ナミの指示のもと、ルフィ達はローグタウンに着いた。
「でっけー町だー」
「ここから海賊時代は始まったのか」
ローグタウンが見えたという事はグランドラインが近いという事だとナミに教えてもらい、そして、この町がゴールド・ロジャーが生まれ死んだ町とも教えてもらい、今まで立ち寄った島にない賑わいを見せるのに納得する。
海賊時代の始まりの町でもある町を見渡し、それぞれ感想を零した。
「よし!おれは死刑台を見てくる!!」
「ここはいい食材が手に入りそうだ」
「おれは装備集めに行くか」
「おれも買いてェモンがある」
「貸すわよ利子3倍ね」
「私はどうしようかなァ…」
「アスカなら"あげる"わ」
「おい!!!」
「ありがとう、ナミ」
アスカとナミはあの後更に仲が良くなり、ナミは隠すことなくアスカ贔屓さを見せる。
相変わらずなナミにゾロは突っ込みを入れ、その場は解散となった。
アスカはルフィ達とは違い、目的はなかった。
ナミに服などを一緒に周るかと聞かれたが気分でもなかったため断り、ルフィにも一緒に処刑台に行くかとも問われたがそれもまた気分ではないと断った。
結局、アスカは何の目的もなくブラブラしているだけとなる。
一応ナミに貰ったお金を仕舞い、アスカは町をただ見て回って時間を潰していた。
「…ん?」
アスカはなんとなく…そう、なんとなく立ち止まり裏路地に続く道を見た。
その意味はなく、なんとなく立ち止まってなんとなく裏路地に続く道を見ただけである。
ただそれだけなのに、なんとなく気になって、なんとなくその路地裏に入り、他の怪しげな店に目もくれず…なんとなくある店に入った。
そこはリサイクルショップで、店に入ったアスカはまっすぐある物に向かって歩いた。
「蛇のブレスレット?」
それは蛇をデザインしているらしいブレスレットだった。
なんとなくそれを手に取り、なんとなく手にはめるとサイズがピッタリと合い、アスカはなんとなく気に入った。
「それが気に入ったのかい?」
「え!?あの…えっと……あー…はい…まあ…一応、は…」
その店は路地裏というのもあり人はアスカ以外いない。
やる気のない店主はアスカを目で追い、ブレスレットの方へまっすぐに向かったのを見て小さい溜息をつきながら座っていた腰を上げてアスカに近づき声をかけた。
アスカからしたら急に声を掛けられたため驚いたが、店主の言葉に曖昧だが頷いてみせた。
正直、アスカもどうしてこんな路地裏に来てこの店に入ったかあまり覚えていないしアスカ自身理解できていないのだが、どうしてもこのブレスレットが気になったというだけで気に入ったというわけではない。
しかし訂正しようとするも実際気に入ったかは分からないが気になってしかたないので頷いて気に入ったことにした。
アスカの頷きを見て店主はやる気がない態度をそのままにブレスレットを指さした。
「そのブレスレット、タダであげるよ」
「た、タダ!!?何で!?」
店主の口から出た言葉にアスカは思わず目を見張った。
タダ、という事は勿論無料なわけで、お金を一銭も出さなくてもいいということである。
それは誰でもわかる事だが、アスカは目を丸くしたまま店主からブレスレットを見下ろした。
「こ、こんな立派なのがタダって…」
リサイクルショップなのだから中古なのは当たり前だが、傷一つなく、輝きも曇ってもいないそのブレスレットは新品同様だった。
唖然と呟くアスカに店主は疲れたように溜息をつく。
「そのブレスレットは何故か買われても戻って来るんだよ。だからどうせまた戻るだろうからあげるよ」
「え、でも…いいんですか?」
「かまわないさ、戻ってこなくても私的には厄介払いが出来て丁度いいしね。」
店主曰く、このブレスレットは何故か買い手はよく見つかるくせにいつのまにかこの店に戻ってきているという。
当時は気持ち悪くてタダ同然に安くして買い手を無理矢理見つけたり捨てたりしていたが、それでも戻ってくるためもはや気持ち悪さというよりは疲れて来ていた。
だからどうせ戻ってくるならタダで譲って、運がよければ厄介払いが出来ると思っていた。
「じゃぁ…貰います……あの、ありがとう、ございます…」
タダほど怖い物はない、というがアスカは呪いの品物としか言いようがないブレスレットをこの時受け取らないという選択肢がなかった。
アスカがおずおずとお礼を呟くと店の人はレジに戻りながら手を振る。
アスカは貰ったばかりのブレスレットを持ちながら町を当てもなく歩いていた。
結局この訳の分からない呪いのブレスレットを貰ってしまったが、アスカは後悔の気持ちは一切ない。
(後でナミにお金返さなきゃ…)
手首にブレスレットを付け終えた後、アスカはポケットからサイフを取り出す。
このサイフはナミからもらったもので実はお揃いである。
