アスカ達は夜に目を覚ますくじらの森の『
侠客団』や町人達の診察に向かうチョッパーについて行き、移動する手段で使われているワーニーという動物に乗って移動することになった。
ルフィ達を含むと一匹のワーニーに乗るには無理があるため、ワンダと、彼女と同じ昼夜関係なく動ける『王の鳥』であるキャロットが手綱を取ってくれることになった。
「いいなァ、ワンダ…女神さまと一緒で…」
サイボーグのフランキーがいるため、重さを考えてアスカはワンダが手綱を握っているワーニーに乗ることになった。
一緒に乗っているのはルフィ、ナミ、ブルック、ゾロ。
ワンダの後ろに乗るナミとブルックの間にアスカは座っており、キャロットはチラチラとアスカを見ながらアスカを乗せているワンダを羨んだ。
それにワンダは誇らしげに胸を張り、アスカは無言で返しキャロットから全力で視線を逸らしていた。
そんなアスカを他所に、ブルックは砦から離れたのを確認した後ポロンとギターを弾く。
「さて…皆さんにお話しがあります」
「話?」
「…『ぐるマユ』と『ガス』か…話の中で消えてねェしな」
ブルックの言う話に首を傾げていたアスカ達だったが、ゾロの言葉に『ああ、そういえば』と思い出す。
「この出来事…実はこの国の人々にはあまり話してないのです」
そのため、ブルックは砦から離れたのを確認して話題を振った。
ミンク族は沢山傷ついた。
そんなミンク族にこれ以上心労をかけたくなかったブルックの配慮だった。
ブルックは言う。
これはこっそり起きた大事件だと。
そして、こうも続けた。
「サンジさんはもしかしたらもう…私達の下には戻って来ないかもしれません」
その言葉に、その場は静まり返る。
しかしその沈黙をルフィの驚いた声が破く。
「戻るって書いてあっただろ!!サンジの手紙にィ〜〜〜!!」
「だから言ってるじゃない!実際は深刻だって!!」
サンジの手紙には確かに帰ると書いてあった。
それをルフィは信じていたため、今まで焦ってはいなかった。
「ここは"幻の島"…島自体が生物であるために"
記録指針"でもたどり着けず普通なら見つけることもできない場所」
ブルックは音楽を奏でながら続ける。
この国は陸地ではなく、巨体を持つ象。
生き物である以上、指針は役に立たない。
だからまさか"あの者達"が来られると思っていなかった。
「しかし我々には"失態"と"盲点"がありました!完全に引き離したはずの敵船…―――『ビッグ・マム海賊団』が出らわれたのです!」
ブルックの言葉にルフィ達は目を丸くする。
話を聞いた際、ゾウに着く前にビッグ・マムの海賊船と遭遇したのは聞いていたが撒いたとばかり思っていた。
それはブルック達も同じだろう。
そして、何よりブルック達は失態を犯してしまっていた。
それに気づいたのは彼らと対面した時。
ビッグ・マムの船に乗っていたうち一人のクルーに、『ゾウ』の出身者がいたのだ。
「ビッグ・マム海賊団には『ゾウ』の出身者……もしかしてあのライオン…?」
アスカはビッグ・マム海賊団にいるミンク族と聞き、何となく引っかかりを覚えた。
ウンウンと考えているとパッと顔が浮かぶ。
アスカはブルックを見上げると、アスカ止めと目が合ったブルックはコクリと頷いた。
「ああ…あの喋るライオンか!」
アスカの呟きにルフィが反応し、アスカは意外そうにルフィを見た。
アスカはルフィがあのミンク族を憶えていると思っていなかったのだ。
「珍しい…覚えてたの?」
「おう!あいつアスカに惚れたとか言ってたしな!」
「ああ…なるほど…」
普段なら『誰だ?』となっていただろうそのミンク族を憶えていたルフィにアスカが驚いた顔でルフィを見た。
そんなアスカに、特等席のワーニーの鼻先に座るルフィは振り返りニシシと笑う。
ルフィの返答に、同じく驚いていたウソップは納得したような呆れたような顔でルフィを見た。
ビッグ・マム海賊団にいるミンク族とは、魚人島で出会ったライオンのミンク族のペコムズのことだ。
あの頃はまだローというライバルがいなかったからアスカへの恋心には気づいていなかったが、恋と独占欲を自覚したルフィはアスカに一目惚れしたと言っていたペコムズを憶えていた。
普段、人の名前を覚える気のないルフィが恋人にちょっかいをかけたという理由だけでペコムズの名と顔を覚えているのだから、まさに恋は偉大である。
誰もが関心していた。
しかし―――
「―――は?」
地を這うような声がその場に響く。
その声に、全員がその声に背筋を凍らせた。
ギギギと全員がその声の方へ視線をむければ、そこには――ナミがいた。
