シキは玉座に座りモニターに映る続々と集まってくる海賊達を見て満足気に笑う。
「シキたん」
暫く映像を眺めていると、この海賊団で唯一の女性だったモニカが部屋に入って来た。
シキはモニカに返事せず目線だけで用事の内容を促す。
モニカはいつもの笑みではなく表情を消し、神妙な面持ちで立っていた。
返事がこないシキに慣れているのかモニカはゆっくりと口を開く。
「ちょっと問題が起こったっす」
「そうか…」
シキは静かに玉座から腰をあげ、モニカの言う問題とやらの元へと向かう。
モニカはシキを案内するためシキの前に歩き、その問題とやらを廊下で説明する。
シキはそれを耳にしながらも苛立ちなどなくただ淡々とするモニカの背中を見つめていた。
モニカの背中は自分達よりも小さく、この船の中では背も1番小さいだろう。
モニカは約2週間前に連れてきた。
風の噂でインディゴに並ぶ科学者がいると聞いた。
既に計画もあとは実行するだけに近づいているため科学者など必要ないと思ったが、実行してから何が起こるか分からないとインディゴ本人から欲しいと願いだされたのだ。
科学の事はインディゴに任せているため、インディゴが言うのなら、そうなのだろう…とシキはあまり深く考えずその願いを受け入れた。
そこは小さな名の無い村だった。
…否、"村だった場所"、だった。
すでに何かの原因で滅んでいるのか人一人いない。
しかし情報は確かで、この滅んだ村にインディゴと並ぶ科学者がいるはずなのだ。
村を部下達に捜索させていると一軒の家を見つけた。
その家は他の住めないほどボロボロな家とは違い、下手であるが手が加えられ人がギリギリだが住める程度の家だった。
その中に入れば人はおらず、しかし先程まで生活していた形跡が見える。
シキは自分達の気配に気付き逃げたのかと思い、まだ遠くに行っていないだろう、と部下に家や周りを探させた。
その間シキとインディゴは家にあった資料を見つけ、それを目を通す。
そしてシキとインディゴは驚きが隠せず目を丸くさせた。
その資料の内容は人が約3000年要したとしても現実できないほどだった。
同じ科学者としてインディゴは度肝を抜かれたと素直に感想を述べ、科学者ではないシキさえも普通ならば考えられないほどの内容に驚きが隠せない。
更にシキはこの資料の内容を書いた人物が欲しくなり、部下達に捜索を続けさせる。
しかし、探していた人物は案外簡単に見つかった。
大勢の人間の物音に気付いたのか、その人物の方から現れたのだ。
現れた人物を見れば、ただの小さな少女だった。
その少女は強面のシキや船員にも怯えずただ不思議そうに『なんすか?』と問いかけただけだった。
その余りにも普通な反応にシキは呆気に取られる。
海賊だと教えても平然と『へー』と言うだけ。
金獅子のシキだと教えても、やはり平然と『へー』と言うだけ。
シキはこの小さな女を気に入った。
ロジャーと並ぶほどの力を持っている自分に言い寄る女は数知れず…
恐れる女も数知れず…
しかしここまで平然といられる女は初めてだった。
用が無いなら帰ってくれませんかねェ…と迷惑そうにする女をシキは何も言わず攫ってきたのだ。
シキに攫われれば驚きの声と共に『まだ実験中なのに!!』と怒涛がシキに向けられる。
シキは自分に怒涛を浴びせるモニカをいたく気に入ったのだ。
それからはトントン拍子でモニカは呆気なくシキの仲間になった。
というか、『仲間になれ』といえば『研究を好き放題させてくれたら仲間になってやるっす』、と答える。
金銭に余裕があるシキは頷き、インディゴとは気も合うのか争いもなく2人で研究をする姿が見られた。
インディゴはモニカの頭脳の高さを気に入り、モニカもインディゴ以上の頭脳を持っていても詰まっていた部分を補ってくれるインディゴを先輩と呼んで懐く。
シキはモニカが仲間になったときの事をふと思い出し、懐かしそうに笑う。
しかし――
前を向いて問題の場所へと案内するモニカが小さく笑っているのには気付かなかった。
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