麦わら一味がユバを離れレインベースへとついた。
まずは砂漠には必要な水を買いにルフィ、ウソップ、アスカが水を売っている店に向かった。
アスカは主にルフィのお目付け役でついてきていた。
「水売ってる店ってどこだ!?」
「あそこじゃない?ビビが言うには大抵の飲食店に売ってるって言ってたし、あそこ水マーク書いてあるし」
「あそこか!!うおーーっ!!水が飲めるぞウソップ!アスカ!」
「みドゥー!」
「あんた達煩い…」
ビビからの情報を頼りに水を調達するためルフィとウソップはテンションを高くしたままアスカが指さした店へと乗り込んでいく。
よほど喉が渇いていたのか滑り込むように店に入っていく2人の叫びにアスカは思わず耳に指を突っ込んだ。
アスカも後に続き店に入ると聞き慣れた声にピタリと足を止めてしまう。
「―――そもそもこの国は何か匂う…!何か後ろにでかい影を感じてならねェ」
その声の方へ目をやれば以前ルフィを捕まえようとした海軍大佐のスモーカーがいた。
その隣には部下であろう眼鏡をかけゾロのように日本刀を持つ女の人もおり、アスカは2人の姿を見て一瞬動きを止めたが、ここで動かないのもバレて危険だと思ったのかゆっくりと、しかし怪しまれないようカウンターへ移動しルフィとウソップの隣に座り自分も水を頼む。
緊張も加わり喉の渇きが強かった。
「おばちゃん水ーー!!」
「水をタルでくれ!タルで5つ!」
男2人はまだスモーカーと部下の女…たしぎに気づかず呑気に水を飲んでいた。
しかし…
「では例の犯罪組織とクロコダイルがやはり?」
「さァな…麦わらの一味と王女の関連もさっぱりつながらねェ。こういう時は何か動き出すまでじっと待つしかねェんだ…」
そういいスモーカーが騒がしい隣をチラリと見た瞬間…隣の男達――ルフィとウソップもスモーカーに気づき含んでいた水をよりにもよってスモーカーとたしぎに向かって思いっきり吹き出した。
アスカはスモーカーに水を吹き出した2人に『あーあ…やっちゃったよ…』と顔を手で覆った。
ルフィとウソップは顔中どころか体中濡らすスモーカーとたしぎの姿に慌てて用意してもらったタル5つのうち三つを持ちそのまま店から出ていき二人から逃げてる。
「あいつら…!!追うぞたしぎ!!!海兵も集めろ!!」
ぎゃーぎゃーと騒ぎながらスモーカーから逃げる2人を、スモーカーも追いかけて店を出る。
騒いで逃げたのがウソップとルフィだったためかアスカに気づく事はなく、アスカはスモーカーにバレないようそっぽを向いて顔を見せないようにしていた。
たしぎは上司からの命令に慌てて懐からサイフを取り出す。
「は、はいッ!!あッ!あのッ!!おいくらですか!?」
「知り合いならさっき水持ってった子達の分も払っとくれよ!!」
「は…はいご迷惑を…」
「あ、いいです。あれらのは私が払いますから」
「えッ?」
すっかり存在を忘れられていたアスカはルフィ達の分まで払おうとしたたぎしの横に立ちお金を置く。
たしぎとの面識はないための行動で、当然アスカの事を知らないたぎしは目を丸くし、アスカを見る。
「あ、あなたは…?」
「彼らの代金は私が払います…私達が平穏に暮らせるのは貴方達、海軍のおかげですからね…これぐらい払わせてください」
何のアクションもないことにほっとしながらアスカは一生懸命顔を引き攣る勢いで爽やかな笑顔を張り付き一般市民を演じた。
今のアスカは海賊ではなく、アラバスタの国民だ。
たぎしもアスカの痙攣寸前の笑顔を見て信じたのかお礼を言ってスモーカーを追いかけた。
(良かった…あの人私を知らないみたい…)
アスカはたしぎが居なくなったのを確認した後、本気で痙攣しかけている顔から笑顔を消し、いつもの無表情に戻り、店主にタル5つとルフィ達が飲んだ水、そしてスモーカー達が飲食した料金を支払い、ルフィとウソップが慌てすぎて全部持ち切れなかったタル2つを持って店を出た。
「さて…ルフィ達はどこかな…」
アスカは能力を出さなければ普通の少女である。
そのため耳としっぽを出して能力を発動させ腕に二つのタルを持って屋根の上へと飛び乗った。
ひょいっ、と軽々とタル2つを持って屋根に飛び乗った少女に周りは驚いた声を上げたが、アスカは気にもせず幼馴染と仲間を探しに走り出す。
