「ドクトリーヌ、抗体の反応があるよ」
「ああ…そうだろうね。じゃ原因は何だい答えてみな」
「ケスチア」
「そうさ。お前が看てな」
コポコポ
グツグツ…
アスカは周りの音で目を覚ます。
目を覚ませば微かに聞こえていた音もハッキリと聞こえ出し、何かをすり潰す音も混ざりアスカはその音の方へ顔を向ける。
まだ体のダルさは残っているが、大分楽になっており、目覚めたばかりでぼやける視界に誰かの後姿が映り、アスカはそれを幼馴染だと思い、ルフィの名を呟いた。
「るふぃ…?」
「―――ッ!!」
アスカが名を呟けば、その後姿の人物は何故かビクリと大げさに驚く。
そのせいで何かの器具が音を立てて落ちたり事がったりし、アスカはその大きな音で意識をはっきりさせていく。
後姿の人物は幼馴染ではなかった。
重い体を起き上がらせ、アスカはその人物を改めて見る。
人だと思っていたその人物は人間ではなかった。
シカ?タヌキ?どちらかは分からないがどうやら動物らしい。
その動物はアスカに驚いたようにドアの方へ駆け寄り物陰に隠れ顔だけを出して様子を伺いたいのだろうが…その隠れ方が真逆で体だけがはみ出ていた。
「それ、逆なんじゃ…」
「………!!」
アスカに言われ、そのタヌキは顔を覗かせるが、今更隠れても遅い。
それを指摘すると派手にこけ、周りにあった器具が全て転がってしまう。
「あんたなんなの…」
「う、うるせェ!人間っ!!…それとお前熱大丈夫か?」
「喋った…」
「ぎゃあああっ!!!」
「うるっさいよチョッパー!!!」
二足歩行する動物もそう珍しくはないが、喋る動物は珍しかった。
本来なら怖がるのはアスカなのだが、どうもあの動物の方がアスカを怖がっておりただ喋ったことに驚いただけでアスカ以上の驚きの声をあげてどこかへ消えてしまった。
逃げられたアスカは唖然としていると、すれ違いに騒ぐ動物を叱りながらおばあさんが部屋に入ってくる。
おばあさんは『ったく…!』と零しながら目を覚ましたアスカに気づき歩み寄る。
「熱ァ多少ひいたようだね小娘。ハッピーかい?」
「…あんた誰」
「38度2分…んん…まずまずだ。あたしゃ医者さ"Dr.くれは"『ドクトリーヌ』と呼びな!ヒーッヒッヒッヒ!」
ドクトリーヌと名乗ったおばあさんはアスカの額から指一本で熱を測る。
指一本で熱を測るドクトリーヌに多少の疑念を抱きながらも医者という事で多少は警戒を解いた。
「医者…ってことは此処は…」
「
若さの秘訣かい?」
「
聞いてない」
「ここはそうさ山の頂上にある城さね」
ここはどこかと聞いたのになぜか返ってきた言葉は若さの秘訣だった。
それを軽く流すとドクトリーヌはここは山の頂上だと教え、アスカはドクトリーヌの言葉に首を傾げ怪訝とさせる。
「山?私どうしてここにいるの?誰が連れてきたの?」
「なんだい、あんた全く覚えてないのかい?」
「船で眠った後から記憶がない…」
アスカが思い出すのは熱にうなされておりはっきりとしないが、ルフィを呼び、泣きそうなルフィを見たのが思い出す最後の記憶だった。
そんなアスカにドクトリーヌはここに来たときの事を教えてやる。
どうやらルフィとサンジがここまでアスカを背負って連れて来てくれたらしく、2人は凍傷と深い傷を負いアスカと共にここで治療したらしく、とりあえず2人が生きていると知りアスカは安堵した。
しかし安心して周りを見渡せる余裕が出来たのか、アスカは着ているパジャマが自分のではないことに気付く。
「こ、れ…っ」
「あぁ、汗だくだったから替えさせてもらったよ」
「―――!!」
ドクトリーヌの言葉にアスカは一瞬にして背筋を凍らせる。
あんなに熱で熱かった体が一気に冷えたように冷たくなった。
着替えさせた、という事はアスカの背中にある"天竜人の紋章"は絶対見たという事だろう。
その紋章の意味を知らない者はいない。
死んでも見られたくないものを見られアスカは体を震わせ、体を震わせるアスカをドクトリーヌは揺らがない感情で見下ろしていた。
「"世界貴族の奴隷"…か」
「ッ!!」
「"それ"はあたししか見てないから安心おし」
「………ッ」
「と言っても安心はできないか……この事を知ってるのはいるのかい?」
ドクトリーヌの言葉にアスカは顔を俯かせ頷いた。
アスカの背中にある紋章を知っているのはルフィだけ。
ドクトリーヌはあえてそれが誰なのかなど聞かず頷いたアスカに『そうかい』と呟きアスカの項垂れる頭を撫でる。
その手にアスカは怯えるようにビクリと肩を揺らしたが、ドクトリーヌの手が優しく撫でているのに気付けば入れていた力を抜いていく。
アスカは初めて、ルフィ達以外の人に対して警戒を解いた。
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