大魔神様は仰られました。
「約束を破ったら連帯責任だっつったわよね」
と。
勇者その1はこう答えました。
「船じゃねェからいいだろ」
と。
大魔神様はこう返しました。
「は?????」
と。
勇者その1はこう思います。
(ドフラミンゴより強敵じゃねェか…)
と。
あれだけ死を覚悟した強敵であるドフラミンゴよりも、目の前の
大魔神様の方が恐ろしいと感じてしまった
勇者その1はそっと視線を逸らし、
勇者その2が『おいナミ!鬼ババァみたいな顔やめろ!こえェんだよ!!』と言いかけたので口を手で塞いで止めた。
◇◇◇◇◇◇◇
結局、アスカはナミに奪われてしまい『お前のせいだぞ』『は?何言ってやがるお前のせいでもあるだろ』とルフィとローはお決まりのお互いに罪をなすり合う。
彼らも本気ではないからできるお約束である。
クルー達は何とかローとルフィとアスカの三人が付き合っていることを受け止めた。
最初こそ三人で付き合っている…??とスペキャの顔をしていたが、『ま、まあ…キャプテン達が納得しているなら…いいんじゃないっすか…』と微妙な顔をしつつ受け入れてくれた。
きっと彼らは納得していないのだろうが、長い間アスカに片想いしている船長を見ていたせいもあるのか奪い合う形ではなく共有を選んだローの気持ちを尊重してくれたらしい。
ローはドフラミンゴのことやアスカのことも含め、クルー達に感謝してもしきれないと思った。
しかし、ほのぼのとした空気を吹き飛ばす事態になっているとこの時のローは気づいていなかった。
「"黒足屋"がビッグ・マムの所へ!?何がどうなりゃそうなるんだ!!」
麦わら一味からの報告に、ローは頭が痛くなる。
ドフラミンゴを倒し、恩人の本懐を果たし、二人の恩人の仇も撃ち、アスカを取り返すことが出来た。
それだけでも世間からしたらビックニュースになるのに、これからロー達が戦おうとしているのは四皇の一人であるカイドウだ。
カイドウは『最強の生物』と言われている存在で、恐らくドフラミンゴよりも強敵だと思われる。
そんな海賊をこれから相手にすることになるのに、そんなときに限ってトラブルは起きるらしい。
サンジがビッグ・マムの所に行ったからルフィが迎えに行くと言い出し、カイドウと戦うのを待てと言われたローは重い溜息をつく。
「待つも何もおれ達がカイドウに狙われるのは時間の問題だぞ!」
ローの考えていた予定としてはしばらくゾウに身を隠すつもりだったが、すでにカイドウにはゾウの存在は気づかれ襲撃されてしまっている。
それも、ジャックの探す一人の特徴からして、カイドウの娘を探しているようだった。
話を聞く限り、探している人間云々関係なくカイドウの配下が敗北したままで黙っていられるわけがない。
また来る可能性は高い。
「次はおれ達が狙いだとしても!また攻め込まれたらこの国は一体どうなる!!」
ジャックの探している人物が自分達ではなかったとはいえ、ルフィ達の船には侍が乗っている。
同じ侍を探している以上、ルフィ達の存在だって気づかれるのも時間の問題だ。
この島はクルーの一人であるベポの故郷というのもあり、ローとしてはここをこれ以上戦場にしたくはなかった。
それを告げれば、部屋の外にミンク族が集まりローの気遣いに泣いていた。
「優しいな〜〜〜うお〜〜〜!!」
「ガルチュー!ゆガラら本当に海賊かァー!?」
「流石我らが女神の恋人達だなーー!なんて慈悲深いんだ!」
「助けてくれた上に気遣いまで…!ありがとう!」
「うおおお!!女神サイコーーー!」
「女神ーー!」
「「「我らが女神ーーーッ!!!」」」
外で聞き耳を立てていたらしく、ローの気遣いに全員が感激していた。
しかも、なぜかアスカを持ち上げだし、女神コールが起こる。
アスカはナミに抱きしめられながら死んだ目になる。
「…女神?」
アスカが何故かミンク族に神格化されているのを知らないローは聞き慣れない言葉に首を傾げ、どういうことだとルフィを見た。
ルフィはその視線にニシシと笑いながら女神がアスカで、ミンク族は何故かアスカに懐いていると教える。
