「こっちっす!!」
モニカは先頭に立ちIQのある場所へと案内していた。
既にモニカを信用しているチョッパー達は疑うこともなく下半身を霧にして飛ぶモニカについて行こうと滑りやすい雪の中必死に走っていた。
ナミはチョッパーの背中で負ぶさられていた。
「ここっすよ!」
「うおっとと!!」
建物の中に入り暫く走っているとモニカが勢いのまま扉を開け、中に入り立ち止まる。
モニカが突然立ち止まった為走っていたウソップは立ち止まれずモニカにぶつかりそうになり目を瞑った。
しかしモニカは自然系の能力者なためウソップはモニカの身体を通り抜き派手な音を立てて転がっていく。
「いってェ……ん?なんだ?ここ…」
「全部IQだ…月の光りで育ててるんだ…!」
「何してるんすか!?こっちっす!こっち!!」
その部屋は薄暗く電灯1つない。
月の光りが部屋の中を照らすだけだったが、その中にはIQが大量に量産されていた。
これだけのIQがあればナミだけではなくシャオの祖母だって助かるだろう。
それなのに独占し、シャオ達を苦しめるシキ達にチョッパーは医者として許せなかった。
周りを見渡していたチョッパーとウソップに下半身を霧のままにさせながらモニカが一足先に奥の部屋の扉の前に立っていた。
手を振って急かすモニカにチョッパーとウソップは慌てて階段を上る。
「先輩はここでIQの研究をしてたっす。」
チョッパー達が昇ってきたのを確認し、モニカは扉を開けて中に入る。
中に入れば微かに漂っていた薬品の匂いが一気に強まり、チョッパーとウソップは部屋を見渡す。
「どれを飲ませばいいんだ!?」
「そうっすねェ……」
試験管や実験器具が置かれた机を漁りながらウソップはモニカに問いかけ、モニカは薬を探すようにウソップと共に机を漁る。
するとモニカが何かを見つける。
ちらりと2人の方へ目線を移せばチョッパー達はナミの毒を治す薬を探すのに夢中でモニカの目線に気付かない。
モニカはそんな2人にバレないようにその見つけた物を素早く手の中に収め何事もなかったように2人とともに薬を探し机を漁り始める。
するとオナラのような音が3人の耳に届く。
上へと顔を上げればそこには二階の手すりに座るインディゴがこちらを見下ろしているのが見えた。
「ヒー!敵ーー!!」
「先輩…」
ウソップとチョッパーは新たなる敵に慌てて机から離れる。
しかしモニカはその場でインディゴを見上げていた。
インディゴは怯えるウソップとチョッパーを『ピロッピロッピロ』と笑い声を零した後、自分を見上げるモニカへと視線を移す。
その瞳は敵を見るかのように鋭かった。
「モニカ…貴様ァ……裏切ったか!」
「まあ、そうとも言うっすね」
「そうとしか言わねェんだよ!!」
インディゴはモニカがチョッパー達麦わらの一味と共にいる意味を察したのか更に瞳の鋭さを強め乱暴な言葉をモニカに吐き出す。
味方の時には聞く事のなかった乱暴な言葉と声色に怯えず、モニカはただジッと睨みつけてくるインディゴを見つめていた。
するとクンクンとチョッパーがインディゴに鼻を向け匂いを嗅ぐ仕草を見せる。
「薬品の臭いがプンプンするぞ!!お前科学者だな!?」
「ああ…飛っきり優秀のな。」
見た目はどうあれ着ている白衣、そして体に染み込んでいる薬品の匂いからして科学者なのは確かだろう。
モニカが先輩と呼んでいるのだから間違いはないはずである。
「先輩、ダストの薬どこっすか?」
「渡すと思うか!?馬鹿が…!!裏切りモンに渡す薬なんてありゃしねェんだよ!!」
「そんな事言って〜!いつも王宮用に持ち歩いてるのアタシ知ってんすよ〜?」
敵に回るまでは一緒に研究していた事もありモニカはインディゴがいつも王宮用として薬を持っているのを知っていた。
『んも〜いけず〜けちん坊〜』と唇を尖らせるモニカにインディゴは苛立ちを覚える。
味方のときならば軽く流せたが、敵となればその呑気で軽い態度が気に入らなかった。
青筋を立てるインディゴが二階から飛び降りようとしたその時――
「なーんだ、簡単じゃねェか。」
「…!」
自分達が入って来た入り口からゾロが姿を現した。
チョッパー達はゾロの登場に振り返り、インディゴはモニカを睨んでいた目をゾロへと移す。
ゾロは既に戦闘態勢を整え3本の刀を抜いていた。
「そいつの持ってる薬を奪いとりゃいいんだろ?…どいてろそいつはおれがぶった斬る。」
「「ゾロ…!!」」
「あんれまァ…増えた。」
広間で相手をしていたゾロだったが、暫くして乱入してきた動物達によってインディゴに逃げられここまで追ってきたらしい。
殺気を静かに放つゾロにインディゴは『こんなとこまで追ってきやがって』と目を細めゾロを見下ろす。
ゾロの登場に勝機が見えていなかったこの勝負が一気に勝機が見えたのかウソップとチョッパーはゾロにインディゴを負かせ薬を奪ってくれると信じ選手交代した。
モニカも自分の前に降り立ったインディゴの背を見ながら何故かその場から離れない。
インディゴはモニカが逃げずその場にいるのを感じながら始末はゾロを倒してから、と決めたのかすぐ後ろにいる裏切り者を放置し対峙するゾロを見下ろす。
「ぶった斬るだと?この東の海の馬の骨がァ!!大体あんなくだらねえ海ひとつ潰れたからと言って世界になんの支障も出ねえんだよ!!!」
「―――!!」
東の海は4つの海の中では最弱な海。
