミの目の前で鳥は必死にモニカの手から逃れようと暴れる。
モニカも最初は好きにさせていたが鬱陶しくなったのかニコリと笑みを深めながらも低い声で脅しをかけた。
本気だと言わんばかりにモニカはグッと首を掴んでいる手の力を強め、その力が強まったのを感じた鳥は顔を青くさせ身体を震わせながら大人しくなる。
電撃も治まり、身体を黒こげにさせることもなく、モニカは大人しくなった鳥に『いい子っすね』と笑みを深め手を離してやる。
モニカが手を離したその瞬間鳥は目にも止まらない速さでナミの後ろへと隠れ、身体を震わせながら顔を覗かせモニカを怖々と見つめる。
鳥の羽音によって唖然としていたナミは我に返り、鳥を庇いながら先程より強くモニカを睨みつける。
睨みを強めるナミにモニカは笑みを浮かべながら『わァ〜怖いっすねェ〜』と心の篭もっていない声で呟いた。
「まあ、まあ、そう硬くならず…アタシと戻りましょーよー。今ならシキたんも許してくれるでしょうし、アタシも口添えしてあげるっすから!」
「い…ッいやよ!!私は仲間の所に帰るわ!!」
リラックスさせるかのようにモニカは『敵じゃないよ〜味方だよ〜』というオーラをかもし出すが、先程を見せられ味方だと思う方が馬鹿である。
首を振るナミにモニカは重い溜息をつき、モニカの溜息にナミはビクリと肩を揺らし。
『あーあ…まじメンド〜』と呟きながらモニカはナミの傍に歩み寄るわけでもなく、能力を使うでもなくその場にしゃがみ込んだ。
ナミはそんなモニカの行動に怪訝そうに見つめ、モニカはナミへと顔を上げる。
「何が不満っすか?シキたんはああ見えても優しいし、能力のある人間は守ってくれるし、何より財力もあるっすよ?ただちょっと…時々…いや、頻繁に面倒くさい時があるだけなのに…」
「優しくても…守ってくれるって言ってくれても…財力があっても!私はルフィ達じゃないと駄目なの!!他の海賊なんていや!!」
「………」
シキのいいところ(とも言えないのもあるが)を言っても首を縦に振らないナミにモニカは嫌そうな顔でもなく、面倒だと隠すこともなく、ただ目を細め見つめていた。
そんなモニカにナミは戸惑いが生まれ開きかけた口を閉じてしまう。
黙り込んだナミにモニカはクスクスと笑みを零した。
「な、なによ…」
「いやねェ…羨ましいなァって思ったんす…」
「羨ましい…?」
突然笑い出したモニカにナミは戸惑いの色が隠せず、戸惑いと怪訝が含まれたナミの呟きにモニカは笑みを深め答えた。
「アタシも実はシキたんに半ば誘拐されて来たんす」
「え…」
何でもないように語るモニカのその言葉にナミは目を丸くさせた。
予想していたのか、モニカは驚きの表情を浮かべるナミに笑みを深める。
「ま、アタシは海賊って訳じゃなくて名の無い研究者だったんすけどね……インディゴ先輩の研究に興味があったから財産もあるシキたんの仲間にすぐなったんす。…当時は仲間なんていなかったし、何よりアタシは流れに身を任すタイプなんで。」
「家族は…」
「いないっすよ?アタシ、孤児だったんで。」
「…………」
ナミはモニカの言葉を聞き、少し納得してしまった。
電撃が効かなかった時といい、先程の脅しといい、シキ達に囲まれても臆せず平然としかも呑気にいられる性格といい…一般人とはかけ離れてはいるが見た目は確かに海賊らしくない。
どちらかといえば白衣から医師や研究者しか浮かばないだろう。
これで強面だったり体つきがよかったのなら海賊としては納得できただろう。
マジマジと見つめるナミにモニカは苦笑いを浮かべた。
「だから他の事を投げ出せるほど信頼できる仲間がいて羨ましいんす……だから、余計にどうしてそこまで仲間に執着するか分からないんす…何より人に執着を持てることが羨ましい……アタシは小さい頃から肩身の狭い思いをしてて…それが嫌だからアタシは施設を飛び出して無人島で研究三昧だったんす……ねえ、シキたんについていけば未来は安泰っすよ?それにシキたんに逆らったらいくら能力を買ってもらってるとはいえ危険だ…確実に殺されるっすね。」
