解読には時間が少しかかったが、流石ロビンと言ったところか…全ての文章の解読を終えた。
外に出ていたルフィが戻ってくるまでの間、ロビンは航海士であるナミにあることを頼んでいた。
戻ってきたルフィはローと2人で座っているアスカの下へ一目散に向かう。
「アスカ、もういいのか?」
「うん…ありがとうね」
ローが傍にいるから大丈夫だとは思っていたが、ルフィも心配していたのだろう。
ルフィにまで気を遣わせてしまった事にアスカは申し訳なく思っていたが、ルフィの明るい笑みに救われる。
そうしているとロビンに頼まれていたナミも仕事を終えた。
「どう?ナミ」
「確かにこれを元に海図が描ける!何かの場所を特定できそうよロビン!」
ポーネグリフにはある島への海図を示す文章が書かれていた。
航海士であるナミに確認してみると、ロビンの予想通り海図を描くのに必要な情報が描かれていた。
「その赤い意思の名は『ロード
歴史の本文』…海の猛者共が探し求める"
偉大なる航路"の最終地点!そこへ導くための石だ!」
「!――まさか…最後の島『ラフテル』へ!?」
「その通り!」
ロビンが解読したそのポーネグリフは、同じポーネグリフではあるが、その意味は特別だった。
この『くじらの森』はこのポーネグリフを置いてあるからこそ神聖となり、だからこそネコマムシ達『侠客団』が守る必要があった。
イヌアラシの言葉に誰もが目を丸くし驚愕する。
イヌアラシは『ただし』と続けようとした時―――ルフィ達がどっと押し寄せてきた。
「『ラフテル』ってゴールじゃん!!"海賊王"じゃん!!」
「え〜〜!?ラフテルの場所書いてあんのかそれ!!」
ワンピースを馬鹿にせず目的として海に出ている海賊にとって、言葉の情報だけでも大金となるものである。
それも一生働かず生きていけるほどの。
ルフィ達のように目的となっている人間からしたら喉から手が出るほどの情報だ。
驚かない者はこの場にはいないだろう。
淡白なアスカだって目を丸くしてイヌアラシを見つめていた。
「待て待て!慌てるな!ただし!"ただし"だ!」
驚きのあまり声を大きくして慌てるルフィ達をイヌアラシは落ち着かせながら指を四本立てながら話を続ける。
「赤い意思"ロード
歴史の本文"は世界に4つある!」
イヌアラシの言葉に、どこをどう聞き間違えたのかルフィはラフテルが4つあると勘違いしウソップに即突っ込まれた。
イヌアラシ曰く、その石にどこかの"地点"が記されているが、『ラフテル』ではないらしい。
このポーネグリフ含む、残る3つの赤い石にはそれぞれの地点が記されている。
その4つに記されている治天を繋げて結んだ中央に『ラフテル』がある。
そう聞かされてしまうとルフィ達の士気はぐっと上がる。
「よし!探しに行くぞ!おれすぐサンジ連れてくるから!」
「どこに探しに行くんだよ!世界広いわ!」
アスカも心が震えたくらいなのだから、幼い頃から海賊王に憧れているルフィはもっと昂っただろう。
ラフテルへ近づいたルフィは居ても立っても居られないと言わんばかりにさっそくそのあと3個のポーネグリフを探そうと言い出した。
しかしまだサンジの件は終わっておらず、ルフィは勿論忘れていない。
しかし、サンジを連れて帰ったら探すという無謀な提案をするルフィに、ウソップが正論で突っ込んだ。
この情報は重要ではあるが、これだけではあと3つのポーネグリフがどこにあるのか分からない。
しかし、情報はまだあった。
情報源はネコマムシだった。
ネコマムシはサンジを迎えにいくというルフィに、ビッグ・マムの所へ向かうことは間違っていないと答えた。
「4つの"ロード
歴史の本文"のうち、所在がわからんがは1つだけじゃ…1つはここに…残り2つはある海賊たちに"所有"されちゅう」
「海賊!?」
「"四皇"『ビッグ・マム』!そして同じく"四皇"『百獣のカイドウ』!!この2人が赤い石をそれぞれ1個ずつ持っちゅうがじゃ!」
その言葉に、それぞれ異なる反応を見せた。
ルフィは目を輝かせ、ナミやウソップ、チョッパー、ブルックは驚愕しルフィに抗議しはじめる。
勿論、大人組とゾロ、ロー、アスカは相変わらず淡々としていた。
それぞれの反応を見せながらネコマムシは『奪う必要はないき』と続けた。
「"魚拓"のようにその"写し"を集めるがが普通じゃ…こんなデカイもんを集めて回る奴ァおらん」
