ナミがモニカに見逃してもらい脱出しルフィと出会っていた頃…アスカは―――…
「どこ、ここ…」
荒野にいた。
あれからアスカは島を転々とし仲間を探していた。
しかしあんなにも歩き回り探し回ったのに関わらず仲間の1人もおらず、すでにアスカの体力も限界となる。
巨大ウサギを出現させその背に乗り込んで広がる荒野を歩いていた。
「ナミも見つかんない…ルフィも見つかんない…ゾロも見つかんない…ウソップも見つかんない…ロビンも見つかんない…サンジも見つかんない…フランキーも見つかんない…チョッパーも見つかんない…ブルックも見つかんない…ロビンも見つかんない……あ、ロビンは言ったか…」
仲間の名前を呼んで中々見つからない苛立ちを抑える。
人通り言ったのだが、また同じ名前を呟き口を閉じる。
荒野を見渡せば大量のサボテンが障害物のように生えており、真っ直ぐに進めない苛立ちも強くなる。
「……もー…ここどこォ?」
私はゾロじゃねェ!、と何度叫んだか…その度にゾロがくしゃみをしていたのはアスカが知る由ではなくウサギに揺られ暇な為目を閉じて仮眠を取ろうとした。
しかしその時――…
「ん?」
ブロロロ、と何故かエンジン音がアスカの耳に届き目を瞑ったばかりのアスカはパチリと目蓋を開き音のする後ろへと振り返る。
「凄いですね〜!!このザニガニさん!!」
そこには赤いザニガニをバイク代わりに改造し乗り込んでいるフランキー、ロビン、ブルックがいた。
時代が時代ならば虐待だと怒られるだろう。
しかしここにそんな常識人などおらず、改造したバイク(ザリガニ)を褒められフランキーは気を良くし『ザーリーダビットソン』と名をつける。
フランキーの即席につけた名前をブルックも気分よく即席でザーリーダビットソンと連呼しながら歌を歌い始めた。
「ロビーン!!フランキー!!ブルックーー!!」
ロビン達を視界に納めたアスカは浮かない顔から一変させ嬉しそうに笑みを浮かべながらウサギの上から手を振って声を張り上げ3人の名を呼ぶ。
アスカの声が届きフランキーはザーリーダビットソンを止め、3人はアスカを探して辺りを見渡していた。
「あ?…おー!!嬢ちゃんじゃねェか!!」
「無事だったのね!アスカ!」
「アスカさん!無事でよかった〜!」
辺りを見渡しているとフランキーが最初に見つけ、フランキーの指差す方へ2人も目を移せばそこにはウサギに乗ってこちらに駆け寄ってきていたアスカがいた。
ロビンもブルックも離れ離れになった仲間の1人と再会し、とても嬉しそうに笑う。
「3人も無事だったんだ。」
「おう!!おれ様がやられる訳がない!」
「うん、フランキーは殺しても死なないって知ってるから心配してなかった。」
因みに、ブルックもその中に入っていた。
正確に言えば男性陣(チョッパーとウソップ以外)は全く心配の"し"文字もなかった。
そんなキッパリさっぱり真顔で切り捨てるアスカにフランキーは『よせやい!照れるぜ!!』と何故か照れる。
それもいつものことなのでアスカは『乗れ!』と気分よく叫ぶフランキーの言葉にウサギから降りてロビンが詰めて空けてくれた席へと座った。
フランキーは自分とロビンの間にアスカが乗り込んだのを見てエンジンをかけ再出発する。
ブルックは仲間と再会し上機嫌に歌を続け、アスカはウサギを消し出発したバイクから受ける風に気持ちよさ気に目を細めロビンとこれまで行った島々の事を話したり聞いたりと話しに花を咲かせていた。
「ん?」
「あ、なんか見えて来ましたね…」
「〜〜〜〜ッッ!!!」
女性達が楽しくお喋りをしているのとブルックのご機嫌な歌をBGMにフランキー達は進む。
やはり女性が1人でもいると華がありいいが、女性の話し声が聞こえれば一気に華やかになり男としては気分がいい。
今まで離れ離れになっていた仲間なら尚更だろう。
この調子でルフィ達も見つけるぞ、とフランキーが言いかけたその時、遠目だが街のような建物が見えた。
その瞬間アスカに鼻を刺すような匂いが襲ったが、ロビン達はしないのか鼻を押さえるアスカには気付いていない。
「うおッ!!?」
「…!!」
アスカが鼻を押さえたその時、バイクとして改良されたザーリーダビットソンはエビらしく後ろに大きく跳ねる。
その為大きな揺れがフランキー達を襲い、鼻を押さえるのに精一杯なアスカは掴まることが出来ずザーリーダビットソンから落ちてしまった。
「アスカ…!」
「〜〜ッッ!!!」