鬼の、形相をした、ナミが、いた。
ナミは目をかッと見開きルフィを見る。
その目は血走っており、明らかに怒りの色を含ませていた。
それには流石にルフィも気づいており、自分の失言にルフィは気づき慌てて口をキュっと強く噛みしめた。
「それ…私聞いてないんだけど…」
低く不機嫌な声。
その感情は全てルフィに向けられていた。
ルフィは珍しく冷や汗をかきながら『あー…』と視線をあちこちにさせる。
流石に多くの強敵をなぎ倒してきたルフィでもアスカ関連のナミには勝てなかった。
とりあえずこちらとしては何も悪くはないが、こういう時は謝った方が無難だと学んだルフィはナミに頭を下げた。
しかし、ナミは見逃してはくれなかった。
「ごめんなさい」
「謝罪が欲しいわけじゃないのよ、ルフィ」
「…ごめんなさい」
「だから謝罪が欲しいわけじゃないって言ってるでしょ…なんで報告してくれなかったのって聞いてんのよ」
「……別に…いいかなって…思って…」
「何がいいのか聞いてもいいかしら」
「……あー…財宝とかで忘れたっていうか…ビッグ・マムで忘れたっていうか…」
「まあ、あの時以上の驚きって中々ないしね…………―――で?」
「……………ごめんなさい」
アスカに彼氏ができてしまったことは仕方ないと諦めるしかない。
二人もできたことに関しては正直まだ納得はしていないが、あれ以上駄々を捏ねてアスカとの亀裂が深まるのはナミも避けたかった。
だが、だからと言って溺愛ぶりを治めるかというのは別問題である。
アスカは可愛い。
ルフィと同い年だと言う割には幼くて、あまり感情が豊かではなく淡々としていて、女の子らしい可愛いの権化でしかないウサギの能力者でありながらもその能力の使い方に難があるアスカをナミは初めて会った時から姉心が擽られたのだ。
幼く見えたのも栄養失調の影響だと知った日にはサンジ共々溺愛度は増した。
因みに、少女が食す一食分も食べれなかったアスカを見たサンジは『なんて儚いんだ』と泣き、小食と幼く見える原因が過去のストレスと栄養失調と知ったサンジは過去の自分を重ねて泣き、二年後再会した後ギリギリだが一食分を完食できたアスカを見て号泣した。
そんな可愛がっているアスカに悪い虫がいた。
それを事後報告されたナミは―――鬼になった。
「今後、報告を怠ったら……分かるわよね?」
「はい!!!勿論です!!!!!」
グッと拳を握るナミの顔はまさに鬼だった。
その背後にも鬼を背負っており、多くの強敵を倒してきたルフィは従順するしか選択肢はなかった。
「話を戻してもいい?」
ボスに屈する彼氏を見てもアスカは表情一つ変えず、話がそれたので戻そうとした。
ゾロは『いやお前のことだぞ』と話題の張本人なのにいかにも赤の他人面をする面の皮の厚すぎるアスカをこちらに流れ弾がこないよう口を固く閉じながら『やっぱあいつしか副船長は無理だな』と思った。
アスカの声掛けにナミは鬼の形相から、アスカに見せるような和らいだ表情へパッと変え『あっ!ごめんね、アスカ』と話を逸らしたことを謝った。
「ビッグ・マムの船に乗っていたのは私のアスカに告白しやがったペコムズって野郎なの」
(ところどころ言葉が…ナミ…まだ納得していないのね…)
ゾウにたどり着く前に襲われたビッグ・マムの船には魚人島で会ったことがあるライオンのミンク族、ペコムズと、足長族であるタマゴ男爵…そして、同じ最悪の世代の一人であるカポネ・G・ベッジだった。
ナミはそれを説明する際に、アスカに一目惚れをしたという情報を得たからか、彼に対して口調が荒れた。
そんな全然納得いっていないナミにロビンはナミの荒れようにペコムズに手を合わせた。
――ペコムズは故郷の惨状に最初ナミ達を疑って怒り心頭だったが、再会した仲間達から話を聞きそれが間違いだと気づいた。
おかげで戦闘は免れたが、問題はベッジだった。
故郷を救ってくれた恩人だからと見逃してくれると言ったペコムズを撃ったのだ。
ベッジは体が城のシロシロの実の能力者であり、サンジはブルックと二人で話し合おうとしたが気になって様子を見に来たナミ達を捕まえ彼女たちを人質に言った。
――結婚式の招待状を預かっている――と。
ただの結婚式ではない。
――新郎は『ヴィンスモーク家の三男サンジ』、新婦は『シャーロット家三十五女プリン』
その招待状はサンジと四皇ビッグ・マムの娘との結婚式のものだった。
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