それは言い方を変えれば平和な海であるのだが、平和な海よりも最弱な海の方が知れ渡っていた。
だからこそ多くの海賊は東の海の出身者を馬鹿にする。
インディゴも東の海の出身者ばかりな一味を見下す。
しかしインディゴのその罵倒が合図となったのかカッとなったゾロはインディゴへと斬り付け、その衝撃にインディゴは部屋の外へと吹き飛ばされるが、インディゴは体勢を整え渡り廊下に着地した。
ウソップ達も安全な場所に避難を兼ねてゾロの対戦を見守る為にゾロ達とは少し離れた廊下へと急ぎ、その場にはモニカしかいない。
「…………」
誰も居なくなった部屋で、モニカはウソップ達を追うことはせず後ろにあるインディゴのデスクへ振り返る。
そして、モニカはその机の上に散らばっている資料らしき紙を一枚一枚手に取った後、机の棚にも手をかけ物色していた。
目的なモノ以外はその辺に投げ捨て、目的なモノが見つかれば手に収める。
全て見つけたモニカは両腕に抱えるほどのモノを見下ろし小さく笑みを浮かべた。
そしてモニカはその腕の中にあるモノ全てを…そのまま下に落とした。
しかし、モニカの足元には落ちていったモノが散らばることなく……床に吸収されるかのように消えていった。
モニカはそれを見送った後、ウソップ達を追いかけ部屋から出て行く。
「"ケミカルジャグリング"」
ゾロも追うように着地し、再び2人は対峙する。
インディゴは距離を置き着地するゾロに手袋から火の玉を幾つも作り出す。
「燃え尽きな!!」
そう言ってインディゴは無数の火の玉をゾロへと放った。
ゾロはそれを刀で斬り付けていたが、数が数な上速さもあり次々と向かって来る火の玉に受けきれずもろに食らってしまう。
ゾロ達が外へと舞台を移したため、慌てて自分達も外へと向かったチョッパー達は目の前でインディゴのケミカルジャグリングに当たり爆発に巻き込まれるゾロに目を丸くさせた。
「ゾロ…!!」
「大丈夫か!?」
ゾロが強いというのはよく知っているが、さすがに技を受けた仲間を見て心配しない仲間などいないだろう。
2人の目線の先にはゾロがいた場所に黒い煙が立ち篭もっており、ゾロの人影すら見えない。
「ピーロピロピロ!どうだ?ケミカルジャグリングの威力は!!」
自分の技をもろに食らったゾロにインディゴは愉快そうに笑う。
その笑い声は雪が降る静かな空に響いていた。
しかし…
「…!」
「曲芸に付き合ってる暇はねェんだよ!!」
「なにを!?」
爆発し、黒い煙が晴れたその時、掠り傷すら負っていないゾロが現れた。
大怪我どころかピンピンしているゾロにインディゴは目を丸くさせ、自分の技を曲芸と罵るゾロに睨みを強める。
「"マス・ジャグリン"!―――食らえ!!!」
ケミカルジャグリングを結集させ巨大な火の玉となったソレをインディゴはゾロへと放つ。
ゾロはその巨大な火の玉を避けることすらせず受け止め、辺りに大きな爆発音が響く。
まともに食らったゾロに今度こそ死んだとインディゴは高笑いを上げる。
「"鬼気…九刀流、阿修羅"!」
「なっ…!?」
高笑いを浮べていたインディゴだったが、赤い炎の中からゾロの姿を見据え、立っている姿に目を丸くし驚愕してみせる。
そんなインディゴなどよそにゾロの背後に2人のゾロが現れ、刀が3本から9本へと増えたのが見えた。
「イーストブルーで生まれた俺が馬の骨なら…」
「ケミカル…!」
「俺に斬られるお前は――…」
炎を纏いながらゾロはそのままインディゴへと駆けて行き、インディゴは向かって来るゾロに向けてケミカルジャグリングを放った。
しかしケミカルジャグリングは簡単に跳ね返されインディゴは息を呑む。
そうしている間にもゾロは瞬く間にインディゴの懐へと入り、そして―――
「――…一体なんの骨だ?」
ゾロは一瞬にしてインディゴを倒した。
インディゴが自分の武器によって爆発し、渡り廊下は途切れてしまう。
背を向けるゾロにチョッパーは目を輝かせ憧れるように見つめる。
「ゾロかっこいい…!」
「不死身か、アイツは。」
「っていうか、人っすか?」
人はどんなに頑張っても自分の分身は作れない。
能力者ならいざ知らずゾロは立派な生身の人間である。
呆れたように呟くウソップに続きいつの間にか自分達の隣に来ていたモニカはそう呟いた。
ウソップは『多分、人間だ』とちょっと自信なさ気にモニカに返したことを、目を輝かせヒーローを見るかのようにゾロを見るチョッパーは気づかなかった。
「チョッパー!」
「え!?…あっ!」
憧れるお兄さんを見るかのように見つめていたチョッパーにゾロが何かを投げつける。
それを慌てて受け取るとそれは解毒剤だった。
モニカが確認するように大きなチョッパーの手の中にある薬を見て『うん、これで合ってるっす』と頷いた。
間違いではないことにウソップとチョッパーはホッと胸を撫で下ろす。
「俺は戻る!ナミを頼んだぞ!!」
「お、おう!!」
「ってそっち逆ーー!!」
ナミを2人に任せ、ゾロは戻ろうと走る。
…が、方向音痴なのは何処に行っても、どうかっこつけても変らないようで…ウソップが慌てて逆方向に走っていると知らせればゾロは決まりが悪そうにウソップが指差した方向へと向かった。
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