ネコマムシの言葉にアスカは『そりゃそうか』と納得した。
別に持って行きたいつもりではなかったが、写すことは考えていなかった。
ネコマムシに言われてその選択を思い出した。
しかし、それに不満をあらわにした人物が一人――ルフィである。
「何が不満だキサマァ!!男らしさってなんだ!戦争か!?」
言葉にしなくてもルフィは不服そうな顔で表す。
こっそり潜入して"写し"を集めるというウソップの言葉に不服を感じているのだろう。
大半の人間はウソップの意見に同意だ。
ルフィとウソップのじゃれ合いを見ながら、ネコマムシは『そういえば』と呟く。
「そういうたら…おんしら"フレイル"っていうがは知っちゅーか?」
「フレイル?」
フレイルと聞き覚えのない言葉に一同首を傾げた。
しかし、1人だけ反応を示した。
「フレイルって…もしかして…"神の子"と呼ばれる種族のことかしら…」
その1人はロビンだった。
ロビンはまさかその名をここで聞くと思っていなかったのか、驚いた表情をネコマムシに向ける。
知っている人間がいたことにネコマムシは嬉しそうに『お!』と笑った。
「やっぱりおんしは知っちょったか!」
「ええ…でも子供の頃に読んだ本に本当に少し出た程度よ…"神の子"と呼ばれる種族だということしか知らないわ…ずっと存在しない種族だって思っていたくらい」
ロビンは『フレイル』の名を聞いたことはあった。
だが、『フレイル』という文字を知っているだけで、それ以上の情報をロビンは持っていなかった。
読んだのだってオハラのあの図書館でだけだ。
本の表紙からして何百年も前の物だったし、著者は不明だった。
博士たちに聞いても覚えていないくらい昔の本だった。
本に出た『フレイル』だって、その存在自体を書いているわけではなく、そういう存在がいるという曖昧な書かれ方をされていた。
それくらい不確かな存在なため、ロビンも記憶の奥にしまい込み今まで思い出すことはなかった。
ただ、『神の子』と二つ名を持つ存在だったから覚えていたのだ。
ネコマムシの口から聞かされるまで、その種族は空想の存在だと思っていた。
「フレイルは実在する…実際我等も会ったことがある」
「会った事がある?どこで?」
考古学の家系だったロビンは自身も歴史に興味がある。
母や親しかった博士達を失い、自身も狙われる原因となっているが、それでもロビンは歴史を知りたいと思う気持ちは強かった。
その中でたった数文字しか書き残されていなかった『フレイル』という存在に興味が沸いた。
会った事があるというイヌアラシの言葉にロビンは目を輝かせて聞くと、簡単に答えてくれた。
イヌアラシとネコマムシは懐かしそうに目を細める。
「ロジャーの船に乗っていたのだ」
「えっ!海賊王の船に!?」
まさか海賊王となったゴール・D・ロジャーの船にその歴史から消えた種族が乗っていたと聞きロビンどころかナミ達も驚いた。
ロジャーは今や伝説の存在となっているが、20年前に生きていた人間であった。
20年。
たった20年前だ。
知識に長けている博士達でさえ知らないほど前に絶滅したと思われていた種族が、20年前に存在していた。
絶滅した種族を多く知っているロビンからしたら言葉も失うほどの驚きと感激が込み上げる。
「わし等は途中で船を降りたが…彼らは元々ロジャー海賊団の一員やったきな…ラフテルまで共に航海したと聞いちゅー」
2人のフレイルは元々ロジャーの仲間だった。
イヌアラシとネコマムシは途中で船を降りたが、フレイル本人曰く、最後のラフテルまで行ったと聞いている。
そして、他のクルー同様、2人は望む島で降りた。
仲間とはそれ以来会っていないと言っていた。
「じゃあ…生きているかもしれないのね…」
ロジャー海賊団といえば、やはり思い浮かべるのはアスカ達も縁深いロジャー海賊団の副船長、レイリー。
シャンクスやバギーも乗っていたのだが、彼らはどうしても『赤髪海賊団の船長』と『バギー海賊団の船長』という印象が強い。
特にバギーはルフィ達に舐められているのもあってロジャー海賊だに所属していると知って今でもその印象は更に薄い。
そのフレイルの年齢は分からないが、レイリーと同世代ならば年老いているだろうが生きている可能性も高く、シャンクスとバギーと同じ年齢だったらまだまだ現役の年齢だ。
