※ここから先はフランペsageとなります。
※ファンの方はご注意!
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鏡の世界でルフィはカタクリを相手に戦い続けていた。
その戦いをアスカは巻き込まれないよう気を付けながら見守るしかなく、もどかしさに手首に嵌められている海楼石のブレスレットをグッと握り締める。
(なんか…おかしい…)
彼らの戦いを見ていてふとアスカは気づく。
ルフィの動きが少し違和感を感じたのだ。
ルフィはカタクリとの戦いの中で、ルフィの見聞色の精度が上がりカタクリの動きについてきていた。
しかし、アスカの感じた違和感は見聞色の精度ではない。
ルフィの動きが可笑しいのだ。
(…なんか…時々…力が抜けてる感じがする…)
もしかしたらルフィの限界が来たのかもしれないと思った。
だが、どうもそうとは違うようにも思えた。
ジッと目を凝らしてルフィを観察する。
「何だそのザマは…!!」
ルフィの様子にはカタクリも気づいていた。
最初こそアスカと同じく身体の限界が来たかと思ったが、何度か攻撃を繰り返してそれは違うと気づく。
「一瞬の油断で勝敗は決するぞ!!――なぜ"気を抜いた"!?」
ルフィは時々力が抜けたように動きが鈍くなる。
そのせいで先ほどからカタクリの攻撃をその身に受け更に体には傷だらけとなる。
違和感に気づいていながらもカタクリは手を止めない。
そして再び大きな隙を作ったルフィに―――
「餅――吟着!!」
大技を叩きつけた。
その中に、力を抜くルフィへの苛立ちもあった。
床がえぐれ凹んでいるその中央にルフィは倒れていた。
血だらけとなり仰向けに倒れるルフィをギロリとカタクリは睨みつける。
「丁度お前を認め始めた矢先に…失望させてくれる…!」
カタクリにとって、ルフィは敵だった。
そして、惚れた女を巡る恋敵。
ルフィとの戦いの中でカタクリは色恋関係なくルフィを認め始めていたのだ。
なのに、ルフィは何故か自分との戦いの最中だというのに何度も力を抜く。
それはカタクリを舐める戦い方だった。
ルフィはボロボロになりながらも立ち上がる。
これまでに舐められた戦い方をされては、カタクリもルフィとの戦いに興味も湧かなくなるのは無理もない事だ。
アスカはルフィの様子の異変と、その痛々しい姿に、ただただ心配するしかできなかった。
しかし――
「!――今…」
立ったルフィはまさに満身創痍。
そのせいか、立ったのに横へよろけて倒れてしまった。
ただ体力が尽きて倒れたと思ったが、アスカは一瞬の違和感に気づいた。
例え海楼石に力を封じられても、これまで得た経験値までは奪われはしない。
洞察力はそのままのアスカはルフィが倒れる前に何かがルフィに向かって飛ばされたのを見た気がした。
はっきりと言いきれないため目を凝らしてルフィを見た。
その時、少女の笑い声が聞こえた。
「フランペ様!バレちゃいますよ!」
その声の方へ視線を向ければ、フランペがいた。
フランペはアスカと同じく離れた場所でカタクリとルフィの戦いを見ていたが、ルフィを見て我慢できないように声を抑えられず笑う。
「かっこ悪いし!血で汚いし!弱いくせに何度も何度も立つのよ!がくがくしながら立ってはやられてまたがくがくって…!」
フランペ達の声はアスカにも届いていた。
フランペにとってルフィは敵だ。
それも姉であるプリンとの結婚式を邪魔し壊した本人である。
例え暗殺を仕組まれたとは言え、彼女がルフィを恨んでも仕方ない。
だが、だからとルフィを笑っていいわけではない。
彼女は必死になっている人間を嘲笑うという最低な行為だった。
アスカは奴隷の時代に必死になっている奴隷を嘲笑う主人を見てきた。
それがフラッシュバックしてしまうほど、今の彼女の行動は敵であるアスカ側からしたら嫌悪すべき行動だった。
『ちょっと!』と文句を言おうと彼女の方へ歩み寄ろうとしたアスカだったが、代わりと言わんばかりにカタクリが動いたのを見て、口を閉ざした。
