「スモーカー大佐?」
ドサリと、ナミは持っていた衣服全部をレジカウンターへと置いた。
その後ろにはアスカが立っており、その腕にも大量の衣服が乗っていた。
それらは全てナミとアスカの衣服で、この後2人はゾロとルフィの服も買いにいく予定である。
アスカは腕にある全ての服をカウンターに追加し、意外と服は重いのだと今日初めて知った。
アスカの服は大抵マキノやミコトが買って与えている物で、アスカが服を買いに行くことはなく、アスカ自体衣服に興味がなく動きやすく能力重視の服ならば何でもいいというタイプの人間である。
服を詰めて貰っているとナミは店の店主であるおばちゃんにある人物の話を聞く。
その人物はこのローグタウンに基地を置く海兵だった。
スモーカーと呼ばれる男は大佐の地位を持ち、ここの基地の責任者でもあるらしい。
おばちゃんは服を大きな袋に詰めながらナミとアスカに説明してあげた。
「海軍本部きっての猛者でね!以前この町はグランドラインに乗り込む海賊達の溜まり場だったのよところが大佐が仕切るようになってからこの町に入った海賊は一人残らず監獄行き!並の強さじゃないわ。ありゃ化け物ね!悪魔の実の能力者って話だし」
「悪魔の実の…?」
そう言っておばちゃんは手錠を掛けられたように両手を合わせる。
それを見ながら他人事ではないのにアスカは他人事のようにほぼ品薄になった店内を見渡し、終わるまで待つ。
見て回っているとやっと買った商品の袋詰めが終わりナミに声を掛けられアスカとナミは大量の買い物袋を持って店を出た。
「さ!次は男共の服よ!」
「え…まだ買うの…?」
「まだよ〜!大丈夫!男共の服なんて適当に買えばいいんだから!!どうせ頓着はないだろうし!」
大きな袋を一つずつ持ちアスカはやっとナミの買い物から解放されると思った。
男は女の買い物に付き合うのは嫌いだが、アスカもまた苦手である。
パッと決めてパッと買って帰るタイプのアスカはナミの言葉にガクリと肩を落とす。
自分やアスカの買い物と違い男の服など適当に買えばいいとナミは思っていた。
特にゾロとルフィはアスカ以上に頓着がないのだから適当に安いもんを買えばいいとも思っている。
それでルフィもゾロもあまり変なものでなければ文句を言わないのだから当たっていると言えば当たっているであろう。
適当な店に適当な安売りしている服を買い漁り外にでる。
時間は大分過ぎたが、まだ集合時間まで時間があった。
「ナミ…もう終わった?」
「そうねェ…まだ買い足りないし小物とか見て回りたいから一度船に戻って出直して来ましょう!」
「えー…マジで…?」
荷物はアスカが持っていた。
大荷物でそれなりに重いため、アスカの能力で長身ウサギに持ってもらっており、店内にいるときは入口に長身ウサギが2羽立っていた。
通り過ぎる人たちは買い物の量もさることながら、普通のウサギではない長身ウサギに注目していた。
まだ買い足りないらしいナミは一度船に戻ってまた町で買い物をしようと言い出し、アスカはげんなりとさせた。
そんなアスカをよそにナミはふと空を見上げる。
「アスカ、早く戻りましょう…一雨来るわよ、これ…」
「雨ェ?」
ナミの言葉にアスカも空を見上げる。
しかしアスカから見る空は晴れ晴れとしており、雨雲なんて一つもないように見えた。
だが航海士のナミは天気予報にも通じており一概に信じきれないとも言い切れない。
特にナミの腕前は仲間であるアスカ達が一番良く知っているのだ。
アスカはナミの言う通り小物は諦め船に帰り、ルフィ達も探して嵐が来る前にグランドラインに入ろうとした。
すると…
「「「あ」」」
アスカとナミはバラバラになっていたゾロ達と鉢合わせた。
しかし肝心のルフィがいない。
ゾロは周りを見渡しナミ達に聞いた。
「―――で?"あいつ"は?」
「死刑台を見るって言ってたわよね…」
「死刑台のある広場って"ここ"じゃねェのか?」
ルフィは最初から広場にある死刑台を目指しており、もしここが広場ならばここにルフィがいるはずである。
しかしルフィの姿はなく、ゾロとナミにとったら聞きたくもない懐かしい声が広場全体に響いた。
「罪人!海賊モンキー・D・ルフィは"つけ上がっちまっておれ様を怒らせちまった罪"により!!『ハデ死刑〜〜〜っ』!!!ハデに騒げ〜〜!!」
その声は道化のバギーだった。
アスカはあの時出不精で会ったことはないが一戦交えたらしい男の声から聞き慣れた名前を聞きナミ達はハッとさせ振り返る。
そこには死刑台の上に何故かルフィが捕まり今にも処刑されそうになっていた。