その説明に、ローはゆっくりとアスカへ視線を向ける。
その『何やってんだお前』というローの視線に合わせて死んだ目をそっと逸らす。
「よーし!宴ぜよ!!酒と肴を!!」
「何でだネコマムシ〜〜〜!!」
傷が再び開いたネコマムシを部屋に入れて治療をしていたチョッパーが、起き上がり宴を開くと言い出したネコマムシに怒号の突っ込みを入れた。
そんな医師の怒号など耳から耳へ通り抜けているらしいネコマムシの積極的な指示と宴が好きなルフィによって宴は開かれることになった。
――宴は大いに盛り上がり、怒って止めていたチョッパーも鼻に割りばしを刺して楽しんでいた。
その姿をナミが呆れたように見つめる。
「チョッパー…あんなに怒ってたのに…」
「ふふ…みんなに混ざってるわね…楽しそうだわ」
ここに来る前も宴を開き騒ぎ楽しんでいた。
そのほとんどのミンク族が怪我人で、包帯が巻かれていた。
本来なら医師であるチョッパーは咎めなければならない立場であるが、周りの楽しそうな雰囲気に釣られてみんなと宴を楽しんでいた。
ナミは呆れていたが、ロビンは楽しそうにしているチョッパーの可愛さに頬が緩み笑みを浮かべて見守っていた。
ロビンの言葉に、ナミはブスッと不機嫌な表情を浮かべ持っていたコップの中にあるお酒を一気飲みする。
そんなナミにロビンは心配そうに飲み干すのを見つめていた。
「ちょっとナミ…いくらなんでも飲みすぎよ…ルフィについて行ってサンジを迎えにいくんでしょ?」
みんなの楽し気な宴の風景を楽し気に見ていたロビンだったが、流石にガブガブと水のように酒を飲むナミを心配し新しい酒に手を伸ばしたの止めた。
ナミはサンジがベッジに連れていかれたのを責任を感じ、ルフィについて行くつもりだった。
まだルフィには言っていないが、駄目だと言ってもしがみついてでもついて行くつもりだ。
それなら、酒の飲みすぎで潰れたり二日酔いで動けなくなるのは避けるべきだ。
それでなくても急性アルコール中毒を心配している。
しかし、そんなロビンの心配も今のナミには通じない。
むしろATフィールド並みに跳ね返していた。
ロビンの止める手を振りほどき、ナミは傍に会った酒をまたグイっと豪快に飲む。
酒に飲まれ大賑わいの周囲はナミのその豪快さな飲みっぷりに更に盛り上がった。
「もう…あまり縛り付けると反抗期来ちゃうわよ…」
ドン、とテーブルに叩きつけるように置くナミに、ロビンは呆れたようにため息をつく。
溜息をつきながらの言葉にナミは『うぐっ』と声を詰まらせる。
アスカに反抗期が来る、と男性陣達(一部除く)が聞けば『えっ…アレで反抗期きてないつもりだったの???』とキョトン顔で言われるだろう。
だが、保護者組からしたらアスカは可愛い可愛いウサギちゃんなのだ。
そこに近い未来、操舵手が追加される。
ナミは脳裏にあの時を思い浮かべ、顔をしかめた。
あの時とは、ルフィとローと付き合ったばかりの頃。
ルフィをけしかけたロビンに乗り込んだ時にナミに否定された時だ。
その時、ナミはアスカ可愛さに、彼女の気持ちを蔑ろにしすぎた。
そのせいでアスカがナミに激怒した。
アスカは基本、怒ることはない。
正確に言えば、怒るという感情を爆発することは稀だった。
しかも、仲間に。
その激情をアスカは初めて仲間であるナミに向けた。
確かに、ルフィとローに流された感じは否めないが、それでも二人と付き合うことを決めたのはアスカ自身だ。
ルフィだって、ロビンに唆されたが、ルフィの気持ちだっていずれ自覚していただろう。
仲間であっても、好きな人を全否定されたらアスカだって怒る。
ナミはそれがちょっぴり…結構…いや、だいぶトラウマになっていた。
目に入れても痛くないくらい可愛がっているアスカに本気で怒られてしまったのだ。
普段どれだけ理不尽な理想な旦那像を押し付けられても怒らなかったから余計に。
ナミはロビンの言葉に勢いが萎む。
しかし、まだ不満なのかある方をギロリと睨んだ。
ロビンも釣られるようにそちらに視線を向けると―――アスカと、ローと彼のクルー達がいた。