フランペはカタクリの妹だ。
彼が行動を起こしたのなら、他人のアスカは何もいう事はない。
ただし、彼に行動によってはアスカは彼へ向けた感情が逆転することもあるだろう。
「あ!見てくださいフランペ様!また小鹿が立った!」
「ぶーっ!ちょっと笑わせないで!」
立ち上がろうとするルフィを部下が気づき、フランペは部下の小鹿という言葉にまた腹を抱えて笑い、部下からもドッと笑いが起こった。
カタクリに任せたとはいえ、これ以上アスカも我慢の限界が来た。
しかし、アスカが行動に起こそうとしたその時――
「何が可笑しいんだお前ら…!」
カタクリが持っていた武器、三又槍で自らの横腹を刺した。
口や腹部から血を流すカタクリの行動にアスカは言葉を失い、思わず口を手で覆う。
「男の勝負に…――薄っぺらい援護などするな!!!」
カタクリの行動にアスカは更に驚く。
カタクリは腹部を自ら刺し、あれほど見た者は殺すと断言していた口元をさらけ出し妹であるフランペに怒鳴り声をあげる。
そこでアスカはルフィの異変はフランペの仕業だと気づく。
フランペは音のない得意の吹き矢でルフィの動きを止めていた。
ずっとルフィの様子に気づいていたカタクリだったが、フランペの姿にその原因に気づいた。
自ら腹を刺したのは、それに気づかずルフィの腹に致命傷を負わせたからだ。
「キャ〜〜!来ないで!触るなバケモノ!」
怒鳴りつけられたフランペはカタクリの素顔を見て悲鳴を上げ、驚いたのか浮いていたのに床に転がって壁にぶつかった。
「あのバカを笑いたきゃ…おれも一緒に笑え…」
兄に向けて否定的な言葉を向けるフランペにアスカはカチンと来たが、カタクリは気にも留めていない様子でフランペ達を睨む。
「カタクリ…」
カタクリはルフィを認めていた。
だから、力を抜くルフィに怒りを覚えたし、それを邪魔をしたフランペを叱った。
アスカはカタクリが見せたくもない顔を晒す事を心配そうに見つめながらも、彼の行動を見て安堵した。
ここでフランペを褒めたり、軽く叱るだけの行動をしたら、きっとアスカは彼への感情が反転してただろう。
とはいえ、アスカは彼がそんな事をしないと思ってはいたが、断言はできなかった。
カタクリがルフィとの戦いを邪魔をされて喜ぶ男ではないと断言するにはアスカは彼を知らなすぎる。
アスカはこれでルフィとカタクリが邪魔されず戦えると思っていた。
しかし…
「だっさ〜〜!!」
慕っていた兄に叱られ顔を青ざめガタガタと震えて怯えているように見えたフランペの口から予想外の言葉が出てきた。
アスカはその言葉にギョッとさせ、思わずフランペを見る。
フランペは腹を刺した時に頬についたカタクリの血をゴシゴシと拭う。
「あーもう!汚い!血がついた!何のマネ!?自分のお腹刺して…!あんたなんかカクリおにー様じゃない!」
フランペは最強の兄に対して理想を描いていたのだろう。
そもそも、彼女は心から兄であるカタクリを慕っているわけではなく誰もが憧れる強者に惹かれていたのだろう。
それが、マフラーを外せば予想外の素顔を露わにさせ、フランペには理解しがたい自分を傷つけるという行為。
彼女からしたら今のカタクリは幻滅して当然の姿だった。
腹立つが、幻滅するのは勝手だ。
マフラーで口元を隠していたのだから理想していた素顔と違ったとガッカリするのは誰だってあるだろう。
それが許されるというわけではないが、勝手に理想を押し付けていた相手の素顔を見てガッカリと勝手に幻滅するのは現実でもあることだ。
「耳まで裂けてまるでフクロウナギ!!」
その言葉に部下達がドッと笑った。
笑う要素がどこにあるんだと思うが、アスカはまだ耐えられた。
罵倒を向けられている本人であるカタクリが堪えているのだから、アスカも堪えるべきだ。
だが、続いた行動がいけなかった。
フランペは噛んでいたガムをカタクリに向けて吐き出した。
そのガムはカタクリの頬に当たり、その姿にまた部下達から笑いが起こる。
