アスカの言葉など、ペロスペローにとったら負け犬の遠吠えにしか思えなかった。
気を大きくしながらも、チョッパーとブルックは死にかけており、2人が守ろうとしたアスカは捕まっている。
誰もが勝利を収めたのはビッグ・マム側にあると分かるだろう。
しかし――
「おい、ペロス兄!」
アスカを拘束していたカタクリは森の方から物音がし、ペロスペローも弟に呼ばれて気づく。
「ママだな…カカオ島のプリンの所へ誘導せねば…この船にケーキがないと分かれば私が殺される!」
母から国を守るためとはいえ、嘘を言った代償として母に嘘を気づかれたら命を取られてしまう。
とはいえ、こちらにはケーキはないがフレイルはいる。
義父ではないが、いないよりはマシだろう。
妹のプリンがケーキをもう一度作ってくれるというのでそれに期待するしかない。
どうやって母を誘導するかと考えていると―――ペロスペローどころかカタクリやアスカの想像とは異なる光景が目の前に飛び込んできた。
「麦わらァ!?」
森を抜けて来たのは、母ではなく…麦わらの連中だった。
母だけが森から抜けて来るとばかり思っていたペロスペローはギョッとさせる。
「ママはどうした!?なぜ麦わら達だけ…――まさかママがやられた!?いや…そんなわけは…」
「落ち着けペロス兄!義父さんの姿が見えない!ママ相手に足止めができるのは義父さんだけだ!」
義父であるアムラスは、姿こそ美しい青年だがエルフの種族柄、60を超える母よりも年上だ。
そして、彼は海賊王であるロジャー海賊団のクルーだった。
若い頃の母と刃を交え、母相手にも、更にはカイドウや白ひげ相手でも、生き残ってきた手練れだ。
年老いたとはいえ、四皇として相応な強さを保ってきた母相手に足止めができるのは、麦わら達を含めてこの国ではアムラスだけ。
母の姿がなく、裏切って麦わら達と逃亡を図ったアムラスの姿がないということはそういう事だろう。
「雷にやられたのはウチの兵士か…!」
先程の落雷にやられたのは麦わらではなく、自国の兵士達だったらしい。
「ルフィ!!みんな!!」
ルフィ達の姿にアスカが思わず声を上げた。
その声に気づいたルフィ達は、アスカだけではなく飴に包まれているブルックとチョッパーに気づき目を丸くした。
しかし傍らにカタクリとペロスペローがいるのに気づく。
「
鏡世界へ戻れ!お前ら全員数秒後にあいつの足元に転がってるぞ」
「!?」
少し未来が見えるカタクリの言葉に兵士達は顔を青ざめ我先にと鏡へと吸い込まれるように駆け込む。
「こいつも連れて行け…部屋に閉じ込め見張りも立たせろ」
「はい!」
片手で拘束していたアスカを兵士の1人に渡す。
腕を後ろに回したままモチで拘束されているせいでアスカは身軽に動けず、抵抗しようにも海楼石のせいで本来の力も出ない。
ルフィ達に敵わない兵士でも普通の少女1人、余裕で拘束し連行できる。
「いや!放して!行かないったら!!ルフィ!ルフィ!!」
「アスカ!!!」
鏡のある部屋へとアスカは兵士に連行されそうになる。
今のアスカができるのは、必死に抵抗するのと、声が枯れるほど叫ぶことだ。
その声はルフィに届き、アスカの声にルフィが答えた。
その声にアスカの表情が少しだけ安堵の色が見えたのを、カタクリは見逃さなかった。
「女1人に何を手こずっている!さっさと連れて行け!」
「は、はい!!」
仲間を呼んでいるだけ。
恋人に助けを求めているだけ。
ただそれだけだ。
敵対しているのなら当然の権利。
これまでにもいくらでもそんな叫びを聞いてきた。
なのに、なぜか気分が悪い。
その気持ちをぶつけるように少女1人連行できない兵士に怒鳴りつけた。
三将星の1人、それも最強と言われているカタクリに怒鳴られ兵士は顔を青ざめ強引にアスカを鏡の中へと消えて行った。
その瞬間―――兄の能力で作った飴の壁を突破したルフィの拳がカタクリへと降りかかった。
「アスカをどこにやった…!」
「一足遅かったようだな…あのフレイルはもうここにはいない」
ルフィの拳を、カタクリも腕をモチにし相殺した。
カタクリの言葉にルフィの表情は更に険しくなる。
◇◇◇◇◇◇◇
鏡の中は騒然としていた。
「カタクリ様の命令だ!こいつを部屋に監禁する!ホールケーキ城の鏡はどこだ!?」
「分かんねェよ!っていうかホールケーキ城に行ったとしてどこに監禁する部屋があるっていうんだ!?あそこは本物のケーキになったんだぞ!?」
カタクリの命令に従ったが、鏡の中はブリュレの能力で作られたもの。
普段はビッグ・マムの子供達に従って鏡を出入りしていたため、たかが兵士がホールケーキ城に続く鏡が分かるわけがない。
まとめ役がいない、または混乱して機能していないのか、言い合いが始まった。
その隙をつき、アスカは兵士の手を振り払った。
「あっ!逃げたぞ!待て!!」
「捕まえろ!!あの娘を逃がしたと知られたら殺される!」
兵士を振り切って走るアスカはまっすぐ入って来た鏡へ向かって船に帰ろうとした。
しかし、鏡の道に入って来た者達がいた。
「ルフィ!?」
それも、三人。
そのうちの1人は恋人であり船長であるルフィ。
ルフィはカタクリとミラミラの実の能力者であるブリュレも連れて鏡の世界へと入って来た。
アスカはそのままルフィの下へと向かった。
アスカが自分の後ろへと戻ったのを確認し、ルフィはそのまま船への鏡を拳で割った。
アスカは驚いたものの、何も言わずルフィに全てを委ねた。
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