ドサ、と音を立てて荒野の地面に身体を叩きつけたアスカにロビンは慌ててザーリーダビットソンから降り、アスカに駆け寄る。
ロビンに抱き起こされたアスカは痛いし臭いしで珍しく涙目でロビンを見上げた。
「アスカ…?鼻を打ったの?」
「〜〜〜っ」
何も喋らないアスカにロビンは不思議そうに小首をかしげ、鼻を打ったのかと問う。
違う、と言いたいのに言えず、アスカは涙目をそのままに首を必死に振った。
同時にフランキーに叱られ殴られていたザーリーダビットソンもアスカに合わせるかのようにイヤイヤ、と首を振っていた。
「震えてますね…」
「だーめだ!言うこと聞かねェ!」
アスカの様子も可笑しいのに気付きフランキー達はとりあえず目の前の街へと向かうことにする。
普段とは違う様子のアスカに流石のロビンも心配になったのか足取りが重いアスカに連れ添うようにアスカの肩に手をやりフランキー達の後に続く。
しかし――
「ん゙ん゙ーーーーッ!!!」
「アスカ!?――待って!フランキー!ブルック!アスカの様子が可笑しいの!」
「なに?」
「ええ!?アスカさん!?どうかしましたか!?」
街へ近づけば近づくほどアスカの足取りは重くなりついには立ち止まってしまった。
様子の可笑しいアスカが立ち止まり、ロビンは気付かないフランキーとブルックに声をかける。
ロビンの声かけにてようやく気付いたフランキーとブルックが振り返ったその瞬間、アスカはもう我慢できないと言わんばかりに脱兎の如く後ろへと逃げていく。
後ろへ逃げるアスカにフランキー達は目を丸くさせ、お互い顔を見合わせた後慌てて遠くで蹲っているアスカのもとへと駆け寄った。
「アウ!!どうした!嬢ちゃん!!」
「っさい…っ」
「サイ?サイなんていましたっけ?」
「くさいの!!!」
「「「臭い…?」」」
蹲っているアスカにロビンが背中に手をやり覗き込む。
身体を震わせ何かに耐えているアスカにフランキーは『珍しいな…』とどこか感心しているような思いで見つめ、声をかけるとアスカが蚊の鳴くような声で呟く。
『さい』しか聞こえなかったブルックは動物のサイだと思ったのか辺りを見渡すも動物のサイは見当たらない。
そんなブルックの呟きが耳に届いたアスカは声を張り上げ渾身の力で叫んだ。
またまたアスカにしては珍しい行動にフランキー達は耳に指を突っ込みながら、また何かに耐えるかのように鼻を押さえ蹲るアスカに3人同時に首を傾げる。
「あれっ!あれから…においが…!」
「あれ…?」
震える指でアスカはある物を指差す。
それはまるで街を囲むように植えられている木だった。
3人が振り返りその木を見るのだが、アスカのような異変は感じられず平然としていた。
アスカは怯えるように木を見つめながら鼻を押さえロビンに縋りつく。
その様子を見てロビンはアスカを守るかのように小さな体に腕を回し、何かを思いついたようにハッとさせる。
「もしかして…さっきのザニガリくんもあの木の匂いで逃げたのかしら…」
「ああ?匂いだァ?」
ロビンの推察にフランキーは怪訝そうに眉を顰める。
フランキーの怪訝そうな声にロビンは『ええ』と頷きアスカを見下ろし鼻を押さえて自分に縋りつくアスカの背中を優しく撫でてやる。
「動物にしか感じられない匂いをあの木が放出してるのかもしれないわ…アスカは動物系のウサウサの実を食べたウサギ人間…嗅覚も人間より優れているもの…」
「…………」
ロビンの言葉には信じられないが、確かに自分達は平気でもザーリーダビットソンや動物系の実を食べたアスカは異様に反応を見せ嫌がっている。
あの無敵なんじゃないかと思わせる態度を崩さないアスカを一瞬にして震える仔ウサギにしてしまうのを見せられれば信じるしかなかった。
「しゃあねェなァ……おら、おぶってやるからずっと鼻押さえとけ」
「ふぁい…」
「息も止めとけ」
「むりふぇす…」
余りの臭さにいつもの傲慢な態度ではなく敬語になっているアスカは涙を溜めながらロビンの胸から広く硬いフランキーの背中へと移る。
『じゃあ、いくか。』とアスカが乗り鼻を押さえ自分の背中に顔を埋めたのを確認したフランキーは街の中へと入ろうと歩みだす。
ロビンとフランキーもそれに続き、アスカは街に近づけは近づくほど臭い匂いがキツクなり暴れてでもフランキーの背中から脱出したいと思ったが、それではいくらたっても街に入れないと自分でも分かっているのか必死で我慢していた。
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