アスカがついた時、戦いはすでに始まっていた。
行方が分からなかったナミ、ビビ、そして散歩に行っていたはずのゾロも捕まり、三人は何故か大きな白い蝋のようなものに飾られていた。
その蝋の上にはどういう原理で動いているかは分からないがグルグルと回転し、上の火が付いたろうそくから滴り落ちる蝋が霧となりナミ達に降り注いでいた。
その回転している蝋が近すぎて目でもハッキリと分かるほどナミ達の体が白くなっていくのが分かった。
アスカはそれを走りながら彼らの状況を把握し、まずはその蝋をまず壊すことを優先したほうがいいと判断すると一気に事を終わらせようとウサギの足で走っているスピードを速める。
見たところ隠れる場所がないため、森から出た時点で敵に見つかるのは必須だから隠れずそのまま森を抜けてナミ達を助けようとする。
ナミ達もアスカがこちらへ向かってくるのに気づき蝋を壊してくれるのだと思いホッとしたのも束の間…
「―――!!」
上からの殺気にアスカはその場から横へ飛び退いたのだが…その瞬間アスカがいた地面が抉られてしまう。
咄嗟に横へ飛び退いたアスカは地面に片手を突き着地し、顔を上げた。
そこには一人の女性が立っていた。
「キャハハ!邪魔したらダメよ、お嬢さん!」
「…能力者」
その女性は細めで決して落ちただけでは地面が抉れるほど体重があるとは思えない。
細身の体でのその破壊力を見てアスカは何らかの能力者だということに落ち着く。
アスカは隠れていないため邪魔はしてくるだろうとは予想はしていたが、面倒な奴の登場に眉間にしわを寄せ、女を睨んだ。
女は睨むアスカを独特な笑い声で笑った後パラソルを開きふわりと宙に浮いた。
宙に浮いた女を目線で追うが、アスカは女に構っている暇はなく女を無視してナミ達を固まらせている蝋へと向かって走ろうとした。
だが、
「アスカ!!上…!!」
ナミの声にアスカはハッとさせる。
ナミ達を助ける事で頭がいっぱいでナミの声で女が降ってくるのに気付いたが、それも遅くアスカは咄嗟に腕をウサギにしてガードしたが簡単に地面に叩きつけられ、ありえない重さに地面が再び抉れた。
衝撃と重さでアスカの口からは血が吐き出され、女はアスカの上からすぐに退いたが、アスカは抉れたそこから倒れたまま動かなかった。
「アスカ!!アスカ!!大丈夫!?」
「アスカさん…!!」
「あいつも能力者か…なんの能力者だ?」
アスカが動かないのを見てナミもビビも心配したが、ゾロだけは冷静を保っていた。
女は動かないアスカに目を細め笑みを深めて近づく。
「キャハハ!やだ!もうおしまい!?私達に刃向うくせに弱いのねェ、あなた達!」
覗き込むように倒れて動かないアスカを見下ろしながら女、ミス・バレンタインはアスカを嘲笑った。
それにナミもビビもカチンと来たのか手も足も出ないが女を睨み、ゾロも仲間を侮辱したミス・バレンタインの言葉にピクリと片眉を上げた。
ミス・バレンタインは三人の視線に気づいていたが、三人が手も足も出ないと知っているし、ルフィはMr.3という男が相手し、ウソップは相棒であるMr.5が相手をしている。
自分を襲う暇な奴と言えばボロボロのカルガモのみ…だからミス・バレンタインは余裕でいられたのだ。
しかし…
「ゴフ!!」
「―――!!」
ミス・バレンタインは背後の気配に咄嗟にパラソルを開いて上へと逃げた。
上から下を見れば自分がいた場所に白い何かの塊がおり、それを中心に地面が凹み抉れていた。
白い塊からピョコンと出る耳らしき長い物とちょこんと出ている丸いしっぽからウサギだと認識した。
しかしその白何かがウサギだと認識した瞬間、巨大なウサギを伸びていたはずのアスカが踏み台にしまっすぐミス・バレンタインのもとへと向かって飛び上がる。
ミス・バレンタインはアスカを認識は出来たが、それは一瞬の出来事だったため認識が出来ても行動に移す暇はなかった。
驚いたように目を丸くし自分を見るミス・バレンタインの顔をウサギの腕で鷲掴みにし、そのまま思いっきりミス・バレンタインを地面に叩きつけた。
ウサウサの能力も相まってその威力は強烈で、ミス・バレンタインは気を失ってしまう。
「アスカさんが敵の一人を倒した…!」
「これで1人手が空いたわ!!アスカ!!この回ってる蝋を止めて!!この蝋のせいで私達蝋人形にされそうなの!!」
気を失い血を流すミス・バレンタインの顔を掴んだままアスカは立ち上がる。
ビビは…いや、ビビもナミもアスカの戦いを見たことがなく、尚且つ能力がウサギのため戦闘が出来ないと勘違いしていた。
だからビビはアスカが戦ったことや勝利した事に驚いており、しかしゾロを挟んだ隣に立つナミはアスカに一刻も早く蝋を止めてと伝える。
アスカはミス・バレンタインの顔を掴んだままでナミの言葉を聞き『わかったー』と呑気に手を振る。
そしてアスカは何故かミス・バレンタインを放すことはせず、ミス・バレンタインの顔を掴んだまま構える。
それを見た三人はそのまま固まった。
「え、なに…ちょ…え!?待ちなさい!アスカ!!何をするの!?」
「お、おい…ちょっと待て!お前何する気だ!?それを投げるのか!?それを!!っていうか人を!!」
「ちょ、ちょっとアスカさん!?待って!それは流石に…!!」
