宴も終わり、ルフィ達はゾウへ向けて海に出ていた。
サニー号はサンジ達を乗せて先にゾウへ向かったため足がない。
そんなルフィ達をバルトロメオが船に乗せて送ってくれると言う。
その言葉に甘えたのだが―――
「おかしいだろお前ら!!なんでウチの船よりルフィが乗ってそうなんだ!!」
「そう言って貰えると嬉しいべ〜〜!」
「褒めてねェよ!!」
バルトロメオの船は、船首にルフィの像、船上にはメリー号の船首、船尾にチョッパーーの角、そしてナミの好きなミカンまで植えられていた。
ルフィ達の初めての船であるメリー号よりメリー号していた。
ウソップの言葉通り、船首にルフィが掲げられているため、メリー号やサニー号よりルフィが乗ってそうな船である。
「「このビブルカードが示す先に〜〜!本物のルフィ先輩ィ〜〜っ!!」」
ウソップに褒められて(決して褒めてない)気分が上がったバルトロメオとその仲間達は大切に保管してあるビブルカードを見る。
そのビブルカードが向かう方向へ振り返ってはそこにいるルフィを見ては大歓喜していた。
「ぶおォ〜〜!ようこそごのぶね゙にご乗船いただぎ重ね重ねありがどう存じますだべーー!!」
「ボス!眩しくて顔を見られねェ!!」
「そりゃ左に同じだベ!!」
「全員このノリか…」
船長であるバルトロメオを筆頭に、この船の乗組員全員がルフィ達麦わら海賊団の大ファンだった。
歓喜に泣く男達に、流石にウソップもドン引いてしまう。
ちなみに、アスカはとっくの昔にドン引いている。
むしろもう引くところもなく、一周回って何も思わなくなった。
今はバルトロメオが麦わらの海賊団のために用意した上等なソファにロビン達と座っている。
「姉上、あの方たちはなぜ泣いておられるのですか?」
「さあ…分かんない」
ローの隣に座るアスカの隣を直葉は陣取り、歓喜して大泣きするバルトロメオ達を不思議そうに見る。
問われたアスカは首をかしげて返した。
説明が面倒臭いのもあるが、何より、子供が知らなくていいこともある。
「やー、楽しい宴だったなー!あいつら好きになった!」
そう宴を思い出しながら戻ってきたルフィはアスカの隣を陣取る直葉を抱き上げその席に自分が座り、その膝の上に直葉を乗せた。
自然な動きに直葉も周囲も驚くどころか受け入れたが…
「ウガーーッ!!」
「うぷっ!」
ルフィの顔中が花びらに占領されてしまった。
直葉もあまりにも自然だったため、反応が遅れたがルフィに場所を奪われたと気づいた直葉はハナハナの実の能力で怒りと共に花びらで顔を埋め尽くした。
ビタッと張り付く花びらは口や鼻など呼吸さえも塞き止め、ルフィは息ができなくなる。
「こら!直葉!何をしておるのだ!」
「ですが錦えもん殿っ!このサルが!!」
ルフィと直葉の争いは常に錦えもんの叱責によって終了する。
その後は、顔中にくっつく花びらを取り除いたルフィと睨み合うのが一連の流れになっている。
『まだ退かせず膝に乗せてるから温情がある方じゃねえのか』とウソップは思わなくもないが、矛先がこちらに向けられるので言うのをやめた。
結局、同じ膝ならせめて姉の膝がいいと移ろうとしていた直葉だったが、心の狭い姉の恋人二人にアスカの膝の上さえ許されなかった。
こういう時に限って見事な連携を発揮する憎き二人に、結局ルフィの膝の上で落ち着いた直葉はぶすっとした顔で姉を見上げた。
「…姉上、考え直した方がいいですよ…この二人、絶対お父さまと同じ独占欲の塊になります…お姉さまがそういう男をでぃーぶいおとこだって言ってました」
「…あー、まあ…うん、そうだね」
ルフィの膝の上でぶすっとさせながら、直葉は姉に別れるべきですと忠告する。
やはり5歳と言えど、女の子だからかちょっと耳年増らしい。
きっとDVという言葉も何となくわかっているだけで、理解はまだしていないのだろう。
