「……で、私もう退院してもいいでしょ?」
「
駄目だね」
ドクトリーヌに心を少しだけ開いたアスカは顔を上げる。
ご機嫌伺いに中々浮かべない笑顔で退院していいか聞くもあっさりと切り捨てられアスカはムスッと膨れツラを浮かべる。
そんなアスカにドクトリーヌはアスカのパジャマを捲りアスカ自身に腹を見せる。
見な、と言われたアスカは目線をドクトリーヌから自分のお腹へ向ければ本来何もないはずのお腹に見たことのない痣のようなものが浮かび上がっていた。
「見な。こいつが原因だよ。」
「何これ」
「"ケスチア"って虫にやられたのさ。高温多湿の密林に住んでる有毒のダニだ…コイツに刺されると刺し口から細菌が入っちまって体の中に5日間潜伏して人を苦しめ続ける。40度以下にゃ下がらない高熱・重感染・心筋炎・動脈炎・脳炎!!刺し口の進行からみて今日は感染から3日目ってとこか…並みの苦しみじゃなかったはずだが放っといても5日経てば楽になれた…ヒッヒッヒ…」
「……?」
「放っておいたらお前は2日後には死んでたからさ」
「!!」
アスカはドクトリーヌの宣告にぞくりと背筋を凍らせた。
ナミ達の判断がなければもしかしたら自分はあのまま死んだかもしれないのだと思うと余計に恐ろしく思ってしまう。
「"5日病"と言ってね…ケスチアは100年も前に絶滅したと聞いてたが…一応抗生剤を持ってて役に立ったよ。お前達は一体どこから来たんだい?"太古の島の密林を腹出して"散歩でもしてたってのかい?ヒッヒッヒ!まさかそんな事は…」
「あ…」
「心あたりがあんのかい…あきれた小娘だ…寝といで。まだ完璧に治療は済んでないんだ」
太古の島、密林、と言われ思いつくのは『リトルガーデン』しかなかった。
心当たりあるように声を零したアスカにドクトリーヌは呆れたようにため息をつき、起き上がっていたアスカをそのままベッドに戻す。
アスカは確実に死んでいたであろう病気から助けてくれたドクトリーヌにお礼を言うが、ドクトリーヌからはまだ治療が済んでいないと3日は大人しくしろと言われてしまった。
『3日』という言葉にアスカは『無理』と首を振る。
「それは出来ない。私達急いでるもん。」
「あたしの前から患者が消えるときはね…治るか死ぬかだ。…逃がしゃしないよ」
「……けち」
「ヒッヒッヒ!なんとでも言いな!」
アスカも首を縦振らないが、ドクトリーヌもまた同じく頷くことはない。
頑固なドクトリーヌにアスカはぷくー、と頬を膨らませドクトリーヌを睨みつけていたのだが、すっかり元気になったらしいルフィ達がタヌキ?と一緒に騒がしく部屋に入ってきた。
「ギャ―――!!!助けて!!!」
「待て肉っ!!!」
「待て待てルフィ!こいつは俺が調理する!どうせなら美味く食うべきだ!」
どうやら弱っていたのも僅かな時間だけらしく、目を覚めたのと同時に復活し暴れまわるルフィとサンジに流石のドクトリーヌも呆れてしまったらしい。
「ねえ、あのタヌキなに?霊が憑りついたヌイグルミ?生き物?」
アスカはずっと気になったことを聞いた。
目を覚ました時から思っていたが、何故あの生き物?が人の言葉をしゃべり、二足歩行で立っていられるのかアスカは疑問に思っていた。
その問いにドクトリーヌはにっと笑って見せる。
「あいつが何かって?名前はチョッパー…ただの青っ鼻のトナカイさ…」
「トナカイは喋らないけど…」
「ああそうさ…あいつはただのトナカイさ…ただ、あいつは"ヒトヒトの実"を食べて"人の能力"を持っちまっただけさ」
どうやらあのチョッパーと呼ばれたトナカイは悪魔の実を食べた生き物だという。
それを聞いてアスカは動物も悪魔の実を食べれば能力者となるのだと知り、そこにだけ驚いた。
その実は人と同じように喋れるし立っていられるし考えられるだけの悪魔の実らしい。
人間のアスカにとって不必要としか言いようがない実に、『そんな実があったんだ』と呟き、トナカイが人の言葉をしゃべり立つことに何とも思っていないようなアスカの様子にドクトリーヌは大きな声で笑った。
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