グランドライン、前半にある島、『マリンフォード』。
そこには世界各地にいる海兵を束ねる海軍本部がある。
その本部の廊下を一人の若い女性が堂々と歩いていた。
その女性はとても美しい容姿を持っており、その美しさはかの女帝ハンコックに並ぶほどだろう。
白く透明な肌、漆黒の瞳に漆黒の絹のような美しい髪を持ち、彼女が微笑めば周りの者は全て彼女に目を奪われるほど、彼女は美しい。
彼女は黒を基準としたスーツを身に纏っているが、その胸元は大胆にも大きく開いてあり、豊満な胸の谷間が丸見えだった。
スリットの深いミニのタイトスカートからは彼女の自慢の長く美しい足がさらけ出されており、ストッキングがまた艶っぽく男心をくすぐる。
しかし、彼女は決して男を誘う為にこのような艶めかしい服装を身に纏っているわけではなく、若さゆえのファッションなのだろう。
そして同時にそんな彼女に手を出すものなどこの本部にはいなかった。
何故なら彼女は…
「あっ!黒蝶さん!!任務、お疲れ様です!!」
彼女は、海軍本部の要の一人…"大将黒蝶"であるからだ。
海軍大将はトップである元帥の次の地位であり、元帥より上の地位はない。
大将は彼女を合わせて4人しかおらず、四大将のうち1人は女性である黒蝶が就任している。
黒蝶という異名と共に彼女は自分の力で若くしてこの地位を手に入れたのだ。
そんな彼女は長い任務を終えたばかりで元帥に報告した帰りだった。
任務を終えて帰ってきた黒蝶の姿にすれ違う海兵達は敬礼をし労わる。
それを彼女は微笑みで答え、その美しい微笑みに海兵達の目はうっとりとなっていく。
そんな海兵達の視線を慣れたように受け流し、部屋へ帰りゆっくりとしようと思っていた黒蝶はある物に目がいき、立ち止まる。
それは掲示板だった。
各廊下にある掲示板は行事や知らせをしたりする役割があるが、その中でも海軍ならでわの掲示板も置かれていた。
それは海賊達の手配書である。
初めて懸賞金を掛けられた海賊の手配書、懸賞金を更新した手配書、そして捕まったり死亡の確認が取れた手配書などが貼られている掲示板があり、黒蝶はその手配書専用の掲示板の前で立ち止まる。
「まあ…まあまあ!なんてこと!!」
黒蝶はある手配書を見て驚いたように目を丸くした。
その手配書は一枚ではなく二枚だった。
黒蝶はその手配書を貰いに情報部へと向かう。
その足は軽やかだった。
そしてある"東の海"の海上。
その海にメリー号がいた。
メリー号に止まるカモメ新聞をナミは受け取ったのだが、その表示されている金額に目じりを吊り上げる。
「また値上がりしたの?ちょっと高いんじゃない?あんたんとこ!」
「クー…」
「今度上げたらもう買わないからね!」
その新聞はナミがよく買っていたもので、世の情勢を知るには新聞は必需品なのだ。
しかしこの間値上がりしたばかりなのにまた値上がりしたらしく、ナミはまた値上がりしたらもう買わず別の新聞社を頼むつもりでいた。
ナミの苦情にカモメは困ったような申し訳ないような声で鳴いた。
「なにを新聞の一部や二部で…」
その様子を傍で武器を作りながら聞いていたウソップがポツリと呟く。
その呟きはナミに届いており、新聞を握りしめながらナミは丸い小さなボールにタバスコを入れるウソップの背をキッと睨む。
「毎日買ってるとバカになんないのよ!」
「お前もう金集めは済んだんだろ?」
「バカ言ってるわ!あの一件が済んだからこそ今度は私は私のために稼ぐのよビンボー海賊なんてやだもん!」
「おい騒ぐな!!おれは今必殺"タバスコ星"を開発中なのだ!!」
村の解放を夢見て一生懸命溜めた一億ベリーというお金は全てココヤシ村の復興のために置いて来たのだ。
お金なんてまた集めればいいし、何より今度は自分のためにお金を集めようと決めた。
キツキツな貧乏海賊団では気の持ちようも違うし、一番は可愛い服も着れないような貧乏海賊団なんど嫌なのだ。
そう言うナミを遮り、ウソップはストップをかける。
今、ウソップはタバスコ入りの武器を作っており、慎重に作業をしていた。
そ〜っとタバスコを小さな穴に入れているとルフィが投げ飛ばされウソップにぶつかってしまう。
その際慎重に入れていたせいで顔を近づかさえていたウソップはルフィがぶつかった拍子にタバスコが目に入りのたうち回る。
それを見ながらナミは呆れたように溜息をつきビーチチェアに座り新聞を開いた。
アスカは手すりに座り、海風を受けながら広大に広がる海を見ていた。
すると新聞の間からハラリと二枚の紙が落ち、ルフィがチラシかと思い拾う。
しかし…それはチラシではなかった。
「あ…」
「あ…」
「あ」
「?」
「ぐー」
「お」
「「「あああああーーーーっ!!!」」」
新聞から落ちたのはチラシ…ではなく、なんと手配書だった。
大海賊時代、多くの手配書があるため手配書の存在くらいでは驚かない。
だが、その新たなに刷られたらしいその手配書が問題だったのだ。
その手配書というのが…
「なっはっは!おい!アスカ!!おれ達は"お尋ね者"になったぞ!!3千万ベリーだってよ!!」
ルフィの手配書だった。
しかも一枚の上にもう一枚舞い落ちており、その手配書はアスカのもだった。
幼馴染コンビはついに賞金首になったのだ。
アスカはルフィから自分の手配書を受け取り、手配書を作る際つけられる異名のような名前を見てアスカは不貞腐れたように手配書を睨んだ。
「"冷酷ウサギ"?…あのネズミ男め…私情を挟むなっつーの!」
アスカとルフィの手配書を作らせたのは、あの時の状況を考えネズミのような大佐なのだろう。
アスカはアーロンを倒した時、その場にいなかったため異名に続く名前の欄は空白になっており、写真も入手出来なかったため黒く塗りつぶされている。
問題の懸賞金欄だが、ルフィは『3千万ベリー』、そしてアスカは『1千500万ベリー』となっており、どちらも生死を問わずの意味の『DEAD OR ALIVE』と書かれていた。
金額がどうのとかはこだわりがないため別にかまわない。
だが私情タップリの異名にアスカは不服だった。
ムスッとしながら自分の手配書を睨むアスカの横で、ナミは騒ぐ男達に溜息をつく。
「あんたらまた見事に事の深刻さがわかってないのね…これは命を狙われるってことなのよ!?この額ならきっと"本部"も動くし強い賞金稼ぎにも狙われるし…」
「見ろっ!!世界中におれの姿が!!モテモテかも!」
「後頭部じゃねェかよ!自慢になるか!」
サンジも海賊となったからには有名になりたいという男らしい野望はあった。
有名になり世の女性達にモテモテになりたいという…野望が。
だが、まだ海賊に入って数日の元コックがそう簡単に有名になり賞金首になれるはずもなく…アスカでさえ逆恨みからの手配書なのだ。
ウソップはウソップでルフィのオマケ扱いだが、手配書に後姿だけ映っていても喜んでいた。
「これは"東の海"でのんびりやってる場合じゃないわね…」
大喜びする男共を見てナミは危機感のなさに顔を覆って呆れ果てた。
賞金首になり、そしてなろうと目標を立てる男達をよそに、アスカはいまだ自分の手配書を睨むように見つめていた。
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