「いた」
「おー!!アスカ!!」
探すと言っても騒がしいところへ行けばいいだけの事だから簡単だった。
待っていた仲間も一緒に追われているのを上から見てアスカはまたルフィが巻き込んだな、と思いひょいひょいと障害物を乗り越えあっという間に仲間達の近くまで近づき建物の上からぶつからないように計算して飛び降りる。
隣に降りてきた幼馴染にルフィは憂いそうな顔をし、アスカはムスッとした顔をルフィに向けた。
「私を置いていくな、バカ。」
アスカの言葉にルフィは『すまんすまん!』と呑気に返し、アスカの姿にナミとサンジがホッと胸を撫で下ろした。
「アスカ!無事だったのね!!」
「うん、何とか」
「ほら!おれの言った通りだったろ!?アスカなら大丈夫だって!」
「バカかクソゴム!もしもって事があるだろ!!アスカちゃんはな!お前ら男共と違ってか弱いんだぞ!!」
逃げてきたルフィとウソップの姿はあるがアスカの姿がない事に過保護組のナミとサンジは心底心配していたらしい。
相変わらずな2人の心配性にアスカは肩を竦める。
アスカは仲間と合流しなんとなく仲間を見回すと一人足りなかった。
1人…とはチョッパーの姿だった。
傍にいたナミに『チョッパーは?』と問いかければどうやらトイレに行っているようで、ナミはチョッパーを心配し『チョッパー、大丈夫かしら』と零す。
そんなナミにアスカはタル二つ肩に抱えながら『大丈夫じゃない?』とケロッとした顔で返し、そう何ともないように返されればナミも何だかそう思えてきたのか『そう、よね…』と呟いた。
「アスカちゃんも戻ってきたが…ちっとばかしマズイんじゃねェか!?町の中を走るとB・Wに見つかっちまう!!」
「もう手遅れだと思うぜ」
サンジが騒ぎになっているのにそうつぶやくとゾロがクイッと顎である場所を指す。
その指した方を見ればそこには町人や旅人に扮した男達がおり、こちらを見張るような目からしてB・Wなのは見て取れる。
「じゃ行こう!!」
「え…」
「クロコダイルのとこだ!ビビ!!」
「―――!!うん!あそこに…!!ワニの屋根の建物が見えるでしょ!?あれがクロコダイルの経営するカジノ"レインディナーズ"!!」
この騒動ですでに海軍にもB・Wにも見つかっており、逃げるしかないのなら…とルフィは相変わらず斜め上の思考をしていた。
ビビはルフィの言葉に目を丸くしていたが強く頷き一番目立っているカジノを指さした。
そこに、クロコダイルがいるという。
「散った方がよさそうだぜ」
「そうだな」
「よしっ!!」
「じゃあ後で…!!"ワニの家"で会おうっ!!!」
サンジは後ろを見ながらそう零し、サンジの提案にルフィ達はバラバラに逃げることにした。
アスカはルフィの決定に能力で長身ウサギを出し、自分の肩に担いでいた水を預ける。
「ルフィ、ウソップ、アレクサンドラとリリネットに水を預けて。逃げながらだったら水が足手まといだしせっかく買ったんだから台無しにしたくないし。」
「おう!」
「え…え?なんだこいつら…え?なんだその名前…!」
もう二羽、ウサギを出現させ、ルフィにはアレクサンドラを、ウソップにはリリネットを近寄らせる。
ルフィは慣れているため長身ウサギに水を二つ預けたが、ウソップは初めてアスカ自身がなったウサギは初めて見るためギョッとさせ困惑した。
ウサギのくせに立派な名前もまた困惑の原因である。
それはウソップだけではなく傍にいたナミ達もそう思っており、ゾロに至っては『なんだよそのネーミングセンス…』とぽつりと零すほどであった。
中々渡す気配のないウソップ『早く!』と苛立った声で急かせば、その声で我に返ったウソップは慌てて手を差し出しているリリネットと呼ばれた強面長身ウサギに水を恐る恐る差しだす。
水が入ったタルを受け取ったリリネットとアレクサンドラは主であるアスカに『ゴフッ!』と鳴きながら頭を下げ街中に消えた。
長身ウサギの姿に町人達が驚きの声を上げているのを聞きながらアスカはウサギ達を見送り、そして、麦わらの一味は別れて逃げる。
アスカは途中までゾロとビビと一緒に逃げていたが、先回りしていた海兵達が道を塞ぎアスカがビビとゾロを先に行かせる。