『もうすでに独占欲の塊なんだよなァ』と思ってもアスカは絶対に口にしない。
それで喧嘩が始まるのは面倒であるし、アスカはその二人から向けられる独占欲も嫌いではない。
「おい、ルフィ…どうやらおれ達懸賞金上がってんぞ」
「えー!?本当か!?」
ルフィと直葉の子供の喧嘩をBGMに、新聞を読んでいたゾロがある記事を見た。
それは、麦わら海賊団とローの懸賞金の記事だった。
海賊にとって、懸賞金が上がるのは誇りでもありルフィの顔に笑顔が浮かぶ。
「あれま!ご存じねがったですか!!じゃ、おれの部屋に手配書あるんで!どーぞどーぞ!」
「「「どーぞどーぞ!」」」
新聞はナミやロビンなど麦わらの一味でも限られた人間しか見ないため、基本ルフィやアスカは自身の懸賞金を知るのは遅い。
当然のごとく本人よりも真っ先に確認していたバルトロメオは自分の部屋に置いてあるアスカ達の手配書を見せようと案内する。
その際になぜかバルトロメオの仲間達がレッドカーペットを敷き、クルー共々船長室へと歓迎されながら向かう。
「おいトラファルガー!おめェのは捨てたが5億に上ってた!」
「ああ、そりゃどうも…額なんかどうでもいい」
その際、アスカ達を見送るローの懸賞金も上がったことを本人に渋々伝えるが、ロー本人は心底どうでもいい様子で返される。
かっこつけとかではなく、本当にどうでもいいのだろう。
「さ〜〜!ぞうぞ!ご覧くださいだべ〜〜!!」
「額入り!?」
「さっきいただいたサインもこちらに!!」
船長室だけあって広さはあったが、その壁にデカデカと額入りで手配書が張られていた。
しかも自分達の手配書ではなく…アスカ達麦わら海賊団の手配書(+サイン)だった。
サインとは、さきほどバルトロメオにせがまれてアスカも色紙に書いたサインである。
ルフィは『おれ』とだけのサイン、ゾロは『刀』とだけのサイン、ロビンはなんだかよく分からない多分ニワトリ?の絵のサイン、アスカは自分の名前だけのサイン。
凝ったサインを書いたのは、ウソップとフランキーくらいだろうか。
手配書と共に立派な額に飾られていた。
そのサインの隣には、新しいアスカ達の手配書が綺麗に並べられて貼られていた。
そこには――…
『"麦わらのルフィ" 懸賞金5億ベリー』
『"海賊狩りのゾロ" 懸賞金3億2000万ベリー』
『"悪魔の子 ニコ・ロビン" 懸賞金1億3000万ベリー』
『"鉄人 フランキー" 懸賞金9千400マンベリー』
『"ゴット・ウソップ" 懸賞金2億ベリー』
いるメンバーで全員の懸賞金がアップしていた。
アスカはジンベエが魚人島で見せてくれた手配書と何ら変化のない『ONLY ALIVE』と『ASKING PRICE』が表記されていた。
アスカも政府のミスだと思っていたが、流石に二度目の更新でも変わらないのならミスではないのだと思ってしまう。
生け捕りの言い値、という文字がある限り、まだ天竜人が諦めていない証拠である。
アスカは天竜人に狙われていると恐怖に体を震わせた。
そんなアスカに誰も気づかなかったが、直葉が声をかけアスカも我に返る。
「う〜…数えられません…姉上、皆様はおいくらなのですか?」
直葉はひぃふぅみぃと指をさして一生懸命アスカのルフィ達の懸賞金を数えるが、大人びているとはいえ直葉はまだ5歳。
5歳といえば一般的に数えられて二桁の位、100の位まで数えられれば褒められる年齢だ。
それでも千までは数えられたがそれ以上は数えられず、数えられたのは悲しいかな…チョッパーのみ。
アスカの服をクイクイと引っ張り、ねだる様に質問する。
アスカ自身ルフィのように懸賞金で喜ぶタイプではないし、自慢にするタイプでもないため、直葉に問われたアスカは『あー…ルフィは5億で、ゾロが3億2000万で――』と1人1人の懸賞金を教える。
