(13 / 32) ストロングワールド (13)

街に入れば匂いも治まり大分ましになる。
しかしまだ匂いが鼻に残っているのかフランキーの背中から降りる事はなかった。
背中から降りろと言っても嫌だと首を振って降りる気配もなく、フランキーが手を離して降ろそうとしても海楼石がなければ元々一味一番の力持ちの持ち主…フランキーの逞しい胸元に腕を回し足さえも回し意地でもくっ付いていた。
どうしても降りる気のないアスカにフランキーも諦め、そのままアスカをくっ付けたまま街へと入りその中で一番目立つ建物へと向かった。

――ガヤガヤと煩いほど賑わう酒場にフランキー達はいた。


「アイツらいねえなァ…」


フランキーはコーラを飲みながらアスカを背中にくっ付け辺りを見渡していた。
酒場は普段ルフィ達が寄る街の酒場とは比べ物にならないほど大きく、巨大で、そこにいる海賊達も比べ物にならないほど多かった。


「しっかし…こんなに海賊集めて戦争でも始める気か?」

「みんな"エターナルポース"を持ってるところを見ると誰かに導かれたと考えるのが妥当ね…」


まだ匂いが取れないアスカはフランキーにくっ付きたまにグリグリと顔を押し付ける。
痛くはないがむず痒く、フランキーは『やめろ。無理矢理降ろすぞ』と脅しのように呟けば珍しく素直にアスカは引き下がった。
その代わり抱きつく力は強くなったが、半分鉄のフランキーは痛がる事なくただちょっと窮屈感を感じているのか眉間にシワをよせる。


「あ、すみません…パンツ見せてもらってもよろしいですか?」

「見せるかァ!」


紅茶を飲み長いゲップを出し終えたブルックは丁度通りかかったウェイトレスにいつものセクハラ発言を投げつける。
しかし帰ってきた答えはやはり蹴りだった。
派手な音を立てて倒れたブルックに気付いたロビンとフランキーは振り返る。
するとそこには腕に羽を生やすウェイトレスがいた。


「あなた…その腕…」

「え?ああ、コレ……私たち鳥になりたいんだと思います。」


ロビンの問いにウェイトレスは嫌そうな顔せずニコリ笑って答える。
鳥になりたいというウェイトレスの言葉にフランキーが『そんなモン…なろうとしてなれるもんか?』と呟けば何も言わず笑みを浮かべるだけで去っていってしまった。



「おめェら…"麦わら"のモンだろ?」



ウェイトレスを見送っていると近くで飲んでいた海賊が声を掛けてきた。
既に手配書が回り、数々の事件を起こしている為ロビンやフランキーは嫌でも目立ってしまう。
アスカはフランキーの背中に張り付いているからか、気付かれていなかった。


「おめェらもシキの親分と兄弟の盃を交わすんだな。」

「ああ?」

「ええ、そのつもりよ」


海賊の言葉にフランキーはメンチを切るが、喧嘩になる前にロビンが海賊の言葉に頷いてしまう。
ロビンに言葉を遮られフランキーは口を閉じるしかなかった。
それに情報収集というものはこの中ではロビンが一番得意としているため、フランキーもアスカも黙るしかない。


「シキの親分さんはどうしてこんなに大勢の海賊たちを?」

「どうしてって…おめェ…惚けんなよ?新聞見たろ?これ…」

「!――それは…!」


自分から情報を聞き出そうとしていたロビンの思惑など露知らず、海賊はポケットに入れていた新聞を出し広げて見せた。
海賊が見せてくれた新聞を見てロビンは目を丸くさせ、フランキーはサングラスを上げ、フランキーの後ろでくっ付いていたアスカはのそのそと上にあがって肩から顔を出し、ウェイトレスに天罰を食らったブルックは起き上がる。


「これは…今朝の…」


新聞を手に取りロビンは唖然と呟いた。
これを手にして海賊の言葉を繋げると、頭のいいロビンはこの記事の出来事が全てシキの仕業だと気付く。
察しのいいロビンに海賊は愉快そうにお酒を煽り笑った。


「そうさ!こりゃおめェ…世界政府・海軍に対する警告!!」

「つまり…シキの、親分の…狙いは…」


続きの言葉はロビンからは出なかった。
言っては駄目な気がして言えなかったのだ。
しかしそんなロビンの気持ちなど汲まず海賊は笑いながら続ける。


「東の海の壊滅!そして世界転覆!!今夜の総会が済んだら東の海にあの動物たちを送り込むんだそうだ!!」

「そんなことすりゃァ…とんでもない数の人間が死ぬことになる…」

「気にすんな!世界政府を降伏させるためだ!!」

「それに世界政府には四大将が…黒蝶がいる…」

「黒蝶がなんだってんだ!!おれたちゃシキの親分がいるんだ!!ゴールド・ロジャーと幾度も渡り歩きライバルとして認めていた伝説の海賊がな!!」


『黒蝶なんてシキの親分からしたらヒヨッ子だ!勝てるわけがない!!』とシキを持ち上げる海賊の言葉に黒蝶をお姉様と異常なほど慕うアスカはムッと眉間にシワをよせる。
フランキーがアスカの背中に腕を回し服を掴んで止めていなければここは確実に血の海と化していただろう。


「おれたちゃすげェお人に誘ってもらったなァ!!」

「まったくだ!よーし!もう一度カンパーイ!」

「「「カンパーイ!」」」


話しが盛り上がり、海賊達は二度目の乾杯をする。
そこら中から乾杯の声が響く中、ロビンはまだ新聞を見つめていた。


「おう!おめェら、そんなナリで総会に参加できると思うなよ!ビシッとキメろ!ビシッと!!」

「ドレスコードね…分かったわ。」


新聞を見ていたロビンやフランキー達のラフすぎる格好を見て今まで話していた海賊の傍にいた海賊が声をかけてきた。
ロビン達も総会に参加すると思い込んでいる周りはラフな格好のロビン達を疑うことはない。
ロビンは適当にあしらいながら頷く。


「なんでもおめェ!今夜はよ!"デモンストレーション"を見せてくれるって話だぜ!」

「…デモンストレーション?」

「ああ!この島にひとつだけある村を潰すんだとよ!!」

「…!!」


海賊達は余興で村を潰すという言葉にゾクゾクすると笑う。
これが本当の海賊の姿だが、自分達は村を潰す事など興味がなく、ただ興味があるのは冒険のみ。
下品な笑い方をする海賊達にアスカはフランキーから降りながら不愉快そうに眉間にシワをよせた。

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