(75 / 293) ラビットガール (75)

シュラハテンとは、ある国にしか生息していない生き物らしい。
正式名所は本人も忘れたと言い分からない仕舞いだが、シュラハテンのいた国では人間とシュラハテン達は共存関係にあったという。
野生の者もいれば、親同士が持つ彼らの掛け合いで出来た子が受け継がれたりと様々で人間とは上手くいっていたという。
武器にもなるという彼らを人間は昔から戦の己の武器として使ってきた。
その反面運命を共にする存在だからこそ相棒や家族のように親しい仲になっていた。
だが、その国はすでに滅んでおり、シュラハテンの仲間の多くは死んだ。
国を滅ぼしたのは菌だという。
新種のウィルスが国中を蝕み、人間全てが死に絶えた。
どうやらそれは人間にしか移らないウィルスらしく、多くのシュラハテンの仲間は家族のような存在の人間を失い……自ら命を絶った。
そのため、シュラハテンのような生き物は広まる事はなく闇に消えたのだという。
仲間がいるかは分からないが、シュラハテンはずっと一人で生きてきたらしい。
誰かが買い取りあの店に戻ってきたのも、自分が従えれる存在を探していたからだろう。
シュラハテンはかつて命を共にした人間がいたから…シュラハテンは人間の傍に身を置きたがったのだろう。
シュラハテンが仲間同様死ななかったのは、共に生きた人間が死ぬなと望んだから。
ただ、それだけだった。
そしてシュラハテンは何度も主を変え、アスカのもとへとたどり着いた、という事である。







「ウオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!」


その説明も経て、戦いを終えたブロギーは友の死に泣き崩れていた。
その声は巨人族に相応しく大きく、思わずアスカは耳を塞いでしまう。


「…泣き方まで豪快ね……!!!」

「まるで滝だぜ……!!!」

「おい見ろ!!後ろっ虹っ!!!」

「大きな声…」

≪こんなにも巨大な者がおるのだな…≫

「クエェ……!!!」

「耳が………!!」

「わかるぜブロギージジョオ(師匠)!!!」


シュラハテンの説明に何とかギリギリ最低限は納得したナミ達はとりあえずシュラハテンは敵ではないと認識したのか放って置き、今は大泣きしているブロギーを見上げていた。
巨人族と言うことで、大きいのは体だけではなく声も大きく、長年ライバルだった巨人族の死を悲しんでいた。
長く生きて100年しか生きることができない人間でも、近しい人との死に別れは辛い。
人間ですらそうなのだから人間の倍生き、100年も決闘していたのだからブロギーの悲しみは人間の比ではないだろう。
そう思い誰もが悲しむブロギーに掛ける言葉さえなかった……のだが……ブロギーとの戦いに敗れて息絶えたはずのドリーが突然ムクリと起き上がったのだ。
それにはルフィ達も、そしてそれ上にブロギーは驚いた。


「ド、ドリー!!お前…!!」

「どうやら…武器のお蔭で気絶していたようだ…」


起き上がったドリーにブロギーは目が飛び出るんじゃないかと思うほど大きく丸くさせる。
どうやらドリーは気を失っていただけのようで、100年もの間彼らの決闘に付き合っていた武器は限界を超え、ドリーに致命傷を与える事さえできなかったらしい。
なんとも間抜け…というかなんというか……勝負の在り方は今は置いとき、ブロギーはドリーが生きていた事に今度は嬉し涙を流し喜んだ。







死んだと思ったドリーが実は生きておりブロギーは心底喜んだ。
ドリーも自分が気を失っている間何があったのかを聞き、気を失ていた事への申し訳なさもあったが、何より勝負がつき100年もの間負っていた重荷も降ろされ身が軽くなった気もした。
すると今まで姿がなかったサンジがジャングルから現れ、主に女性陣三人の姿だけを捉え、どちらかといえば整ているはずの顔をデレデレにさせながらこちらに駆け寄ってくるのが見える。


