夜には固まってしまう水飴の海と、アリの軍隊に襲われながらもアスカ達は何とか本陣であるホールケーキアイランドに到着することが出来た。
以前にこの国に来たことがあるペドロとブルックがビッグ・マムが所有しているポーネグリフを写すため、サンジ奪還組と別れて行動することになった。
チャンネル3の"シャークサブマージ"と名付けられた潜水艦に乗って一足先に潜入する。
彼らを見送った後、アスカ達も早速島に上陸した。
「ナミ!アスカ!地面食ってみろ!かたい生クリームだ!うまっ!」
「ホントだ!メレンゲね…この島もお菓子だらけなのかしら」
「二人ともよく食べれるね…そこ、誰が踏んだか分からないのに…」
上陸すると早速チョッパーが地面が食べれることに気づいた。
チョッパーに言われてナミも一口食べてみると、地面は生クリームではなくメレンゲだった。
チョッパーは気にしないのかパクパク食べているが、ナミはポツリと呟かれたアスカの言葉にハッとさせて口を塞ぐ。
確かに、と思ったのだろう。
今も自分達は土足でメレンゲの地面を歩いている。
ということは人気が無い場所だとしても自分達しか歩いているわけではないのだから誰が踏んだか分からない部分を口にしたという事だ。
「プリ〜〜ン!約束通り来たぞ〜〜!」
「ちょっと遅れたけどね…ホントに2人が見えたの?」
ショコラタウンで出会ったカフェのオーナーであるプリンは、シャーロット家の三十五女で、ビッグ・マムの娘だった。
そして、どんな偶然か、サンジの結婚相手でもある。
しかし、プリンはサンジを奪いに来たルフィ達を母達に言うでもなく、ルフィ達に手を貸してくれた。
こうして敵に見つからず本拠地にこれたのもプリンが書いてくれた兄弟達しか知らないルートを秘密裏に教えてくれたからだ。
サンジと会ったプリンは、彼に気があるように見えた。
頬を染める彼女は正しく恋人に熱を上げている女性に見えた。
しかし、だからこそプリンはルフィに手を貸してくれると言った。
無理に引き留めることが出来ないと言ってくれたプリンはこの南西の海岸で待ち合わせる約束をしていた。
ルフィは船からプリンとサンジの姿を見たと言っていたが、周りを見渡しても2人の姿はない。
ナミの疑問にルフィは2人の姿が見えた方を指さしながら見たと断言した。
「南西の海岸はここで間違いないし…あんたはウソつかないけど…居て居なくなる理由が分からないのよね」
紙を改めて見るけれど、大雑把だが間違いようのない地図だ。
航海士なら間違えない地図なため、もし間違っているとしたらプリンの書き間違いしかない。
「おい!サンジがいたぞ!!」
「え!?」
ナミが改めて地図を見て、その横でアスカも紙を覗き込む。
するとルフィがまた声を上げた。
サンジを見つけたらしく、そちらへ視線を向ければ、アスカ達の目にもサンジの姿が見えた。
ルフィがサンジの下へ向かえば、それにキャロットとチョパーが続くが、アスカとナミはサンジの姿を見ていないため何が何だか分からず、2人はお互いの顔を見合わせた。
「アスカ、サンジくん見た?」
「見てない…サンジがいたらプリンもいるんだろうし…何も言わないのおかしくない?」
「そうよね…とりあえず逸れたら大変だし3人を追いかけるわよ!」
サンジの姿を見ていないのは、自分とアスカだけ。
無理矢理結婚を強いられているサンジが自分達を見ても何の反応もせず、更には協力してくれているはずのプリンが自分達から姿を消す理由が分からない。
しかし、話し合っても分かるはずがなく、アスカとナミは森の中へと入ってしまったルフィ達を追いかけるため森に入って行く。
しかし――
「あ、あれ!?」
「どこ行った!?」
サンジの姿はすぐに見失ってしまった。
しかも森の一口のすぐそばでサンジを見失ってしまったらしい。
「三人が見たんなら間違いないけど…何でいなくなるの?何かバツが悪いのかな…」
アスカとナミは直接サンジを見てはいないため、半分疑ってはいるが、流石にルフィだけではなくチョッパーとキャロットも見ているのなら見間違いでもなさそうである。
だが、疑問はなぜすぐに見失ってしまうのか。
サンジの姿を見るたびにルフィが声を上げて呼ぶので、こちらに気づいていないというわけではないようだし、ナミは何か理由があるのではと思う。
「手分けして探すぞ!おれこっち行く!ケーキのある方!」
「おれまっすぐ!キャラメルの匂いがする方!」
「じゃあ私はこっちね!見てジェリービーンズ!」
「ちょっと待てーー!二次災害の予感っ!!」
「…絶対人選間違えたね、これ」
これまでも水あめの海やわたあめの雪などこの国独特の天候が続き、甘い匂いにアスカの鼻も慣れてしまった。
しかしこの森の中はそれよりも更に甘い香りが充満していた。
食に関して興味が薄いアスカは更に甘くなる匂いに思わず顔を顰めた。
