(86 / 293) ラビットガール (86)

敵に顔をそっくり真似ができる能力者がいると知り、ゾロの提案で全員左腕に包帯を巻く。
これで敵味方と見分けようとしていた。


「とにかくしっかり締めとけ。今回の相手は謎が多すぎる」

「なるほど」

「これを確認すれば仲間を疑わずにすむわね」

「そんなに似ちまうのか?その…"マネマネの実"で変身されちまうと…」


キッチンにいたため、唯一ボンクレーを見ていないサンジは疑問に思う。
それをウソップはどんなに似ているかを説明しており、それを横目にアスカはナミに結んでもらっていた。


「あんな奴が敵の中にいると分かると、うかつに単独行動もとれねェからな」


ゾロまでもそう言うのだからとサンジはゾロの言葉で納得する自分に腹立たしいものの、みんな疑問も持たない事からそうなのだろうと納得する。
全員結び終えると港へ付き、ルフィは包帯を巻いた腕を差し出し、それに続いてアスカも同じく差し出し、ナミやゾロ達も同じく包帯を巻いた腕を差し出す。
全員差し出されたその腕には仲間という証があり、ルフィはニカッと笑う。







アスカ達麦わらの一味は船を隠し上陸する。
しかしその中にルフィの姿はなく、ルフィは空腹に耐えきれなくなったのか遠いどこかにあるはずの飯屋の風に乗って漂う匂いに船をつけるよりも早く船から飛び出し街の中へと消えた。
それを見てアスカは『お前は犬か!』と遠くにあるはずの匂いを嗅ぎつけるルフィに心の中で突っ込んだ。
本来なら敵陣ともあろうこの国に単独行動をするルフィを追いかけ連れ戻したほうがいいとは思うのだが、ルフィの行動には慣れている一同は気にもせずまずはするべき準備を行おうとした。


「とりあえず変装ね。ビビが王女という事と、私達が海賊だって事がバレない変装しなきゃ。」

「んナミさーん!!だったらおれが行くよ〜!!」

「アホかあいつは…」

「…………」


変装と聞き、サンジはパッと目をハートにさせて自分が服を買いに行くと大急ぎで町へ向かった。
いつも通りのサンジであるが、小さくなったサンジの背にゾロは呟くが否定も肯定もしないアスカだった。
サンジはしばらくすると戻ってきた。
その手には大量の衣服が入っている袋が握られており、何故か機嫌がいい。
ナミ達のところに戻り、サンジは用意した衣服を男性陣には無造作に、女性陣にはそれぞれ決まっているらしい衣服を配る。
男性陣は普通の服なのだが、何故かアスカを除いたナミとビビには露出が高い服を渡されていた。


「素敵ッ!こういうの好きよ!私!!」

「でも…お使い頼んで何だけどサンジさんこれは庶民というより踊り娘の衣装よ…?」

「いいじゃないか!踊り娘だって庶民さ〜!要は王女と海賊だとバレなきゃいいんだろ?」

「でも砂漠を歩くには…」

「大丈夫疲れたらおれがだっこしてあげるよ!ホホ!!」


サンジは踊り子衣装を身に纏うナミとビビにいつも以上にハートを飛ばしていた。
しかしゾロ達の方を向き態度を180度変える。


「…しかし美女2人に比べておめェらときたら…海賊をカモフラージュしてもせいぜい盗賊だぞそりゃ!」

「てめェとどう違うんだよ」

「っていうかなんでアスカは踊り子じゃねぇんだ?」


あ?、とお互い睨み合う2人にウソップはアスカを見ながらサンジに零す。
ゾロにガンを飛ばしていたサンジはウソップの言葉にゾロからウソップへガン飛ばしの方向を変え、ウソップはサンジの睨みにビクッと肩を揺らす。
アスカに用意された衣装はナミやビビとは違い、ゾロ達と一緒の露出が低い衣服を着ていた。