あの厄介なスモーカーさせいなければアスカに勝敗は上がり、海兵達は一瞬にして伸される。
「こんなもんかな…」
耳やしっぽを出しっぱでアスカは海兵達を伸した後、砂や誇りを払うように手を叩く。
ゾロをビビの護衛にと任せたが少し不安があった。
それはゾロの方向音痴である。
アスカはゾロの力は自分以上だと思っており、実力は信頼している。
が、方向感覚だけは信頼は一切していない。
きっとそれはゾロ以外の仲間全員が同じことを思っているのだろう。
アスカは海兵達を伸した後、ゾロ達が向かった方へと走り出す。
するとゾロとビビとの合流ではなく、何故か広間に出てしまいナミとウソップがカジノの前にB・Wに待ち伏せされ銃を向けられていた所に遭遇し、アスカの走る速さが上がる。
咄嗟に足を出しB・Wの雑魚どもを伸すが何故か同じ方向へと走っていたはずの反対側にゾロも同じようく蹴っていたためにB・Wは挟み撃ちにあってしまった。
ウソップとナミはゾロとアスカの登場に驚きながらも安堵の息をついた。
「ゾロ!アスカ!!」
「ゾロ!アスカ!!あんた達ビビと一緒じゃなかったの!!?」
「ああ、先行かせたんだがまだ着いてねェのか!?」
「っていうかあんたなんで私と反対方向にいたわけ!?」
「あ?お前の方がなんでおれと反対方向にいんだよ!なんだ、お前…
迷子か?」
「それはこっちのセリフだよ!!」
アスカの予感は当たった。
ゾロはビビを先に行かせて全くアスカとは違う方向から姿を現した。
この状況下でビビを先に行かせたゾロの判断は間違っているとは言わない。
ビビもルフィ達のように力は強くはないが、1人で敵陣に身を置きエージェントとしてやっていたのだから弱くはない。
だが、1人で行かせたのが間違いだとアスカは思う。
しかも方向音痴に方向音痴と言われアスカは無駄だと知りながらもゾロの腹に拳を何度も放つ。
勿論手加減して能力のない拳のため痛みのダメージは0ポイントである。
「いてェって…おいアスカ、痛いって………だからいてェって……いてェって言ってんだろ!なんだよ!アスカ!なんか言えよ!!こえェんだよてめェの無言は!!」
「………」
「ほら!あんたたちジャレてないで中に入るわよ!!もしかしたらビビは中にいるかもしれないし!!」
「いや、ジャレてねェよ!どう見たらそう見えるんだ!?おれが一方的に殴られてるようにしか見えねェだろ!?」
「じゃあイチャついてる?お前度胸あるよなァ…ルフィ相手に女を寝取るとか…頼むからお前らの泥沼関係におれを巻き込むんじゃねェぞ」
「あら三角関係?私認めないわよ?あんただけじゃなくてあんたら二人とも認めないわよ?」
「だーかーらーー!!」
ポスポスと何度も腹を叩くアスカに最初ゾロはジャレてるのかと思った。
が、あまりにもしつこく無言で叩くためゾロはいい加減イライラし威力ゼロのアスカの拳を止めに入る。
アスカの両手首を掴んで止めさせるもアスカはムスッと頬を膨らませゾロを睨むだけでうんともすんとも言わない。
それがまた恐怖を煽った。
栄養失調やストレスのせいで成長が著しく遅いアスカと普通の男性よりも鍛えているゾロは並ぶと兄と妹である。
傍から見れば妹のアスカが拗ねて兄のゾロに八つ当たりしているようにしか見えないのだが、ゾロからしたら理由も分からず殴られてるという理不尽でしかなく、ほのぼのとするウソップとナミに突っ込みを入れる。
するとタイミングよくルフィが現れた。
…のだが…
「ルフィ!!」
「おい!モクモクも一緒だぞ…!!」
「おいおいまたかよ…」
「ルフィ、また余計なモノ連れきて…」
「おォ!!行くぞみんな!!中に走れ!走れ!待ってろ!!クロコダイル〜〜ッ!!!」
ルフィはまたスモーカーを引き連れてきた。
ルフィの姿に一瞬アスカはホッとしかけたが、その後ろから追いかけてくるスモーカーにアスカはルフィを呆れた顔で見た。
そんな幼馴染の心境など余所にルフィは真っ直ぐクロコダイルだけを見て進み、アスカは自分を通り越して先に建物に入ろうとするルフィに肩を竦めて続く。
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