「…それでも……シキに逆らい殺されたって仲間にはならない…」
「本当にやめた方がいいっすよ〜?大人しくしてた方が利口だと思うんすけどねェ〜…どうせその仲間達も殺されてしまうんだし。」
肩をすくめるモニカの言葉にナミは目を伏せた。
ルフィ達が倒されるとは思っていない。
でも、無事でいられるとも思っていない。
今一番危険なのは武器を持たず攫われたナミだろう。
仲間の身の心配より自分の身の心配をした方がいいというのは知っている。
モニカも暗にそう言っているようにも見えた。
しかしそれでもナミは首を縦に振らず、伏せていた目をモニカへ戻し――
「私の仲間はあいつらだもの…あいつら以外の仲間なんて考えられない。」
強い眼差しでそう言い切った。
ナミの意志の強い言葉に流石のモニカも『そうっすか。』とそう呟くしかなく、ゆっくりと立ち上がる。
モニカが動いた瞬間ナミはビクッと肩を揺らし怯えたようにモニカへ目線を送る。
手を上げるモニカを見てまた連れ戻されるのか、と思いナミは逃げ出したいが逃げ出せない悔しい気持ちを押さえグッと拳を握り、霧を向けられる衝撃に耐えるよう目を瞑った。
しかし…
「あっちから降りたらあんた達の船があるっすよ」
上げられたモニカの手は霧とならず、ナミの手を掴むこともなく、横へと逸れどこかを差していた。
「……は…?」
指を差すモニカにナミは呆気に取られ間抜けな声を零す。
そんなナミをよそにモニカは『だから、ここを降りたすぐにあんた達の乗ってた船があるんすってば』と再度同じ事を呟く。
「あるって……え?逃がしてくれるの…?捕まえないの…?」
「はいっす。」
「な、んで…?だってあんたシキの手下じゃ…」
「まあ、シキたんの仲間だけどまた監視とか面倒だし、あんたアタシが言っても言うこと聞きそうにないし。」
「…………」
肩をすくめ笑うモニカにナミは口を開けてポカーン、としていた。
先程の緊迫した空気はなんだったんだ、と言わんばかりに張り詰めていた空気は粉々に崩れ去った。
『ほら!早く行かなきゃシキたん達に見つかるっすよ?』というモニアの声に我に返ったナミは戸惑いながら、そしてモニカを警戒しながらも荷物を持ち直し岩を登って下へ降りていき、後ろに隠れていた鳥もモニカに怯えながらナミに続く。
「…………」
モニカはサニー号の下へと向かったナミに手を振って見送る。
すると大きな音と共にルフィの声とナミの悲鳴が聞こえたその瞬間鳥が放ったであろう電撃が辺りを明るくさせた。
鳥を見て喜ぶルフィの声らしき声がモニカの耳に届き、モニカはくすりと笑みを深める。
その瞬間、湖深くにいた海獣が姿を現した。
その海獣はナミ達が襲ったのとは比べ物にならないほど大きく凶暴性が強い。
背を向けるモニカを食べようと襲い掛かった。
だが――…
「ギャアアア―――!!」
海獣はモニカが振り返り腕を振ったその瞬間、鋭利な刃物に切り刻まれたように身体をバラバラにさせながら生き絶え、ボトボトと肉の固まりは海へ派手な音を立てながら落ちていく。
モニカが肉片が落ちていくのを笑みを浮かべながら見つめ、腕を一振りする。
するとシュルッ、と音がモニカの耳に届き、一瞬だが糸のようなものが太陽の光りで反射する。
モニカが湖へ目線を落とせばナミ達を襲った海獣と先程の海獣の血で真っ赤に染まっていた。
「あーあ…湖の水が血で真っ赤っか。」
モニカは見事なまでの真っ赤な湖とその水面に浮かぶ動物だった肉片を見下ろし、不快そうにそう呟いた。
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