(89 / 293) ラビットガール (89)

ルフィはナミにエースから貰った紙を麦わらに引っ付けてもらっていた。
アスカは手首に巻き付いているブレスレット型の武器生物であるシュラハテンの中に収納しているため、これで無くさなくて済むと安心していた。
それからルフィ達は反乱軍がいる『ユバ』という町に向かう事にした。
反乱軍を倒すのかと思えば、ビビは彼らを止めに行くらしく、ビビ以外の一行にとったら未知な砂漠に足を踏み入れる。
しかし、その砂漠が人間の敵より何より強敵だった。


「アーー…アー…」

「あんまりアーアー言わないでよルフィ!!余計ダレちゃうじゃない…!」

「アーー……焼ける…汗も出ねェ……」


ルフィは拾った木を杖にしてダレていた。
砂漠は文字通り砂ばかりの景色で砂に足を取られ歩きずらい。
そして何よりその気温と照り付ける太陽が体力を更に削っていく。
陸についた時カンフージュゴンと会ってしまいルフィがカンフージュゴンに勝ってしまったために食料が減ってしまったアクシデントを除けば順調に進んではいるのだが…やはり初めて砂漠を経験するルフィ達にとって太陽の光はいつも以上に辛かった。


「おれダメだ暑いの苦手だ…寒いのは平気なのにな…」

「おめェがモコモコしてっからだ。その着ぐるみ脱いだらどうだ?」

「この野郎!!トナカイをバカにするのかァ!!!」

「ギャーーー化け物ーーっ!!」

「おいチョッパー!デカくなるな!引っ張ってやんねェぞ!!」


チョッパーは人間ではなくトナカイである。
特にチョッパーは冬島の出身なため暑さには滅法弱い。
そのためチョッパーは全身毛皮を着ているようなものなので余計ばててるのだろう。
ぐったりとしたチョッパーを板に乗せ運んでいるのはゾロだった。
アスカは大蛇となったシュラハテンに乗りながらゾロの底なしの体力に幼馴染と同じものを見た。
アスカも最初は普通に砂漠を歩いていたが、いくらウサギの能力を得てしてもバテるものはバテる。
体調が戻ったばかりのアスカに砂漠を歩かせるなどナミとサンジがさせるわけがなく…2人がアスカを背負って運ぶという過保護さを見せているとシュラハテンが名乗りだしたのだ。
ばててゾロに引っ張ってもらってるチョッパーが可哀相でアスカはシュラハテンにチョッパーに近づくよう指示する。


「ねェチョッパー、シュラハテンの中に入れば涼しいみたいだけど…入る?」

「え?シュラハテンの中って…」


シュラハテンが頭をチョッパーの方へ近づけるのを見てウソップからは大蛇が弱っているトナカイを捕食する光景にしか見えなかった。
しかしそれ以上にアスカの言葉にチョッパーとウソップとゾロが一斉に大蛇を見上げる。
シュラハテンは三人の望むように目を細めゆっくりと大きく口を開けて見せ、そんなシュラハテンに三人はチョッパーがヘビに食われるのを想像し顔を青くし、チョッパーは誰よりも顔を真っ青にしながら首を振って断った。


「い、いや…遠慮するよ…」

「え?そう?じゃぁウソップ入る?」

「いえ、結構です。」

「??」

「っていうかそいつの中に入ったら一巻の終わりだろ…」


チョッパーが断ったからとついでにウソップにも聞いた。
が、ウソップからはなぜか丁寧語で断られ、アスカは何故丁寧語なのかという部分だけに疑問視した。
断れ口を閉じた大蛇を見ながらゾロはポツリと呟き、その呟きが聞こえたのかシュラハテンはゾロの方を向く。


≪失礼な男じゃ…妾の中は快適じゃぞ?まさに楽園じゃ!"くうらぁ"という物も装備され海と青空を眺めながら"こーひー"なる物を飲む…そうしている内にアラバスタという所へ着いている…どうじゃ?それでも妾の中に入りたくないと抜かすか?≫

「「「あぁ、入りたくない。」」」

≪んなッ…!!?≫


シュラハテンの体内はどうやら異空間らしい。
こんな熱い炎天下の中歩かなくても済むと言われても口を大きく開く大蛇を見れば誰でも断るだろう。
三人の返答にシュラハテンはショックを受けたようによろけるが、ちゃんとアスカは落とさないように微かな動きだった。


「第一、そんなに快適ならアスカを中に居れりゃいいだろ…アスカはお前の大事な主なんだろ?」

「それもそうだ」


若干よろける大蛇にゾロはふと思った事を零した。
それほど快適に過ごせるならば、主と認めたアスカをその体内に入れればいいのではないだろうか。
ゾロの呟きにウソップも同意したように頷くのだが、シュラハテンはゾロの言葉に目線をそっとゾロから逸らす。


≪……主にそんな危険な事させれぬわ…≫

「いま危険って言ったか!?」

「やっぱ危ないんじゃねェーかッ!!!」

≪まァ…一か八かだの……下手すれば一生妾の中で生きる事になる≫


嘘か本当か…分からないがシュラハテンの言葉を聞いて更にゾロ達三人は余計に拒絶する。
最初に話しかけたアスカはというと…シュラハテンの上に乗りながらすでに飽きており、三人と一匹の会話を耳には入れているが入ろうともしない。
それからサギという名前通りの人を騙して荷物を奪う鳥に騙され食料を含んだ荷物を奪われ、それを追いかけて戻ってきたルフィがラクダと共に巨大なワニから逃げて来て…と次から次へとトラブルに巻き込まれ、荷物はほぼなくなり新しくルフィと一緒に逃げてきた女好きのラクダが加わりアクシデントも多々ありながらもついにユバにつく。
だがユバは砂嵐に襲われており見るも無残な姿になっていた。
オアシスはなく、砂で埋め尽くされていた。
人の気配はなく、無人だと思っていた。
しかし、一人だけ穴を掘り続けていた。
その人物はビビを幼い頃から知っている人物だった。

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