(207 / 274) ラビットガール2 (207)

森に入り進んでしばらく、アスカがその異変に気付いた。


「待って…なんか、火薬とかガスの匂いがする…」


立ち止まって眉を顰めて鼻を押さえるアスカに、ゾロ達は立ち止まりアスカへ振り返る。
アスカは動物系の能力者のため、能力を出さなくても鼻は普通の人間よりも多少利く。
そのアスカの言葉に、フランキーが匂いを嗅ぐ。


「確かに…微かだが火薬やガスの匂いがするな……何が起きたんだ?」

「何なんだよ!たまには平和な国でのんびり――」


フランキーが嗅いでもガスや火薬などの匂いが微かに分かるほど匂いは強くなっていた。
火薬やガスなど明らかに戦闘した状況しか考えられず、ウソップはガタガタと体を震わせながら心からの願いを言いかけた。
その時、ゾロとローが何かに気づき刀を構えた。


「え!?なんだ!?なんかいんのか!?」


気配に敏感な二人が突然刀を構え始め、ウソップは恐怖で泣きかける。
アスカはローから下がってろと言われたので、ロビンと共に数歩後ろに下がった。
ゾロとロー、そしてフランキーとロビンとウソップがいるのだから自分の出る幕はないだろうとアスカは彼らに任せることにした。


「任せろ…」


ゾロがそう言いながらギロリと前方を睨む。
それと同時に影がゾロに向かって目にもとまらぬ速さで向かってきた。
それに刀を抜けば、その影は空中で軌道を変えゾロの背後を取る。
ゾロは影の動きに驚きながらも背後に回る相手の攻撃を刀で防いだ。
それもどういう原理か、雷のような電気が一瞬走ったのをアスカも見た。
その時――


「待て!!やめるのだ!キャロット!!」


丸々としたワニのような動物に乗った新たな登場人物が増えた。
その人物の言葉に、影が立ち止まる。


(犬に…ウサギ…?)


立ち止まったため、はっきりと影の姿が見えることが出来た。
影…キャロットと呼ばれたその人物は、ウサギの姿をしていたミンク族だった。
ミンク族とは、動物に模した顔と体つきが特徴の獣人のことである。
犬のミンク族はキャロットを見た後、アスカ達へと視線を向ける。


「そティアらはよいのだ!!それよりも今"くじらの森"に侵入者が!」


加勢にきたのかと構えたが、どうやらあちらはあちらで色々と事件が起こっているらしくこちらに構っている暇はないようだった。


「あ、あれ!?あの服!!ナミの…」


ウソップは犬のミンク族の服装に気づいた。
その服装はナミがよく着ている服装にそっくり…いや、そのままだ。


「お、おい!お前ェ!その服一体どこで手に入れた!!ナミに何をしたんだ!?」


ナミ達が無事なら、ミンク族の服装は似たものだろう。
だが、上下どころか靴さえもナミと同じ服装を着ている偶然などあるのだろうか。
後ろ向きのウソップは思わず最悪な想像をおしてしまう。


「食人族かしら」

「コエーこと言うな!!」


それを後押しするように、ロビンがポツリといつものように恐ろしい呟きを零す。
アスカはウソップに言われて気づいたが、何となくウソップのような想像はできなかった。
なぜか、二人のミンク族を危険だと思わなかったのだ。
それが勘なのか、それとも動物的勘なのかは分からない。
いつものコントをしている傍らで、キャロットが飛ぶ。


「なんてジャンプ力…!これがミンク族の身体能力か!」


とのジャンプ力は同じウサギの能力者であるアスカを超えていた。
アスカもその高さに驚いていると、高い場所から見渡すキャロットに犬のミンク族が声をかける。


「どうだ!?見えるか!キャロット!」

「見えた!――ちょっと手遅れかも!『クラウ都』より一直線!『くじらの森』で諍いが!!」

「やはりか…!乗れ!キャロット!」

「はいっ!」


焦っているのか、ミンク族はキャロットが降りてくる前にキャロットが報告した方向へと向かおうとする。
キャロットもアスカ達ではなく、犬のミンク族が乗るワニへと乗り込むように着地する。


「ゆティア達を連行しているヒマはない!指示に従え!ここより右手『右尻(ウシリー)の森』を進み闇深き沼を左折!『右腹(ウバラ)の森』へ行け!!ゆティアらの仲間の"死体"がそこに!!後で私達も向かう!!」


犬のミンクはキャロットを連れて急いでくじらの森と呼ばれている場所へと向かう。
その際に、ミコト達へ振り返り、彼女達に『右腹の森』へ行くよう指示しながら去っていった。
アスカ達はミンク族が人獣だったよりも、ナミの服を着ていることよりも、キャロットの脚力よりも、『仲間の死体』という言葉に驚きが隠せなかった。


「うわああ〜〜!あいづらが殺されだ〜〜!!」


ミンク族とアスカ達の言葉に違いがなければ、『死体』は言葉通りの意味だろう。
やっとドフラミンゴという強敵を倒しナミ達と再会できると思い怖い森ながらも必死に進んでいたのに、ミンク族からすでに仲間達が死んだと知らされウソップはついに泣き崩れてしまう。
しかし、


「死体が残っているという事は食べられてはいないと言うことね…」

「いや、もしかしたら保存食って意味かも…」

「それもそうね、干物や塩漬けにすれば長期保存できもの」

「そういう問題じゃねェ!フザけんな!!おめェらのそれいつも怖すぎるんだよ!!」


いつも通り、ロビンとアスカが末恐ろしいことを呟き、いつもボソリと恐ろしい事を言って気が合うロビンとアスカにウソップが突っ込む。


「落ち着け…ぐる眉がいるんだ…殺される様なヘマしねェよ」


騒いでいるのはウソップだけで、ウソップ以外は冷静だった。
誰もミンク族の『死体』の言葉を信じていない。


「トラ男君、あなたの仲間達がここにいるんでしょ?連絡手段は?」

「ない…また会えると思っていなかったからな…」


アスカ達は連絡できる手段を持っておらず、ローに仲間達との連絡手段があるのか聞くが、ローも同じだった。
ローはドフラミンゴとの戦いで生きて勝利すると考えていなかった。
その意味を知るのはアスカだけだろう。
アスカはローの言葉の意味に無意識に視線を伏せた。


「だが、そうか…忘れてた…ビブルカードがある…ウチの航海士ベポのものだ」


連絡先、と聞きローはポケットからビブルカードを出す。
そのビブルカードはベポの物。
ベポと聞き、アスカはシロクマの船員を思い出す。
ロー曰く、ベポはただの喋るシロクマではなく、シロクマのミンク族だった。
このゾウはそのベポの故郷ではあるらしいのだが、幼い頃に島を出てしまったためこの島での記憶はあまりないらしい。
アスカ達は犬のミンク族の言葉ではなく、とりあえずとして真っ直ぐ進むとある町へと向かうことにした。

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