カタクリの脳裏に幼い頃の記憶が過る。
だからだろう…彼は言い返しもせず妹に背を向けルフィとの戦いに戻ろうとした。
それを見てフランペは更に畳みかける。
「何してるの!?バケモノが逃げるわよ!写真を撮りなさい!みんなにバラすのよその―――」
フランペの言葉が途切れた。
同時に部下達の悲鳴が聞こえ、カタクリが立ち止まり振り返ると――アスカがいた。
「アスカ…」
アスカはカタクリに背を向けており、浮いているフランペの視線に合わせるようにシュラハテンに乗っていた。
フランペは顔を背けるように横に向いており、頬が赤くなっていた。
背を向けていた時にカタクリの耳には乾いた音が聞こえていたため、アスカの行動に気づく。
アスカはフランペの頬を叩いたのだ。
「ごめんなさい…カタクリ……あなたは堪えていたのに……でも…もう…!あなたの妹だとしても!我慢できない!」
部下達は、フランペの命令に従ってカタクリの写真を撮ろうとしたのをシュラハテンの尻尾で叩かれ壁に激突し痛みに呻いていた。
アスカはフランペとその部下達の行動に我慢の限界を超えた。
まだ罵るのなら我慢も出来た。
それをカタクリが堪えていたから、アスカも堪えていた。
だが、ガムをカタクリへ飛ばして、更に罵倒しただけではなく、写真を取らせてばら撒こうとしているのには流石にアスカも我慢を超えた。
カタクリはアスカだ。
フランペがしようとしているのは、アスカの背中の焼印を写真に撮ってバラ撒こうとしているのと同じことである。
同じ隠し事のある身として、他人事ではいられなかった。
まさかノーマークだったアスカに頬を叩かれるとは思っていなかったのか唖然としているフランペを無視し、アスカはカタクリの下へと向かった。
「余計なことをしてごめん…」
「……………」
ガムはすぐに落ちたが、カタクリの頬には唾液がついたままだった。
そのままカタクリの頬に付いているフランペの唾液を袖で拭って取る。
カタクリやシャーロット家は家族を大切にしているため、例え罵倒した妹とはいえ妹を叩いたことをアスカは謝る。
そんなアスカをカタクリは何も言わず見つめていた。
「よくも…!よくも私を叩いたわねっ!あんたも!そのバケモノも!絶対に許さないから!覚悟しなさい!」
我に返ったのか、強く叩かれて赤くなった頬を手で押さえ涙目になりながらアスカを睨む。
アスカとカタクリを指さすフランペに、復活した部下達が同意したように騒ぐ。
しかし、カタクリにとっても、アスカにとっても、彼らの声など雑音にしかならない。
アスカが言い返そうとしたが、それをカタクリが止めた。
「気にしなくていい」
頬を拭ってくれているアスカの手を取り、アスカの意識を妹から自分へと向けさせる。
気にするなというが、フランペの態度はいくら年の離れた妹とはいえ叱って当然だ。
「あの子はあなたの妹なんだろうだけど…でも…」
「構わない…お前の気持ちだけで十分だ…礼を言う」
「カタクリ…」
取ったアスカの手にカタクリは口づけをした。
その口づけにアスカは目を見張り、そんなアスカをカタクリは見つめる。
しかし、すぐにアスカの手を放しカタクリは再びルフィの下へと戻って行く。
「…………」
アスカはそんな彼の背をただ何も言わず…何も言えず、見送るしかできなかった。
彼に口づけされた手を胸に抱くように握り締める。
「悪かった…針一本に気づけなかったおれも間抜けだ」
「海賊の勝負に卑怯なんて言葉はねェ…避けきれなかったおれが悪い…!」
ルフィは露になった自分の顔を見ても表情一つ変えない。
そんなルフィに、カタクリは思わず口角が上がる。
「外野がうるせェな…」
「どうせ立ってられねェよ!」
2人の言葉と同時に―――覇王色が放たれる。
その場には2人とアスカ以外の人間は誰一人立っていることはできなかった。
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