「たまには私達以外の交流もアスカには必要だわ」
「そうだけど…でも私だけのアスカなのよ〜っ!」
「ふふ、ナミったら…――私"達"のアスカ、よ」
「アッハイ…スミマセン…」
アスカは今、ナミ達から離れてローの仲間と飲んでいた。
三人で付き合っているとなんとも飲み込みにくい事実を、彼らはなんとか受け止めてくれた。
三人で付き合っていることにはまだ慣れないが、それでも大切な船長の恋人なのはすでに受け入れており、せっかくの機会だからとローのクルー達が一緒に飲もうとアスカを誘ったのだ。
アスカは酒は飲まず、食事だって一人前を何とか食べれる程度の小食。
それでも宴は嫌いではなく、雰囲気を楽しんでいた。
それでもいいと言ってくれたので、アスカは言葉に甘えてローと共にハートの海賊団たちの輪に入らせてもらった。
それが、ナミからしたら気に入らなかったようだ。
それはきっと可愛い妹を取られたようで拗ねているのだろう。
そのナミ含めてロビンは微笑ましく感じながら、『私の』とアスカを自分の妹だと言わんばかりのナミに、ロビンは肩に手を置いて訂正する。
それはそれはもう、丁重に。
ニッコリと笑うロビンの圧に、ナミは頷くしか選択肢はなかった。
そんなナミ達に気づかず、アスカはローのクルー達から注がれる飲み物をチマチマ飲んでいた。
「アスカさーん!飲んでますか〜!」
ナミという保護者から離され、アスカはハートの海賊団に絡まれていた。
みんな船長の初恋の相手に興味があったのだ。
あっという間に囲まれたアスカは悪意など一切なく好意全開なクルー達に押され気味だった。
そんな中、ほんのりと酔っているイッカクに腕を組まれ絡まれてしまう。
飲んでいると言われてもアスカは酒を飲めないため、飲んでいるものはアルコールではなく普通の果実を絞ったものだ。
それでも周囲が飲んでいると言うのもあるのか、雰囲気やお酒の匂いで顔がほんのりと赤らんでいる。
それ以上に顔を赤らめているのが、イッカクをはじめとしたクルーやミンク族達である。
あちこちに『はわわ…赤らんでいる女神マジ女神』『酔っていらっしゃるそのお姿はまさにほろよい天女…』などお約束の反応をされているので聞かなかったことにした。
飲んでいると問われたアスカは『お酒じゃないけど』と心の中で呟きながら『うん』と頷いて返す。
「こっちで一緒に飲みましょう!」
「おい、イッカク…」
「良いじゃないですか!せっかく同性が船に乗ってくれるって思って楽しみにしてたんですよ私!」
組んでいる腕を引っ張ってローから離し一緒に飲もうと誘う一角にローが止めに入ろうとした。
しかし、酔っ払いは最強なのかいつもなら船長であるローに強く出ることはないイッカクは強気にアスカをローから奪った。
一緒に飲んでいたクルーに歓迎されるアスカを見送りながら、ローは溜息をつき止めに入るのを諦めた。
長く拗らせていた片想いを応援し、三人で付き合っていると言う非常識なお付き合いにも彼らは受け入れてくれた。
まだ心から受け入れてくれているわけではないのはローも分かっているが、クルーでありずっと応援してくれた彼らを無下にはできない。
ナミから『あんたね!私のアスカを奪っておいて何クルーにアスカを奪われてるのよ!だったら私にアスカを返しなさいよ!!』というぶっさすような鋭い視線と、ロビンの『トラ男君も人の子なのね』という暖かい視線を弾きながら一人寂しく酒を仰いだ。
「ロー、いいの?」
「いいんですいいんです!アスカさんを取られて拗ねてるだけなんで!」
(いや、だからいいのかって聞いたんだけど…)
一人酒を仰ぐ恋人の一人をチラリと見た後、クルーの一人に問うとぞんざいな返答が返ってきた。
恐らく、酒が入っているからだろう。
『まあいいならいいか』といつものスルースキルを発揮させながらアスカは手に持っていたグラスを煽った。
本当ならもう19歳なのだから酒を嗜んでもいいのだろうが、ルフィもアスカも、酒は性に合わないのか美味しさを理解できずに育ってしまった。