中身はお金なのはお金なのだが…貰った時覗いたら結構入っていて驚いた。
ナミは『あげる』と言っていたが、人から貰ったお金を適当に使うのも申し訳なく思いアスカは後でお金をナミに返そうと考えた。
「あら、アスカ!」
「あ、ナミ…」
薄暗く、人気のない道を抜けて大通りに出ると、先ほどの裏路地とは大違いな人の多さに思わずポツンと立ち尽くした。
しかし通り過ぎる人はアスカなど気にもしていない。
と、いうよりいは気づいていない方が正しいだろう。
アスカはなんだか急に寂しくなった。
こんなに人が多いというのに誰もアスカを気にもしていないし、気づいていない。
まるでアスカという存在が元からいないような気がしてならなかった。
アスカは人ごみに酔ったように人の波に沿ってどこかの公園か休憩できるところで集合時間まで休もうと思っていると聞き慣れた声がアスカの耳に届く。
その声の方へ目をやればナミがいた。
ナミは大きな買い物袋を何個も持っており、アスカの姿を見て嬉しそうに駆け寄ってきていた。
アスカは顔には出さないが知り合いと再会できホッと安堵の息をつく。
「どうしたの、こんなところで突っ立って」
「これからどうしようかなって思って…あ、そうだ…お金…使わなかったから返すね」
「使わなかったって…まだ時間まで大分あるわよ?もう見て周ったの?」
集合時間までまだあり、アスカはナミの言葉に曖昧に笑いながら手首にあるブレスレットを見せる。
「これ、貰った」
「貰った?」
首を傾げるナミにアスカは説明をする。
アスカはルフィと共に育ったゆえか、ルフィと同じく隠し事はあまりしない。
そのため戻ってくるというのも素直に貰った経緯を話すとナミは『ええっ!?』と驚いた声を零す。
「戻ってくるって…それまんま呪いのブレスレットじゃない!!」
「みたい。」
「いや、みたいって……ちょっとそれ危ないんじゃない?」
「大丈夫大丈夫。話しによればいつの間にか消えててあの店に戻ってるっていうし…呪いって言っても怪我とか死ぬこともないみたいだからさ…大丈夫だって」
「あんたねェ…」
アスカは呑気なもので、戻してこいというナミの言葉に焦りもなく大丈夫を繰り返していた。
ナミは怪我や死ぬことはないと丸々信じてはいないが、アスカがあまりにも平然としているため、そして様子から結構気に入っているようにも見えるため、アスカに甘いナミは無理矢理奪い取って店に返す事も出来ず、ガクリと項垂れるしかなかった。
「まあ、いいわ…あんたが気に入ったならそれで…どうせあんたに何かあったらルフィが何とかするでしょうし…」
最近になってナミはようやくルフィのアスカへの過保護さに気づいた。
喧嘩や言い合いの時もルフィは決してアスカに手を出すことはないのもやっと気づいた。
アスカに何かあればルフィが一番に慌て、一番に駆けつけるのも知っているし、何よりもアスカの呑気さに負けたのだろう。
呆れたような諦めたようなため息をつきながらナミは気持ちを切り替え、サイフを手にするアスカの手首を掴み歩き出す。
「ナミ?」
「お金、余ってるんでしょ?だったらそれで買い物しましょう。」
「えっ…買い物って…何を?」
「服よ。あんたその服しか持ってないんでしょ?どうせウソップとサンジ君以外のあの2人もあの服以外持ってないでしょうし……あいつらのも買いに行くわよ」
「えー…」
「私、貧乏海賊団も嫌だけど臭い海賊団も嫌なの。」
「…………」
手を引かれ首を傾げていたアスカにナミは使わなかったお金でアスカの服を買うと言い出した。
男っぽいとは言わずとも女の子らしくもないアスカは乗り気ではなく、不満の声を零すが、続けられたナミの言葉に黙り込むしかなかった。
確かに、サンジやウソップは自分の村やレストランから身支度が出来ており色々自分の必要な物を持ってきているようだが、ゾロは出会った時から荷物は刀以外なく、あの服も一張羅である。
勿論、ルフィとアスカも出発は小船というよりはボートで荷物といえばタルのみ。
どちらも衣服は持ってきていなかったし、持ってきたとしても最初の渦潮で全て海の底だろう。
そのため男2人は知らないがアスカはメリー号を手に入れるまで洗濯もできない状態で、メリー号を手に入れれば一張羅しかない服を洗いはしたが着まわす服がないため今着ている服しか着ていないのが現状である。
一ヶ月は経っていないため服がボロボロになっているということはないが、それも時間の問題だろう。
それにナミに言われてアスカも服が一張羅では色々危ないと気づき、今度は抵抗なくナミに手を引かれて店に入っていった…………子供用の服屋に。
「いや、ナミ…それは、ちょっと…無理があるんじゃ…」
子供服を売っている店の前でアスカは思わず突っ込みを入れた。
62 / 293
← | top | back | →
しおりを挟む