ケーキの中には鏡がベッジの部下達によって仕込まれており、ルフィ達は捕まえていたブリュレの能力でその仕込んでいた鏡の中から現れた。
「これはビッグ・ニュース!!あいつは"最悪の世代"の海賊!!―――"麦わらのルフィ"だ!!」
新聞社社長であるモルガンズは混乱の中、ルフィの登場に心を躍らせていた。
あの、話題が降ってくるような、新聞社の者ならば感謝すらするネタの宝庫でもある海賊の船長を目の前にして興奮しない新聞記者はいないだろう。
「逃げろー!ケーキが倒れるぞー!!」
悲鳴を聞きながらアスカはもう用はないとベールを取って捨てる。
やっと視界がクリアになり、目の前の光景に思わず呆気にとられた。
「ええ…ルフィだらけなんだけど…」
「ブリュレ君の能力だね…本人と1人を除いてあのルフィ君達は森にいる動物達だ」
状況把握しきれない情報量ではあるが、混乱している今なら姿を消してもしばらくは探す余裕もないだろう。
そう思って『私達も行こう』と席を立ち、ルフィ達を探しに騒動の中に入ろうとした手を掴まれ止められた。
グッと手を引っ張られ止められたアスカは振り向くと、アムラスがいた。
「アムラス?」
「もう少し待ちなさい…今は下手に中に入るべきじゃない」
『君は今海楼石で能力が使えないだろう?』とまで言われてしまえば、アムラスの言葉通りにするしかない。
アムラスはアスカの手を引き、ビッグ・マムの傍から離れる。
ビッグ・マムは夫とフレイルが離れた事に気づいていない。
アスカはともかく、夫が自分を裏切るとすら考えないほどビッグ・マムはアムラスを信頼している。
今は式やウエディングケーキを台無しにしあちこち暴れるルフィに怒り心頭だった。
「どいつだ!?"麦わら"は!!どれが"麦わらのルフィ"だい!?よくもウエディングケーキをォ〜!!!」
怒りに身を任せ、叫ぶ。
ビッグ・マムの叫びに、ベッジは『返事なんざするか』と鼻で嗤っていたが――
「おれだァ〜〜!!」
真正面に向かい、返事をするのが、ルフィだ。
ルフィの作戦は上手く混乱をもたらせたが、如何せん、本人が単純馬鹿であるがために返事をしてしまった。
アスカは端に寄りながら素直に返事をするルフィに頭を抱え、アムラスは目を瞬かせて呆気に取られていたが素直すぎるルフィの反応にアハハと笑った。
「ゼウス!!プロメテウス!!」
「「ハイ!ママ!!」」
ビッグ・マムの怒りは全てルフィに向けられている。
怒りに身を任せ、ビッグ・マムは能力で作り出した雷雲のゼウスと、太陽のプロメテウスを発動させる。
ルフィはそれに構っている暇はなく、写真立てを破壊しようと腕を文字通り伸ばそうとした。
しかし、そんなルフィに何かがぶつかり、写真立てを壊すのは阻止されてしまった。
「ルフィ…!!」
「そうか、カタクリ君か…彼は覇気が使えるし強い子だから…厄介だね」
ルフィの両手足を黒い何かが埋めるように伸ばされた。
弾力がありそうな黒いそれはカタクリのモチモチの能力である。
アスカは切れたのかルフィの口から血が飛び散ったのを見えて思わず叫んだが、アムラスに手を取られているため駆け寄ることもできず、冷静なアムラスの言葉をただ聞くしかできない。
そもそも、行ったとてアスカは海楼石で能力を封じられているため足手まといになるのだろう。
「カタクリィ!手助けのつもりか!?」
「違う!こいつの狙いは『マザー・カルメル』の写真だった!!」
カタクリは本物のルフィの動きを止め、チラリとアスカへと視線を向ける。
アスカは義父であるアムラスに守られ安全の場所まで移されていた。
顔を隠すレースがないが、緊急時なため仕方ない。
麦わらの海賊団はアスカの所属する海賊団だ。
