任務は簡単なモノだった。
しかし任務は簡単だったが移動が案外面倒で約1ヵ月かかってしまった。
それはサカズキも承諾済みのため咎めはなかった。
サカズキはミコトからの報告を聞き終えると『それと』と言ってミコトを引き留めた。
珍しいと思いながらも笑みをそのままに待てば分厚いファイルをテーブルに置いた。
「これに目を通しておけ」
「これは?」
「見合い相手のプロフィールじゃ」
「あなたの?」
「なんでじゃ」
傍に置かれたテーブルには辞書以上に分厚いファイルがあった。
それを差し出されたミコトは反射的に受け取り、首を傾げながらサカズキを見る。
サカズキの言葉にミコトはボケで返すも素で返されてしまった。
その男でもずっしりと重く感じるファイルを見下ろすミコトを見つめながら、サカズキは『一週間までに1人選んでおけ』と告げ、もう用はないと言わんばかりに仕事に取り掛かる。
ミコトは頭の数ページを目を配らせた後パタンとファイルを閉じ『一応見ておきますわ』と答え退室する。
「………」
パタリと閉められた襖を見つめ、サカズキは片眉を上げた。
思うのはミコトの反応。
あまりにも呆気なさ過ぎたのだ。
サカズキはミコトに嫌味の1つや2つ、3つに10貰う覚悟で渡した為呆気なさ過ぎて何か引っかかっていた。
…が、ミコトもバカではなかったかと考え付き再び筆を走らせた。
◇◇◇◇◇◇◇
――ついに来たか、とミコトは思う。
サカズキの部屋から退室し、ミコトは自分の部屋へ向かいながら分厚いファイルを見ていた。
そのファイルの中身は一枚一枚丁寧にプロフィールが書かれており、名前、生年月日に年齢、職柄、経歴、趣味に得意分野…細かく記入されていた。
ファイルの中には世界政府の子息か、若い天竜人しかおらず、一般男性は誰一人おらず、ましてや海兵など一人もいない。
ミコトは分かっていた。
海軍に戻れば必ず世界政府によってなんらかの方法で縛られると…分かっていた。
分かっていたが、ミコトはシャンクスを捨て海軍に戻る事を選択したのだ。
だが、流石に天竜人を見合い相手に選ばされるとは思っていなかった。
適当に歩きながらファイルを見ていくと、1人の男に目が留まり、足も止める。
(フィガーランド)
その人物は天竜人であり、天竜人でありながらも天竜人を裁くことができる立場である『神の騎士団』の最高司令官の名を持つ男。
見慣れた顔なのは、"彼"だからではない。
天竜人相手でも適当に扱っても咎められることはないミコトは、よく天竜人関連で呼ばれる事がある。
その際に時々会っては話を交わす仲の男がその男である。
親しいと言えど、相手は天竜人。
友人関係には決してなれず、ましてや相手はミコトを口説いている相手である。
ミコトはドフラミンゴ同様、彼に靡くことはない。
それは天竜人だからではなく、彼が"彼"だからだ。
「…世界政府か天竜人か…これが究極の二択というものですのね」
奴隷から妻を選ぶことのある天竜人だが、妻になったからと言って安泰ではない。
妻とは名ばかりで、多少他の奴隷と扱いがマシなだけで所詮は奴隷は奴隷だ。
飽きられれば捨てられいつ他の奴隷と同等の扱いに堕ちるか分からないし、機嫌を損ねればそれこそ殺される。
ただ、ミコトの場合は異なるだろう。
この見合いの件は十中八九五老星が関わっていると言っていいだろう。
ならば、他の天竜人もミコトを奴隷同様には扱わないはず。
だが、ミコトは天竜人に嫁ぐつもりはない。
どうして可愛い妹を苦しみ続ける存在の一員になりたいと思うのだろうか。
しかし、だからと言って世界政府の人間と添え遂げる気にもならない。
まあどちらの男と添い遂げたとしても、実力者でないかぎりはミコトのテンプテーションで操作すればある程度は回避できるだろう。
――ミコトは意外な人物を選んだ。
7 / 10
← | top | back | →
しおりを挟む