そして、甘いものを求めて探索しようとする三人を見ながらボソリと人選ミスだとぼやく。
「もーっ!典型的な迷子の思考なのよあんた達!探すのは反対しないから絶対に私の傍を離れないで!いいわね!!」
甘い香りによだれを垂らすルフィとチョッパーに、ナミは根負けした。
ただ、ここはあの四皇の一人であるビッグ・マムの本拠地であり、敵地である。
そんな場所で三人も逸れてはサンジを取り戻したくてもできなくなる。
「とりあえず森を探そう…ルフィ達もサンジを森の中で見たって言ってたし…どうしていなくなるのかは本人に聞いたらいいんじゃない?」
「そうね…そうしましょう」
ルフィは大食いだし、チョッパーは甘い物に目がないため、こうなることは分かっていたし仕方ないと思っていた。
しかし、まさかキャロットもあちら側だとは思っていなかったナミは『私の負担やばすぎ…』と肩を落とす。
そんなナミに同情をしながら肩をポンポンと励ましつつ前に進むよう提案する。
とりあえず森をある程度探して、サンジが見つからなかったら引き返すことにしてナミ達は森へ入るため橋を渡ろうとした。
しかし―――川から巨大な鰐が現れあわや橋ごと食べられるところだった。
「なんだ…人間か…」
橋を食べた鰐はモグモグとさせながらルフィ達を見下ろし―――そう言った。
巨体な鰐はそのままルフィ達に見向きもせず川に入ったまま去っていく。
それをルフィ達は唖然とした表情で見送った。
「な、なんだったの…あのワニ…」
「不思議ワニだな!」
「……なんか…今日はそれで片づけられる気がする…」
ワニは巨体なだけではなく、人語もしゃべり、帽子と服を着ていた。
ワニと言えば肉食だというのが常識だが、人間である肉には見向きもしなかった。
こちらにはチョッパーというトナカイなのに人間のような存在や、そもそも人間種ではないミンク族と会ったり、変態のフランキーや、骨だけのブルックという存在を知っている。
そのため、今更ワニが喋ることを信じられないわけではないが、それでも驚いてしまう。
襲ってこないのならわざわざ吹っ掛ける理由もなく、アスカ達はワニを見送った後サンジを探そうと森に改めて入ろうとした。
森へと振り向いた時――――ルフィが立っていた。
いや、ルフィは立っているのは当然なのだが…ルフィが二人に増えたのだ。
向かい合わせに立つルフィにアスカ達は困惑する。
「あれ?」
「え?」
「ええ〜〜!?」
「ルフィがもう一人!?」
何の音も気配もなかった。
なのに、そこにあたかも最初からいたようにルフィが立っていた。
「「誰だお前!」」
しかも顔や体型や身長だけではなく、声や口調さえも同じだった。
アスカも流石にそれには驚きが隠せず、キャロット達と同じく2人のルフィを見比べていた。
「何!?どうなってんの!?どっちがルフィ!?全く同じ動きで同じこと喋ってる!!」
「どういうこと?ルフィが増えたってこと?」
「分からないわよ!…でも…確認する方法は1つよ!―――アスカ!あんたの幼馴染兼彼氏でしょ!当然どっちが本物なのか分かるわよね!!」
「えっ」
「流石女神様!本物のルフィを見るだけで分かるなんてすごいです!!」
「えっ」
『いや無理だから!!』と叫ぶことさえできないナミの無茶を振られてしまう。
『えっと…えっと…』と突然降られたアスカは断るよりもルフィを見分けようと頑張ろうとした。
それを見て流石にチョッパーは可哀想だと思ったのか、気づいた事をナミたちに伝える。
「待って!鏡に映った"鏡像"みたいにキズもアクセサリーも全部反転してるよ!!」
アスカはナミの無茶振りと、キャロットからのプレッシャーに気づかなかったが、チョッパーの言葉でやっと気づいた。
それはナミ達も同じで、アスカがどちらが本物か選ぶのを待っていたがチョッパーの言葉で『あら本当』と気づく。
矛先がそれたことにアスカは胸を撫でおろし、チョッパーに『ありがとう』とお礼を言った。
「あ!いた!サンジがいたよ!!」
ルフィが増えたと思えば、今度はサンジの登場である。
しかもなぜかサンジは気の上に寝転んでこちらを見下ろしていた。
その姿にアスカは違和感を感じる。
「おーい!サン―――」
キャロットがサンジを見つけると、その声にルフィも気づきサンジに駆け寄ろうとした。
しかし当然鏡合わせのルフィとぶつかってしまい倒れてしまう。
「どけお前〜〜!!」
顔を打ち、ルフィとルフィ(仮)は同時に怒鳴り声を上げる。
そうこうしている内に、サンジに逃げられてしまった。
「くそォ!お前ら先に行け!サンジを負え!」
ルフィの言葉に従い、4人は鏡合わせのルフィを追い越して森の中へ入って行った。
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