「っはーーーっ!!ナミさ〜〜ん!ビビちゃ〜〜ん!アスカちゃ〜〜ん!あとオマケども!!無事だったんだね〜〜〜っ!!よかった〜っ!」

「よー!サンジ!」

「あんにゃろ助けにも来ねェで今頃現れやがった…」


サンジの姿を見てアスカは『あ、そういえば居なかったっけ』と今サンジの存在を思い出す。
サンジも巨人を見るのは初めてなのか、初めてみる巨人に驚き『お前がMr.3か!!』と叫んだ。
今まで姿がなかったサンジがMr.3の事を知っているのはおかしく思い、ナミがそれを問えば女に目がないサンジは上だけ下着姿のナミに骨抜きとなる。
そんなサンジにアスカはルフィに貰った煎餅を食べルフィとウソップと共になごんでいた。
どうやら姿がなかった間、サンジは裏で動いていたようである。
ジャングルを歩いていたサンジの目の前に白い建物のようなものが見え、そこで休憩しているとMr.0から連絡が来たというのだ。
Mr.0からの電伝虫を取り、サンジはMr.3を装い麦わら一味とビビを始末したと言ってくれたようだ。
その報告にひとまずほっと胸を撫で下ろしたのだが、それだけではなく、サンジはなんとアラバスタへのログポースまで手に入れてくれたようである。
それをみんな喜び、ビビは喜びのあまりサンジに抱き付きお礼を言っていた。
根っからのフェミニストなサンジはビビからの抱擁にデレーッとだらしない顔をさらけ出していると…目線の先にアスカを捉える。
アスカは服を着ているのだが、アスカに合っていないブカブカのビビの上着だけ羽織っており、下は何もはいていない。
ナミに上の服のボタンをつけられているおかげで胸が見えることもなければ、小柄だから下半身の大事なところが見えることはなかった。
だが、短パンといつもの格好とはまた違う艶めかしい姿にサンジは神々しすぎて目がつぶれるとギュッと瞑る。


「アスカちゃん!?その格好は…!?」

「ああ、燃えちゃってビビに借りたの」

「そうだったんだ……ってそうじゃなくて!!レディがそんな恰好してたら駄目だよ!風が吹いて見えちゃうかもしれないからこれで隠して!!」

「えー、でも私気にいてないし…」

「おれが気になるんだ!」


上はビビの上着でなんとか逆セクハラは免れた。
下半身もギリギリだが見えない位置で上着で隠されている。
下着を履いているのかはサンジはあの場にいなかったから分からないが、妹のように可愛がっているアスカのあられもない恰好を黙って見過ごせるはずもなく着ていた上着をアスカに渡す。
上着を渡されてももうビビの上着を羽織っているためどうしたらいいのか分からず、アスカは断ろうとした。
しかし断るのを断られアスカは仕方なく『下!!下隠して!!』と必死なサンジの言う通り下に装着した。
しかし、普通に袖を前で結ぶとサンジが危惧した通り風が吹いてもしかしたら丸見えになるかもしれないし、後ろで結んでもお尻が丸見えになるかもしれない。
結局考えた結果、腰の横で袖を結ぶしかなく、スリットのように片足が出てしまうのだが…まあ、妥協した結果と言えよう。
因みにサンジが戻る前、シュラハテンは用は済んだと腕輪になって静かにしている。
どうやら腕輪になるとアスカしか声は聞こえず、周りは聞こえないらしい。
若干体にだるさが戻り、熱が上がっているような気がしながら、ナミ達に言えばまた話が脱線するとアスカは話が終わるのをじっと待っていた。







ログポースも手に入り、ルフィ達は早くもリトルガーデンとお別れとなる。
アスカはナミと共に船に戻ると服を着替えた。
真っ裸でも平気なアスカは別に着替えなくても構わなかったが、ナミが口うるさいのだ。
しかもアスカの顔が若干赤いのを目ざとく見つけたナミが服ではなくパジャマに着替えさせたのだ。
部屋で寝ていろと言われたが、アスカもドリーとブロギーとの別れに立ち会いたいと思っており、ナミに我儘を言って許してもらう。
因みにナミはアスカの上目遣いからの『ナミ、お願い…』に滅法弱い。
アスカの我儘に甘いというのをアスカは本当の意味で仲間になったナミと過ごして気づいたのだ。
しかし微熱だと思っていた体は次第にダルさを増していき、意識も朦朧となっていく。
何かを支えに立っていられなくなり、しかし部屋に戻るのも嫌でアスカは我慢して手すりに手を乗せ無理矢理自分の体を立たせた。


(せめて、ベッドに戻るまでは…)


アスカはそれを知られないよう平然と装う。
でないと速攻部屋に戻されるからだ。
サンジとゾロが獲った獲物を切り分け、船に乗せると船は海を進み始める。


「あ!!あれおっさん達だ!見送りに来てくれたんだな!」


船はブロギー達の言葉通り前だけ向かって進む。
島を出ようとしていた時、ルフィ達が見送りにきてくれたブロギーとドリーに気づき、二人に気を取られていた。
だから目の前に海王類がいることに気づかなかった。
アスカは頭がだんだんと朦朧となっていたため、海の中から突然現れた海王類に食べられた事も、そして、ブロギーとドリーに助けられたことも気づかなかった。


「………ッ」


アスカは助け出された時の揺れに立っていられず、壁に激突し…気を失った。


(最近こんなんばっか…)


そう思いつつアスカは完全に意識を失う。

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