「いっきまーす!"ラビット人間ロケット"〜〜!!」
「「「ちょっと待てーーーっ!!!」」」
アスカは掴んでいるミス・バレンタインを投げて蝋をどかそうとしていた。
しかしミス・バレンタインは敵とは言えすでに戦意喪失している"人間"。
いくら敵だとしてもナミ達は人間を軽々と投げようとするアスカに慌てた。
引き留めようとするナミ達を無視し、アスカは即席の技名を作りあろうことかミス・バレンタインを捨てるように投げた。
しかし人一人で止めれるのならゾロ達で何とか出来るわけで…当然ミス・バレンタインの体は漫画のような線を描いて跳ね返され地面に転がった。
それをナミ達は目で追い、アスカは頭をかいた。
「失敗しちゃった…」
「いや、しちゃったじゃないと思う…」
「お前の異名…意外と合ってんじゃェのか…」
失敗したと笑って誤魔化そうとするアスカにナミとゾロの突っ込みが入り、ビビはまさかアスカがこんな事をすると思ってもみなかったのか唖然としていた。
ビビがアスカと初めて会った時、アスカは風邪でダウンしており、見た目が美少女のため余計に儚い少女だと思い込んでいたところもあったのだろう。
気を取り直し、アスカは能力で回転する蝋を吹き飛ばし退かせた。
ウサギの足で蹴り飛ばしたアスカはゾロの前に着地する。
「動ける?」
「無理ね…足が動かない上にロウが全身に行き渡ってて指一本も動かせないわ…」
「だから足を…」
「あんたは黙ってろ!!」
アスカが蝋を倒してくれたおかげでナミ達の蝋人形化は防げた。
Mr.3もまさかこんな少女が蝋を蹴り飛ばせると思っていなかったのか驚いて声すら出ず唖然とアスカの背を見上げていた。
アスカはナミ達に動けるかと聞けば首を振られどうしようかと考える。
するとゾロが何かを言いかけ、それをナミが叱って遮る。
ゾロが足がなんたらと言っていたため、アスカは自然とゾロの足を見た。
ゾロの足は血だらけになっており、アスカはゾロが何をしようとしたか分かってしまい、ゾロを半目で見上げ、ゾロもアスカが何が言いたいのか分かったのかアスカの視線に気まずそうに目を反らした。
「な、なんだよ…」
「"ラビットセラピー"決定。」
「なッ!?―――ざけんな!!だれがやるか!!」
「そんな怪我してるあんたに拒否権あると思う?大丈夫、見慣れてるじゃない」
「見慣れてねェよッ!!!」
ゾロはアスカの言葉にぎょっとさせる。
ゾロはナミが離れた時にアスカの能力を知り、その中に"ラビットセラピー"の事も知っていたため、顔を青ざめ思いっきり拒絶した。
しかしゾロは知っていてもナミとビビは知らず、ゾロがこれほどまでに嫌がり拒絶するその"ラビットセラピー"なるものに疑問がわいた。
だがアスカに聞こうとナミが口を開きかけたその時…アスカがなぜか脱ぎ始めた。
ナミ達には突然パジャマのズボンを脱ごうとするアスカに慌てて止めに入る。
「ちょ、ちょっと!?アスカ!?なんでこんなところで脱ぐの!?やめなさい!!」
「アスカさん!?何で…!?」
「大丈夫、大丈夫、これ治療だから。」
「だからって男の人の前で脱がなくても…というか…治療で脱ぐ必要あるのかしら…」
「ああ、それも大丈夫だよ…ゾロ、見慣れてるから。」
「え…見慣れて…?」
「ゾロ…あんた…」
ナミとビビは"ラビットセラピー"が何なのかも知らず、そしてアスカが能力を使うには服が破れるとも知らず慌てていた。
しかし当の本人であるアスカはケロッとしており、平然としながら全て脱ごうとするアスカの言葉にナミとビビは同時にゾロを見た。
自分の裸を見慣れているという意味はアスカの能力を知っている、という意味が含まれているのだが、まだそれを知らないナミ達には『見慣れるほど裸の付き合いがある仲』という意味でとらえられた。
ナミはともかく、ビビからもジト目で見られたゾロは顔を引き攣らせながら女2人に負けじと声を張って2人が考えているようなことはないと否定した。
「いやお前らなんでそんな目で見るんだ!?お前らが思っていることはしとらんわ!!!」
「どうかしら…初めて会ったときも裸で抱き合ってたじゃない…まあ溜まるのは分かるけど手軽な女に手を出すのって最低!しかも年下で仲間で何も分かってないような子供に手を出すなんて…人としてどうかと思うより剣士としてどうかしら〜…」
「年下っつっても2・3個違うだけだろ!!大体なんで俺がコイツに手を出すんだ!!!っていうか溜まってねェよ!!」
「ふ〜ん…」
あたかも自分がアスカに乱暴をしたと言わんばかりのナミにゾロは強く否定したが、ナミとビビからの白い目は収まることなくいい加減にゾロもキレかけていた。
青筋を何個も額に浮かべながら怒りで体を震わせるゾロを尻目にアスカは着々と脱ぎでいく。
すでにカーディガンが脱ぎ捨てられ上のパジャマのボタンを外している途中だった。
しかし…
「駄目よ、勝手なことしたら」
アスカは後ろで少女の声がしたと思った瞬間……
「"カラーズトラップ"『恐怖の灰色』」
ミス・ゴールデンウイークがアスカの背中に絵の具を塗った。
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