もしもシャンクスとバギーと同世代なら名が挙がっていないのは少し引っかかるが、海賊稼業を継がず一般市民として過ごしているか、はたまたロジャーの船にいたバギーが自ら身分を隠し東の海にいたことから同じく身分を偽って海にいるのか。
期待もあってロビンの頭には『死んだかもしれない』という言葉は浮かばなかった。
ロビンのポツリと呟かれたその言葉に、2人はコクリと頷いた。
「わしらが知っちゅーフレイルは2人おるが、途中で船を降りたきその後の2人がどう生きたかは知らん……やけんど3年前フレイルの1人がこの国に来た」
「えっ!来たの!?」
3年前。
まだアスカ達が新世界に入る前のことだ。
その1年後に海軍との戦争がはじまり、世界が大きく動いた年でもある。
「その者はまだ我等が幼かったというのに覚えてくれておってな…近くに寄ったからという理由で会いにきてくれたのだ」
イヌアラシはフレイルが来てくれた時を思い出しているのか、目を瞑る。
傍にいるネコマムシも思い出しているのか、『懐かしいな〜』と笑った。
その反応からして、フレイルはゾウの住民と良好な関係を築くことができる人物達だと窺える。
「それで…そのフレイルがなんだってんだ?」
懐かしい思い出話をするにはルフィ達は若すぎるし、ロジャーを知らなすぎる。
いくらロビンが考古学に明るいとはいえど、わざわざ海賊王とそこまで縁深いわけではない若い海賊たちにフレイルの話題を振る理由が語らいたいだけでは納得できるはずもない。
「フレイルは二度、表舞台に立ったことがあったがどれも重要な役割を担っていたと聞く……もしも海賊王になりたいのなら、そのフレイルに会ってみるのもいいかもしれんな」
フレイルなどこまで聞いた事がなかったアスカ達にとって、ロビン以外は眉唾物だ。
ロビンも役割の部分ではなく、絶滅したと思っていた種族が2人も生き残っていた……という部分に目を輝かせていた。
へー、と反応するしかなかったアスカだったが、ふとルフィがブスッとしているのに気づく。
「なによ、ルフィ…その顔…」
ナミがそう問うが、ルフィはムッとさせるばかり。
ルフィの反応にアスカも首をかしげていたが、ふと気づく。
「フレイルって人達のおかげで海賊王になれたと言われたくない感じの顔だ」
幼馴染が幼い頃から海賊王になりたいと言っていたので、ルフィはフレイルと会うことで彼らのおかげで海賊王になれたと言われたくないし思いたくないのだろう。
それを指摘すればルフィからはコクリと頷いた。
不満が積もりに積もりすぎて口も利きたくないらしい。
海賊王の事になると子供になる幼馴染にアスカは『しょうがない人だ』と言わんばかりに肩をすくめた。
アスカの言葉に頷いた船長にナミ達もそれぞれ呆れたり苦笑いを浮かべたりと反応を示す。
「まあ、こればかりは運ぜよ…会うたきといって海賊王に近づけるなら誰もがなっちゅーぜよ」
「!――だよな!そうだよな!」
フレイルと関わったからと言って海賊王に近づけるならば、実力も仲間も必要はなく、今頃多くの人間がラフテルへ近づいているだろうし、何より海賊王であるゴール・D・ロジャーが亡くなった20年もの間に何人もの海賊王が生まれてもおかしくはないだろう。
それこそ、ロジャーの船に乗っていたというなら、彼らと何度も兵刃を交えた白ひげがとっくの昔に海賊王になっていたはず。
そうフォローをすれば、二パッとルフィが破顔した。
「2人はエルフ族やきすぐ分かるろう」
「エルフ族?」
「長い耳を持つ長命の種族や」
なんにせよ、そのフレイルの2人とは20年以上も前に別れ、1人3年前に来て再会しただけで詳しい行動範囲は知らない。
それも、もう1人は3年前に来たフレイルも16年前に引き離されて以来会っていないと言う。
そのフレイルは簡単に死ぬほど弱くはないから自分同様逃げ出しているだろうと笑っていた。
そのため、前を進むのならどちらかの1人くらいは会うことができるだろう。
フレイルに特徴はないが、2人の種族は特徴的だ。
フレイルとして探すよりも2人の種族である『エルフ族』を探した方が早いし分かりやすいだろう。
そう言えば、アスカ達は『エルフ族』を知らないのか首をかしげた。
だが、『エルフ族』は巨人族や魚人族、小人族やミンク族よりも希少な種族なためアスカ達が知らないのも無理はない。
そう思い説明すると、やはりロビンは驚いた声を零した。
