(21 / 32) ストロングワールド (21)

今度は海賊達の持つ武器の銃声が響く中…シキは対峙するルフィを睨みつける。


「シキの親分!親分!!奥の部屋へ…!!」

「…ああ。」


モニカは先程2人を追って出て行った。
シキを避難させようと声をかけたのはモニカではなく報告しに来た部下だった。
部下の言葉にシキはルフィを睨みつけながら背中を向ける。
ルフィはそんなシキを追うようにゆっくりと歩き始めた。


「頭を討ち取れェ!!」

「「「うおおお!!」」」


シキを追いかけるため動き出すルフィに海賊達が襲い掛かる。
しかし――


「下僕ウサギ!GO!!」

「キュー!!」

「ギャーー!!」


唖然と立ち尽くしていたアスカがルフィに襲い掛かる海賊達に気付きその場で下僕ウサギを放つ。
可愛らしい鳴き声に反し、海賊達を殴るわ蹴るわ噛み付くわのウサギ達は恐ろしく強かった。
可愛い見た目に騙された海賊達は悲鳴を上げる。
それでも難を逃れた海賊達は襲いかかろうとするも自分の肩から手が生え、その手が自分達の目を覆ってしまい手も足も出せない状態に。
そして、ルフィの前に生きたガイコツが現れバイオリンを奏でる。
その音楽を聞いた残りの海賊達は突然の眠気に負け、バタバタと倒れ爆睡していく。


「おれの仲間に――…」


仲間のフォローを受けながらルフィは真っ直ぐシキを睨みつける。
背を向け奥へ逃げようとするシキにルフィは歩いていた足を速め、飛び上がった。


「―――なんかしたのかああああ!」

「ぐ…ッ!!」

「親分ーー!!?」


飛び上がったルフィは腕を振り上げ、シキを殴り飛ばす。
ルフィの拳を頬に決められたシキだったが、そのまま能力で飛んで奥へと避難する。
ルフィは逃げていくシキを追いかけ驚愕する部下を放って自分も奥へと進もうとした。
しかしルフィの前に刀を持つインディゴが立ちはだかる。


「…!!」

「船長の邪魔すんな!」


ルフィへ刀を振り下ろしたインディゴだったがそのインディゴの刀をゾロが受け止め、ルフィはインディゴなど目に留めず奥へ消えたシキだけを見据える。
しかし次は上からスカーレットが降り立ちルフィを阻もうとした。
真っ直ぐ向かってくるルフィへスカーレットは長い手を伸ばしたその時――…


「道を開けろって言ってんだよ!!」


今度はサンジがスカーレットの横腹を蹴り付け吹き飛ばす。
そうして、ルフィは奥へと続く廊下へと足を踏み入れ暗闇に姿を消した。







ルフィはシキを、ゾロはインディゴを、サンジはスカーレットを…他の仲間も海賊達を消していく中…ウソップとチョッパーは王宮の中を走っていた。
途中からトナカイの姿へと変えウソップを乗せて走り襲い掛かってくる海賊達を伸していく。
上に乗せているウソップも得意の巨大パチンコで敵を打ち倒していくが、海賊達の数は一向に減る気配はない。


「倒しても倒してもどんどん湧いてくる…!!」

「こいつらどんだけいんだよ!!」


つい愚痴も零したくなるほどの多さだったが、ふとチョッパーが何かを感じたのか突然立ち止まった。


「お、おい!チョッパー!?どうした!?立ち止まってちゃやられ…」

「しっ!!何か…変な気配がする…」

「気配ィ?」

「うん…それに…匂いも…」

「匂い?」

「ああ…甘い…匂い……香水とかじゃなくて…本当に甘い…微かだけど甘くて良い匂いがするんだ…」


立ち止まったチョッパーにウソップが慌てて声をかける。
立ち止まっていたらいい的にしかならないのは狙撃手だからこそ分かることである。
しかしチョッパーは辺りを見渡すだけで歩き出す事も走り出す事もしない。
その上、なにやらビビリには不吉な言葉を呟いたのだ。
気配、と言われウソップは怖々と辺りを見渡すが、補充していく海賊がこちらに向かっている事以外は変化は無い。
チョッパーは怯えるウソップをよそに今度は青い鼻をヒクヒクと動かし匂いを嗅ぎ始める。
それに釣られたのかウソップも長い鼻で甘いという匂いを嗅ごうとするも甘いどころか火薬と冷たい空気しかウソップの鼻に届いていない。


「あーもう!!そんなことはいいからさっさと行こう!!敵もそうだがナミを探さなきゃ…」

アタシが教えてあげよっか?