「おいおいおい!!!なんであいつ捕まってんだ!?っていうかなんで処刑されそうになってんだ!?」
「おれが知るかよ…!!とにかく行くぞ!!」
「ああ!ナミさんとアスカちゃんは早く船へ!!ルフィはおれ達が何とかするから先に戻っててくれ!!」
「えっ!?ちょっと…!私も…っ」
船長の危機にゾロとサンジはルフィのもとへと行こうと駆け出し、サンジは途中一緒になったウソップに全て荷物を預けていった。
アスカも当然幼馴染のピンチに駆けつけようとしたが、一歩足を踏み出したアスカの後ろの服を誰かが引っ張りアスカは立ち止まってしまう。
後ろへ振り向けばそこにはアスカの服をしっかりと握っているナミとウソップがいた。
「アスカ!いくわよ!!っていうか行きましょう!私とウソップじゃ速攻やられるから!!一緒に来て!!」
「そうだ!いくぞ!!おれとナミじゃ抵抗してもきっと多分!一秒も持たねェ!!」
「…………」
アスカはルフィとナミ達を交互に見ていたがしびれを切らした2人が服を握ったままでアスカを引っ張って歩き出してしまう。
2人の顔があまりにも必至すぎてアスカは抵抗できずそのまま引きずられていく。
船に戻れば案の定バギー一味のモージが船を燃やそうとしていた。
しかしナミの読み通りに嵐が近づき大雨が降っていたためマッチは使えず四苦八苦しているところでアスカが苛立ちを勢いにして滅多打ちにし、連れていてるリッチーというライオンをも返り討ちにして一人と一匹をタコ殴りにして強制終了させる。
風も吹きはじめ、一度大きな雷が落ち、突風までもが吹き、三人はルフィ達を心配した。
「ルフィ…ッ!!!」
アスカは目を凝らし三人の…主にルフィの姿を待った。
待っている間がすごく長く感じ、アスカはありえないと分かっていながらもルフィは来ないのではないかと思ってしまう。
しかし突風が過ぎてすぐに三人はメリー号へと戻り、アスカは乗り込んだルフィに駆け寄り抱き付いた。
「アスカ」
「ルフィ…っ」
脳裏にルフィが死刑台に押さえつけられている姿がくっきりと映る。
それがアスカにとって何よりも恐怖を煽り、こうして立っているルフィを見てもまだここにいるのだと信じきれずにいた。
アスカは抱き付くことで実感が湧き、抱き付かれたルフィはアスカが心配した事を察しアスカの小さすぎる体をギュッと抱きしめてやった。
抱きしめてくれるルフィの温もりにアスカは目じりが熱くなりそうだったのだが…
「ちょっとお二人さん!イチャついてる場合じゃないわよ!!―――あの光を見て!」
ナミに声を掛けられ2人は抱き合っていた体を放し、ナミの指さす方へと見る。
しかし体は放してもお互い手だけはギュッと握っていた。
それは島の灯台があり、嵐の薄暗い空でも光がはっきりと見える。
「島の灯台か…」
「"導きの灯"…あの光の先に"グランドライン"の入口がある!―――どうする?」
その灯台は"導きの灯"とも言われ、グランドラインの入り口をさしているという。
どうするかと問われればルフィ達は互いを見合う。
しかし当然約一人を除いた全員の心はすでに決まっていた。
「しかしお前…!何もこんな嵐の中を…!なァ!!」
「よっしゃ!偉大なる海に船を浮かべる進水式でもやろうか!」
「オイ!!」
約一名とは、ご存じの通り…ウソップである。
ウソップは持病の弱気が出てしまい、今でも転覆寸前だというのに更に厳しい海へと乗り込もうとするナミに慌てた。
だが、当然ながらウソップ以外は覚悟は決めており、船内からサンジが進水式用としてタルを取り出し、ウソップの反論もスルーされてしまう。
まずはサンジが足を乗せた。
「おれはオールブルーを見つけるために」
そして、次にルフィが。
「おれは海賊王!!!」
ゾロも続き…
「おれぁ大剣豪に」
ナミもまた足を乗せる。
「私は世界地図を描くため!!」
ウソップもやっと覚悟を決めたのか、ナミに続いて足を乗せる。
「お…お…おれは勇敢なる海の戦士になるためだ!!」
そして最後に…
「海賊王の誕生を見るために」
アスカ。
揺れのせいか少し躓いてしまい、こける前にルフィがアスカと繋いでいた手を解いて腰に回して支えてやる。
こんなに土砂降りなのに服越しでもアスカの体が熱いのに気付き、ルフィはタルからアスカへと目をやる。
だが、そんなルフィに気づかずルフィ以外が一斉に足を上げ、ルフィもアスカに問いそびれ釣られて足を上げ、そして…
「いくぞ!"偉大なる航路"!!!」
タルを割った。
偉大なるグランドラインへ向かう為に…
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