「エルフ族って…あのエルフ族!?」
「おっ!流石やねや!知っちょったか!」
「ええ…フレイルより多くの文献が残っていたから…でも、滅んだと言われてきたからてっきり失われた種族だとばかり」
ロビンの反応に2人は嬉しそうに笑った。
重要な赤いロードポーネグリフが2つも見つけ、海賊王への道に関りがあるフレイルという存在。
そして、滅んだと言われていたエルフ族の名。
ロビンは驚きすぎてもう驚く気すら起きない。
「ロビン…そのエルフ族ってどんな種族なんだ?」
ロビンが驚くほどなのだから、自分達みたいな一般人の耳には届かないほど希少な種族なのだろう。
聞き慣れない言葉が次々出て一々説明を求めるのは申し訳ないが、知らないものは知らないのだ。
ウソップがそう問えば、ロビンは『そうね…』とどう説明したら分かりやすいのか頭で整理する。
「私も本でしか知らないから詳しい説明はできないけど…エルフ族は"森の番人"とも言われていた種族なの」
フレイル同様、この知識は全て本からのものだ。
フレイルほど情報が乏しいわけではにないが、数百年前から彼らの目撃情報は途絶えたため、人間は彼らが滅んだと思っている。
彼らは人間から"森の番人"と呼ばれていた。
その名の通り森の奥に住んで自然と共に生きた種族だからだ。
「自然と共存して暮らす種族だから森以外の外界に対する興味が薄いため種族的に希少と書いてあったわ…とても体重が軽く、身軽で弓を得意としている種族…特徴は長い耳に男女共に美しい容姿を持つともされているの…」
エルフ族と言えば、その美しい容姿と弓の名手や森の生活を好み、他種族に対して排他的。
他の種族に残されている文献に比べて少なく、フレイルの文献に対して多い。
それでも絶滅したと言われて数百年も経っており、ロビンの生きている現在にはエルフという言葉も文字も見なくなった。
だからエルフ族はすでに滅んだとばかり思っていた。
「その2人と会うかもしれないし…名前を聞いてもいいかしら…」
ルフィは会いたくないと思うかもしれないが、ロビンは会いたいという気持ちが強くなる。
フレイルにエルフ。
子供の頃に読んだ本の中に出てきた種族達が生きている。
そう思うだけで心が躍った。
一応、会う可能性も低くないため2人の名前を置いておく。
「アムラスとララノアだ」
「アムラスは茶色の髪に左目に泣きホクロ、ララノアは桃色の髪に右目に泣きホクロしちょり、2人とも緑の瞳をしちゅー双子や」
『2人に会ったらよろしく言っておいてくれ』と言われ、会えるかは分からないがルフィ達はイヌアラシとネコマムシの言葉に頷いた。
しかし、ふとネコマムシは思い出したのか、ルフィ達に大事なことを伝える。
「もしもララノアに会うて誘うがなら、酒とタバコを土産に持って行くとえい」
「酒とタバコ?」
「あいつはアル中とヤニ中毒とギャンブル中毒ほんじゃあきにな…ギャンブルは置いちょくとして酒かタバコ最低どちらか持って行ったら大抵は機嫌を損ねんろう」
「アル中とヤニ中毒…ギャンブル…」
ロビンにあるエルフ族というイメージは輝かしいものだった。
そのせいか、イヌアラシとネコマムシの言葉でガラガラと崩れてしまう。
思わずガクリと崩れ落ちるロビンに、イヌアラシ達は慌ててフォローにならないフォローをした。
「いや!顔はいいぞ!顔はな!」
「そうや!エルフ族だけあって顔だけはえいき安心しぃや!それに兄はエルフ像そのままやき安心しぃや!!」
「そうだぞ!兄はちゃんとエルフ族だから安心するといい!」
「それフォローになってないけど大丈夫か?」
兄がちゃんとエルフ族だというフォローしているのか分からないフォローを貰っても、その妹がアル中とヤニ中で更にはギャンブル依存症だという事実は変わらない。
『エルフ族は…容姿端麗で…森の妖精とも言われていて…完全菜食主義の食事をしていて…』と泣きながらボソボソというロビンにナミ達は心底同情した。
『いやあいつら肉も酒も魚も食べてたぞ』とネコマムシとイヌアラシは思ったが、それを言えばロビンに止めを刺すので口を閉ざした。
そうせざるを得ない理由はあったが、それでもあの2人をエルフの基準にするのは駄目だ。
特に妹はエルフの中では駄目なお手本である。
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