その船長が現れれば、アスカが逃げ出すのは見聞色がなくても分かるだろう。
だが、傍には義父のアムラスがいる。
アムラスが裏切ったとまだ知らないカタクリは安堵し、邪魔されたと怒る母に先読みしたルフィの行動を告げた。
「それが重要だと…なぜ知っている?それを知るのは身内のみのはず!!吐け!誰に聞いた!!」
足をモチに変えてルフィを捕縛したカタクリは身内しか知らないビッグ・マムの弱点を知るルフィをそのまま地面に叩きつけようとした。
しかし、それを止めるものがいた。
「"
紅茶一本背負い"!!」
ジンベエだ。
ジンベエは魚人であり、紅茶を操りカタクリの能力であるモチからルフィを救う。
能力者にとってこれほど鬱陶しく思う相手はいないだろう。
「『マザー・カルメル』の話をルフィにしたのはわしじゃ!傘下におったら噂くらい聞くのでな」
身内しか知らないという恩人の写真の事は、シフォンとアムラスが流した情報だが、その罪をジンベエが1人で背負ってくれた。
「おめェ…ケーキ壊しの犯人を庇ったな!?これは完全に謀反ととっていいんだな!?」
「ぜひそう受け取ってもらおう…ここをやめて"麦わらの一味"にわしは入りたい!!」
アスカとルフィはジンベエが一味に入りたいという言葉に喜んだ。
ジンベエが仲間に入る気があるのは、魚人島で分かった。
だが、あの時は色々ジンベエには背負うものがあったため簡単にルフィの仲間になれなかった事情があった。
それが、ビッグ・マムの傘下という立場だった。
まず、ルフィの…別の船に乗るのなら、片さなければならにものがある。
全て清算してから改めて麦わらの海賊団に加入したいと言った。
正直こうなると思わなかったが、いいタイミングと思っていいかもしれない。
「後は好きにしろ!!だがここを抜けることへの"落とし前"はつけてもらうよ!!」
「ああ…他の誰にも手を出さんと約束するならあんたが取れるだけのわしの"寿命"を差しだそう!!」
ジンベエが去ろうとする理由を聞かないが、盃を返されるということは親の恥である。
去るのならば落とし前を付けるのは必然。
その言葉は正しく、海賊は自由と言えど関係も大事にする者が多い。
その落とし前とは、ある"ルーレット"を回すことだ。
だが、それに『死と悪意しか感じられない』と感じジンベエは拒んだ。
それは正しく、そのルーレットは回した者が必ず死ぬようにできており、もしも回していたら今ここにジンベエはいないだろう。
寿命を差しだすというジンベエの言葉に、ビッグ・マムは上機嫌に笑う。
そして…
「それで手を打とう!愚か者!!―――
Stay or Life!?」
ビッグ・マム海賊団に残るか、それとも寿命を差しだすか。
そう問う。
その問いにジンベエは―――
「ライフじゃ!!」
即答で答えた。
先程コックたちの命を奪った能力を目の前にした周囲は、この場でジンベエも死ぬと思っていた。
だが、ジンベエの命はビッグ・マムに取られる気配は一向にない。
どよめきが起こる中、ジンベエは声を張り上げた。
「未来の『海賊王』の
仲間になろうっちゅう男が『四皇』ごときに臆しておられるかァ!!!」
ジンベエはビッグ・マムを前にしても怯えず命を惜しいと思っていない。
それは先ほどビッグ・マムの問いにライフと答えても寿命を取られていないことから誰もが理解した。
「盃は返上する!…これにてビッグ・マム海賊団をやめさせて貰う!!!」
そう言ってジンベエは盃を地面に置いた。
それはつまり…ジンベエは完全にビッグ・マム海賊団の傘下を抜けたということだ。
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