直葉に仲間達の懸賞金を教えた後、今この場にいないメンバーの賞金も確認する。
『"泥棒猫 ナミ" 懸賞金6600万ベリー』
『"わたあめ大好き チョッパー" 懸賞金100ベリー』
『"ソウルキング ブルック" 懸賞金8300万ベリー』
『"黒足のサンジ" 懸賞金1億7700万ベリー』
全員が懸賞金が上がっていた。
バルトロメオ曰く、今回の事件で際立った危険度を示した人間以外は全員一律に5千万アップしているという。
勿論、言い値が天井となっているアスカは例外だ。
写真もそれぞれすり替えられており、アスカは撮られた覚えがない写真が載っていた。
身に覚えがないということは、記憶を弄られた時の写真だろう。
(毎回思うけど…ナミも大概チョロいよね…)
ナミの写真を見ながら、アスカはボソッと思う。
ナミは前の手配書でもバッチリ決まったポーズと写真で撮られていたが、今回もセクシーな写真で載っていた。
前に撮られた写真はウォーターセブンで戦闘後の宴で新聞社だと名乗った男にアスカ共々撮られた写真を採用されていた。
恐らく、同じような手口でこの写真も撮られたのだろう。
そして、アスカは憐みの視線をもう一枚に向ける。
(チョッパー…)
その視線の先にはチョッパーがいた。
相変わらず異名が『わたあめ大好き』となっているチョッパーの懸賞金は100ベリー。
万でも千でもない、まさかの三桁。
一部を除いてみんな5千万も上がったというのに、チョッパーは50ベリー上がっただけだった。
フランキーの言葉通り、アスカも流石にかける言葉がなかった。
(ブルックのやつって…ライブのポスターじゃん…いや、かっこいいけどさ…)
ブルックも懸賞金が上がっていた。
ただ、彼の場合生前の手配書ではなく、恐らくシャボンディ諸島で集まった際に配られたブルックのライブポスターと変わっていた。
それはそれでかっこよく彼らしいのだが、海軍よそれでいいのか…とアスカは心の中で問う。
『姉上のお仲間の方達はすごいのですね』と感心している直葉の言葉に、仲間を褒められアスカの機嫌も良くなる。
その傍では2億となったゴッド・ウソップが億越えしていないことに悔しがっている鉄人フランキーに締め上げられ(八つ当たり)泡を吹いていた。
そんな神々を他所に、バルトロメオが『だどもちょっとコレ見てけろ』とサンジの手配書のある部分を指さす。
「"黒足のサンジ"先輩は額の上り方も手配書も少しおかしいんだべ…」
そう言ってバルトロメオが指さした部分を見てみるとそこには――ONLY ALIVEと書かれていた。
ONLY ALIVEとは、文字通り生け捕りのこと。
アスカも同じく生け捕り対象である。
ルフィ達は仲間から二人も生け捕り対象とされたことに驚きが隠せなかった。
「サンジも天竜人に狙われてるのか?」
「いやぁ…それはねえだろ…」
「でもあいつ自分の事あまり話したがらないじゃねえか…実は天竜人関係で生け捕りになったとか…」
アスカは分かる。
金額はどうであれ、アスカを飼っていた天竜人がアスカを諦めきれず生け捕りにさせたのだろう。
正直、自分なんかになぜそこまで執着するのか理解はできないが、相手が天竜人となれば生け捕りの理由は腑に落ちる。
だが、サンジは分からなかった。
サンジはアスカとローと同じ元々北の海出身だったというだけしか身元が割れていない。
サンジにどんな過去があるかなんてルフィ達は今更気にも留めないだろう。
どんな過去だろうが、サンジはサンジだ。
だが、海賊の手配書で生け捕りは特別な理由がない限りはONLY ALIVEとは表記されない。
一同、サンジの手配書を見て首をかしげるばかりだった。
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