アスカ達はカカオ島ショコラタウンに寄っていた。
寄った理由は食料。
ペコムズ曰くホールケーキアイランドまではあと一日らしく、ルフィのせいで食料が全て空になったためショコラタウンに立ち寄った。
「きゃ〜〜っ!アスカかわい〜〜!!」
「素敵です!女神様〜〜!」
「ん、ありがと」
変装すると決まった瞬間、アスカはナミに女部屋へと連れ込まれ、着せ替え人形となった。
とはいえ、時間に余裕があるわけではないのでパパっと決める。
勿論、お揃いである。
着せ替え人形にされてもアスカはご機嫌で、アスカが嫌がらないのでナミもご機嫌で、女神様が可愛らしくてキャロットもご機嫌である。
珍しくアスカがご機嫌な理由。
それは…
「ね、ここに飾っていい?」
アスカは手に持っていたソレを壁にそえてナミに問う。
基本的に無欲なアスカの私物はアスカの部屋でもある女部屋にはほとんどない。
服装だってナミとロビンが一緒に買った物ばかりで、化粧もしないし髪飾りなんてものもない。
ナミとロビンやサンジが与えてやっとアスカの私物が増えている状態だった。
そんなアスカが初めて自分の物を部屋に飾りたいと言い出して過保護BIG3の一角であるナミが許さないわけがない。
因みに、BIG3は、ナミ、サンジ、ジンベエである。
ナミの許可を得てアスカは嬉々として壁にソレを張り付ける。
ソレ、とは――レイジュのサインであった。
お互い見なかったことにしてくれたレイジュと別れる前にアスカはウソップの私物からサイン用の色紙(自分のサイン用)を拝借し(勝手に)、レイジュにサインしてもらった。
普段の冷静なアスカには考えられないくらいの機嫌の良さに、アスカはよほどレイジュことポイズンピンクのファンなのだろう。
アスカはこの時ほど記憶が戻ってよかったと心底思った。
ちなみに、処置とはいえその推しと恋人の1人がキスした場面を見たアスカはルフィに『は??推しにキスされ…は???』圧をかけたが、貰ったサインで機嫌の悪さが治った。
――ショコラタウンには様々な人種がおり、賑わっていた。
ペコムズ曰く、ビッグ・マムの夢なのだそうだ。
ビッグ・マムは世界中の全種族が差別なく暮らせる国を夢見ており、だからショコラタウンにミンク族や様々な種族が暮らしていた。
このショコラタウンを含めて島は34もあり、その島々を統治しているのはビッグ・マムの子供達が行っている。
「いた、あそこだ」
アスカ達が島に足を踏み入れる前に、ルフィとチョッパーが真っ先に向かってしまい逸れてしまう。
だが、ナミとアスカは心配していなかった。
探す前に船からも聞こえる音量で『カフェ食い事件だー!』というルフィ達がいるという証…もとい、叫び声が聞こえたからだ。
ビッグ・マムを裏切った身としては、ルフィ達には問題を起こしてほしくない冷や汗だらけのペコムズを置いてアスカ達は騒動の起こっている方へと足を向けた。
流石、台風の目であるルフィ達である。
迷わずアスカ達はルフィ達を見つけることが出来た。
「これは犯罪だぞ!"器物摂食罪"だ!!」
ルフィとチョッパー達のところへと到着すると、警察らしき男性に問い詰められている光景が見えた。
ショコラタウンは全てチョコで出来ている町であり、この町ではチョコは好きなだけ食べていいが、屋根の瓦チョコは法に触れるらしい。
雨雪を凌げなくなるからという理由だが、他にもアスカ達のようなよそ者には分からない独自の法があり色々と面倒臭そうだ。
その法に触れることをルフィ達は犯してしまったのだろう。
「うわ…建物ほぼ崩壊してるじゃん…」
とはいえ、ルフィがいて平和で終われた試しはなく
想定内である。
暴食王なルフィはチョッパーと共にショコラタウンの家を食べてしまったらしい。
殆ど家の形がなくなっており、法に触れると言っていた屋根もちゃんと食べてしまっている。
ルールを守らないルフィが悪いが、逮捕されるのは正直困る。
「ちょっと!こんなに残して!約束が違うじゃない!」
さて、どう間に入るか…と乱闘しようとするペドロを止めながらナミ達は打破する策を考えていた。
だが、その耳に女性の声が届く。
その声の方へ視線を向ければ飛ぶ絨毯に乗った一人の少女がいた。
肩にはゼリー状の生き物が乗っており、警官の言葉からしてルフィ達の食べた建物のオーナーであることが分かった。
オーナーはぷくっと頬を膨らませながらルフィ達に歩み寄り、なぜか責めるのではなく崩壊している建物の一部を千切ってルフィとチョッパーの口に放り込んだ。
「ここのジャムとビスケットとチョコのハーモニーが自信作なのに!さ、食べて」
アスカ達はその光景を見て、あのオーナーに助けられたとすぐに分かった。
警察もその光景を見て『賞味期限による解体業者』だと勘違いしてくれた。
警察の言葉を聞き、アスカはますますこの町はお菓子で作られているんだなとしみじみに思う。
―――警察に逮捕される危機を乗り越えたアスカ達はオーナーに誘われてオーナーの家に招待された。
「プリンって言うのか!ありがとう!助かったよ!」
「いえ!そんなそんな!お礼を言うのは私の方よ!」
「何で?」
「い、言ってくれたじゃない!『うますぎた』って!」
オーナーの少女は、プリンと名乗った。
助けてくれたことにお礼を告げれば、逆にプリンにお礼を言われてしまった。
理由は、店を美味しいと言ってくれたからだった。
あのカフェはプリンが作って建てたらしく、料理人として他人の感想を聞きたがっていた。
特に頭を悩ませながら一生懸命作った建物だったから余計に。
そんないい子なプリンに、88歳のブルックは感激に涙があふれる。
「本当はゆっくりお礼を言いたいんだけど…私達、用があってすぐに出なきゃいけないの…」
「え、そうなの?残念…じゃあ、紅茶を一杯だけいかが?お口の中が甘いでしょ?」
ナミも明るくていい子なプリンに感謝しているし、もっとお礼をしたかったがナミ達には時間がない。
後ろ髪を引かれる思いだったが、こればかりは仕方ない。
とはいえ、流石にプリンの気遣いを無下には出来ず紅茶一杯頂く時間はあったので頷いた。
「お名前まだ聞いてなかったわね」
「おれルフィだ!海賊王にな―――」
「ちょっと!」
「え!?」
紅茶を淹れるために席を立ち後ろにあるキッチンでお湯を沸かす。
紅茶の茶葉が入った缶の蓋を開けながらプリンはルフィ達にまだ名前を聞いていなかったと思い出して名前を聞いた。
ルフィ達の悪名は広まっており、真っ直ぐな天然が偽名を名乗るなど頭にはなくいつも通り海賊王になると名乗ってしまった。
途中でナミが止めたが、弾かれたようにこちらに振り返り驚く表情を浮かべるプリンを見るに誤魔化すことができないことを知る。
ナミ達は再び訪れた危機に、どう対処すべきかと冷や汗をかきながら考えた。
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