ルフィは知らないが、アスカは確実に兄弟の盃の際に飲んだ酒の不味さを引きずっているのだろう。
それにアスカはルフィと真逆の食欲を持っている。
栄養失調の影響で一人前も食べれなかった過去と違い、やっと体が本来の成長に追いついた。
それでもアスカが小食なのは、元々が食べる方ではないからだろう。
(あ、これ美味しい)
ローのクルーに『これ美味しいっすよ』と勧められた料理を一口食べるとアスカの口に合ったのか本当に美味しく感じた。
しかし、サンジの料理に比べると差が出来てしまう。
(ついて行きたいけど…チョッパーとローに止められてるからな…今回は残念だけどルフィとナミに任せることにしよう…)
もぐもぐと咀嚼しながらアスカは心の中で残念そうに呟く。
アスカはドフラミンゴに捕まった時に無理矢理記憶を改ざんさせられた。
そして、兄であるエイルマーのおかげで記憶は戻ったのだ。
その影響は今の所、体にも精神にも影響はないが医師であるローとチョッパーからドクターストップを受けている。
今影響が出ていないだけで、遅れて現れる場合も考えられるからだ。
アスカからしたら杞憂だと思うが、アスカは医師ではないし、医師である二人だって確かなことも分からない。
対応が難しいためアスカが独断で決める事もできない。
それにドフラミンゴと別れを告げた今、落ち着いたとは言えどまだアスカの心は落ち着かない部分もある。
大まかな整理はできているが、細かな整理がまだ終わっていないのだ。
その最後の整理整頓をしたいのもあった。
だから、サンジには悪いがルフィとついて行くと言ったナミにサンジを任せることにした。
それに、アスカはルフィだけではなくナミや他のクルーへの信頼もあるのだ。
二人ならサンジを連れて戻ってくると言う信頼をアスカは揺ぎなく持っている。
「そういえばベポ達ってローの幼馴染なんだよね」
「そうだよ!キャプテンとおれ達でハートの海賊団を結成したんだ!」
アスカはふと以前にベポとシャチとペンギンはローと幼馴染だと聞いたことを思い出す。
確認するように傍にいたベポに問えば、ベポは頷いて返した。
「ね、子供の頃のローのこと教えて?」
内容的にローが聞かれたくないものだとアスカは分かっていたから、ベポとシャチとペンギンに聞こえる程度の小声で聞いた。
三人は酒で酔っているとはいえ、まだ理性は残っているのかチラリとローを伺う。
変なことを言うと後で体をバラバラにされて磔にされるのだ。
しかし酔っ払いは最強である。(二回目)
「いいっすよ!!」
いい具合に酔っ払った二人は面白そうだと思い、ベポは『子供の頃の話を聞きたがる=キャプテンのことをもっと知ってもらってもっとアスカとキャプテンの仲が深まる』と思い、三人は二つ返事をした。
ペンギンとシャチがグッと親指を立てて良い笑顔を浮かべている姿を見て、ローは嫌な予感がした。
止めに入ろうと腰を上げたその時、他のクルー達が連携してローを囲み酒を注ぎ始める。
面白がっているが、みんなローの想いが実を結んだことに喜んでいるのだ。
その感情が溢れ、つい揶揄いのようなことをしてしまっても仕方ない。
だが、揶揄われるローからしたらいい迷惑ではある。
誰だって子供の話をされるのは恥ずかしいだろう。
しかし、アスカだってローに子供の頃の話をしたのだからアスカも聞く権利はある。
アスカの両脇を占領すると後が怖いので、ローに絶対的な安全圏と認識されているベポの膝の上に乗ってもらうことにした。
「おれらとキャプテンは北の海のスワロー島で出会ったんですよ」
シャチが昔を思い出しながら色々話してくれた。
コラソンと別れた後、ローはスワロー島という島でベポを虐めていたシャチとペンギンと出会った。
因縁を吹っ掛けられて返り討ちにしたのがきっかけで4人は仲間として行動を共にしていた。
それから彼らは様々な経験を経て海を出て今に至る。
アスカ達も多くの冒険をしたように、彼らもアスカ達と同じく様々な冒険を経験したようだった。
…いや、自ら世界政府に喧嘩を吹っ掛けたり、天竜人を殴るなどという冒険はアスカ達にしかできないことではあるが。