「バッカ!もし踊り子の衣装を着たアスカちゃんに変な男が一目惚れしたらどう責任取るんだ?あ?」

「それはないと思うけど…」

「でも見てサンジ君、サンジ君の買ってきた服、大きくてアスカにはダボダボよ。まるで彼氏の服着ている可愛い彼女だわ。それはどう責任持つのかしら?」

「ナ、ナミさんそれはですね…」


ウソップに力説するサンジにアスカは一応突っ込みを入れたが、それよりもナミが目が笑っていない笑顔をサンジに向ける。
普段のサンジならメロメロなのだが今のナミはそんな余裕さえ命取りなぐらい怒っていた。
ナミが指さすアスカの恰好はゾロ達と同じである。
そこはいい。
ナミもサンジ同様アスカに変な虫がつかなければなんでもいい。
だが、注目はサンジのサイズを着ているという事である。
そこでなぜサンジのサイズだと分かるか、というと…まあ、そこは女の勘だおろう。
アスカはナミとサンジなんて気にも留めずさっきからウソップの横で寝転がり鼻を抑えてるチョッパーを覗き込む。


「チョッパー、どうしたの?」

「鼻が曲がりそうだっ!」

「鼻?」

「…そうかトニー君は鼻が利き過ぎるのね…"ナノハナ"は香水で有名な町なのよ」

「香水?」

「中には刺激の強いものもあるから…」

「これとか?」


アスカの後ろからビビ、ナミが歩みより、アスカと同じく鼻を押さえて仰向けに倒れるチョッパーを心配していた。
しかしチョッパーは動物のため人より匂いに敏感であるために、香水の香りに鼻が丘良くなっていたようである。
ビビの説明にアスカは後ろからシュッと何かが掛かったのを感じたのと同時に、甘い香りが強くなった。
動物系の能力者であるアスカも匂いには気づいてはいたが、元々人間であるアスカはチョッパーよりは耐え性はあるのかチョッパーのように鼻を押さえるような事はなかった。
しかし直に香水が掛かり、その香る匂いにアスカは眉を顰め、香水を掛けたであろう人へと振り返る。


「ナミ…」

「アスカもたまには女の子らしく香水を付けるのも良いと思うわ」

「女の子らしく…?」

「えぇ。ただ服だけを女の子らしくしたって味気ないじゃない」

「そういう問題?」

「そういう問題よ」


ナミの言葉に首を傾げるアスカにナミは笑みを浮かべる。
その時、誰かが海兵に追われているのに気づき、瓦礫の影から覗き込めば…追われているのは、自分達の船長だった。
しかもルフィは覗き込んでいるゾロを目ざとく見つけ、大きな声でゾロの名を叫んだ。
更にはゾロ達のところへと向かって来ているため海軍もこちらに向かって来ていた。
ルフィはゾロの『バカ…!お前…ッ一人で逃げろ!!』という怒りの声など無視し真っ直ぐこちらに走ってきていた。
焦っているうちに海兵達の隙間から体を煙にさせ追っていたスモーカーが現れる。


「お前達下がってろ!!」

「大佐!」

「逃がすかッ!!!"ホワイト・ブロー"」


腕を煙にさせ真っ直ぐ前を走るルフィを捕まえようとしたのを見て、アスカはハッとさせ足をウサギにし、飛び上がって今いた場所からルフィのところへと降りたち、こちらにまっすぐ向かってくる煙に向かってウサギを放つ。
相手が煙で簡単に倒せるとは思っていないが、少しの間だけ時間は稼げればいいと思った。


「丁度いい!一網打尽にしてやる!」


飛んでくるウサギによって、煙は散ったが、散った煙はすぐに形成されまた腕へと変わる。
1人だろうが2人だろうが煙の自然系相手に超人・動物系が相手になるわけがなく、スモーカーは2人を捕まえようとした。
しかし…



「"陽炎"!!!」




突然、ルフィとアスカに迫る煙を炎が止める。
突然の事でアスカもルフィも唖然とし、そして…少しずつ炎も消え現れたその背に2人は目を丸くした。


「え!?」

「…!」

「てめェか…」

「やめときな…お前は"煙"だろうがおれは"火"だ。おれとお前の能力じゃ勝負はつかねェよ」


炎の中から現れたその背…それは、2人に見覚えのある…そして懐かしい背だった。


「エース…!?」


ルフィがアスカの後ろから声を上げ、ルフィの声にアスカも我に返って改めてその背を見る。
エースと呼ばれた背の人物はゆっくりとルフィとアスカへと振り返り…


「変わらねェな、ルフィ…それにアスカも…」


2人を見てニヤリと笑った。

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