「〜〜〜〜ヒィーーヤァーーーー!!!」

「…!!」


ウソップは動く気配のなくまるで匂いに魅了されているかのようなチョッパーに痺れを切らしたのかチョッパーの帽子を叩いて正気に戻させようとした。
しかし、チョッパーが正気に戻るよりも前に、第三者の声がチョッパーとウソップの耳に届く。
ウソップは目の前に突然現れた逆さ釣りのように上から覗き込んできた少女に絹を裂いたような悲鳴を目一杯上げる。
チョッパーがウソップの悲鳴を聞き、声の方へ顔を上げれば2人の頭上で上半身だけを戻しているモニカがいた。
モニカは悲鳴をあげ顔を真っ青にさせるウソップを見ながら逆さにしていた身体を宙返りさせ、下半身も戻し2人の前へと軽やかに降り立つ。


「お、おおお…!お前は…!!」

「はあーい!!モニカちゃんでーーっす!」


『イエイ!』とモニカを目の前に絶句するウソップとチョッパーにモニカはVサインを向け片目を瞑っておちゃらける。
もし、ここにサンジがいれば即モニカのおちゃらけた態度に目をハートにさせ、サンジだけだったら即全滅だったろう。
ウソップ達ももし船の時のまま友好的だったのなら、こんなにも怯えることもなかっただろう。
アガアガ、と開いた口が塞がらないウソップをよそにチョッパーはクンクンと鼻を動かし『やっぱり』と呟いた。


「この甘い匂い…モニカから匂って来る…」

「匂い…?」


モニアはチョッパーの言葉に笑みを消し怪訝そうに首を傾げる。
チョッパーは首を傾げるモニカに先程の言葉をもう一度呟き、モニカはチョッパーの言葉に微かに目を見張った。


「…完全に消したと思ったんだけど……やっぱり動物は侮れない…」


目を見張った後、モニカは小声でボソリと呟く。
その呟きは2人には届かず我に返ったウソップはモニカの呟きに『へ?』と首を傾げるも、モニカからは『なんでもないっすよ!』と笑みを向けられる。


「それより!!あんた達の仲間、探してるんすよね?あの航海士のお姉さん!!」

「だ、だからなんだ!!」

「私が案内してあげるっす!!」

「「…はぁ!?」」


何故かエッヘン、と胸を張り自慢げなモニカにチョッパーとウソップは揃えて声を上げた。
緊迫した空気も粉々に割れたのは…まあ、仕方ないのだろう。
胸を張るモニカに2人は疑いの眼差しを容赦なく向けた。


「あ!その目!信じてないっすね!!?」

「当たり前だ!!誰がシキの仲間のお前の言うことなんて信じるかってんだ!!」

「ナミのところに案内させると見せかけておれ達を殺す気だろ!!」


当たり前の事だが全く信じていないウソップとチョッパーの言葉にモニカは『ブー!ブー!』と頬を膨らませ唇を尖らせあからさまに不機嫌そうな表情を浮かべる。
モニカのブーイングなどよそにウソップは持っていた巨大パチンコをモニカに放つ。
しかし、自然系のモニカに物理が聞くわけもなくウソップが放ったモノはモニカの身体を通り抜け後ろで爆発した。
それを見てウソップは悔しげに奥歯を噛み締め顔を歪める。
チョッパーも顔を歪め、そんな2人を見たモニカは残念そうに溜息を大きくつき、肩をすくめる。


「あーあ…信じてくれないアタシ可哀想…せっかく仲間を眠らせて助けてあげたって言うのに…」

「え…」

「眠らせ、た…?」


モニカの言葉にウソップとチョッパーは目を見張った。
そこで2人は気付く。
辺りに怒涛が飛び交っていないことを。
辺りに、殺気がない事を。
なにより、人の足音が聞こえず、立ち止まっているのに一向に銃弾が当たっていないことに。
チョッパーとウソップは泣き真似をしながら『可哀想なアタシ…』と悲劇のヒロインぶるモニカをよそに辺りを見渡した。


「な…!?」

「皆…眠ってる!!」


2人が辺りを見渡せばモニカの言う通り海賊達は眠っており、廊下に転がっていた。
よく見れば自分達の周りは深い霧に包まれており、廊下の奥が見えないほど白い霧に覆われている。
モニカがどうして助けたかは不明だが今の状況は敵であるモニカが有利なのは確かで、2人は警戒を高める。
そんな2人にモニカは泣き真似を止めニカッと周りの霧が晴れるかのような晴れ晴れしい笑みを浮かべ…


「信じてくれたっすか?」


と投げかけた。
自然系だと十分頭で理解しているためウソップ達は無暗に攻撃できず、ウソップを乗せているチョッパーはジリジリと後ろへ後退していく。
後退していくチョッパーを見てモニカは『あれま』と呑気な声を零した。


「信じてくれないっすねェ…警戒心強くてアタシ心折れそうっす…」

「当たり前だ!お前はシキの仲間なんだぞ!?どう信用しろってんだ!!」

「まあ、それもそうっすね…じゃあ、航海士のお姉さんの居場所だけ教えるっす。」


啖呵を切るウソップにモニカはそう言って横を指差す。
するとモニカが指差した場所のみ霧が晴れていく。
モニカが指差し、それに釣られたウソップとチョッパーが横を見れば、晴れた霧の先には雪積もる瓦屋根が現れる。
2人はその先を見つめ、戸惑うようにモニカへ目線を戻す。
そんな2人にモニカはニコッと笑みを深める。


「あの先に、航海士のお姉さんがいるっす…本当っすよ?」

「……もし、それが本当だとしたら……お前はどうしておれ達の味方をするんだ?お前はシキの仲間じゃないのか?」


モニカの笑みと言葉にチョッパーとウソップはお互い顔を見合わせる。
目線だけで会話をし、今はモニカを信じるしかないとお互いに思ったのか、お互い目線を外しチョッパーはモニカへ見据えた。


チョッパーの問いに、モニカは……



「……………」



ただ、笑うだけで何も答えなかった。

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