アスカはその話を楽し気に聞いていた。
傍から見たら楽しんでいるのか分からないような表情筋をしているが、親しい人から見たら楽し気に見える程度にははしゃいでいた。
彼らが話すその全てがアスカにとって楽しいお話だった。
忘れていたとはいえ、アスカにとってもローは大切な人の一人だ。
まだあの頃は恋なんて気づいていなかったが、きっと一緒にいたら今よりも早く恋心に気づいただろう。
ハートの海賊団となり海に出たころになると一緒に聞いていたクルー達も話に入ってきた。
「キャプテンってば自分がイケメンだって自覚ないんすよ!」
「そうなの?」
「そうなんすよ!寄る島で多くの美人に誘われても全然表情一つも―――」
話をしていたクルーが隣にいた仲間に口を塞がれる。
『お、おい!その話はマズイって!』と焦る仲間にクルーは自分の発言に気づき青ざめる。
酔った勢いなのだろうその発言に、誰もが先ほどまでの勢いが消え恐る恐るローを見る。
案の定、ローは殺さんばかりに睨んでいた。
「ふーん…ローってモテるんだ」
冷え切ったその場の室温が更にグッと下がるのをイッカクは分かった。
そのおかげで楽しく飲んでほろ酔い状態だった頭が一気に醒める。
恐る恐るアスカを見れば、アスカは普段と何ら変わっておらず、だからこそ恐ろしい。
ほとんどのクルー達の酔いが一瞬にして醒めた時、ローは能力を使って隣にいたクルーとアスカを入れ替える。
突然能力を使うローに、ゾロ達は驚いたが敵ではないと知ると騒がしさを取り戻した。
そんなゾロ達に気に掛ける暇さえないローはアスカを抱き寄せ膝の上に乗せる。
向かい合うような形で座らされたアスカは、ローの肩に手を置いて静かに彼を見つめるだけだった。
それがローの焦りを強くするのを、アスカは気づいているのだろうか。
「違うからな、アスカ」
「まだ何も言ってないけど…」
ローの口が閉ざされた。
本人としては言い訳しているわけではないのだが、言葉を発すれば発するほど言い訳でしかなくなるのに気づいたのだろう。
その様子を見てクルー達はハラハラとしたのと同時に、どんな美女でも一言(とてもじゃないが聞かせられない単語)で追い返す船長を見て来た彼らから見て言葉一つでローを黙らせるアスカに尊敬の視線を送っていた。
グッと唇を噛むローにアスカは目を細め、唇を噛むのを止めさせるようにローの唇を優しく撫でるように触れる。
「大丈夫…ルフィもローも…私は信じてるから…」
元々アスカはローの浮気は疑っていない。
そもそもアスカだって色仕掛けの件もあり人のことは言えない。
だが、それを抜きにしてもアスカはローとルフィが自分を裏切って他の人と浮気するなんて疑うことすらしていないほど信用している。
とはいえ、面白くないのも事実なため、ちょっと焦ったらいいなと意地悪をしたのだ。
意地悪を長引かせる気は一切なく、すぐローを安心させるが―――ローがアスカからの信頼に答えるよりも前にドッと歓声が上がった。
「流石アスカさんだぜ!それでこそキャプテンの恋人だ!!」
「いいなー!やっぱ幼馴染カップルいいなー!!」
「ギャブデン゙よ゙がっだでずね゙ェ゙!」
「うおおお!!野郎共ォーー!アスカさんのためにキャプテンの貞操はおれ達が守るんだァァ!!」
「「「おおお!!」」」
アスカは目を瞬かせてローのクルー達を見る。
大きな金色の目をパチパチとさせるアスカに対して、ローは顔を手で覆って俯いていた。
「…お前ら…少し黙れ…」
麦わら一味からの視線が痛い…痛すぎる。
チラリとルフィの方へと視線を向ければ、ルフィは眩いばかりの笑顔を浮かべていた。
その笑みにローはもう叱る気力すら沸かない。
「アスカさん!安心してください!おれ達が美女からキャプテンを守ってみせますから!!!」
「あ、はい…お願いします」
良い笑顔でグッと親指を立てられ言われてしまえば、勢いに押されているアスカは頷くしかなかった。
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