(93 / 293) ラビットガール (93)

ガシャン、と思い音をさせ、檻の扉が閉まる。


「こうみょうなわなだ」

「ああしょうがなかった」

「敵の思うツボじゃない!!避けられた罠よ!バッッカじゃないの!!?あんた達!!!」

「なんでこうも簡単に引っかかっちゃったんだろ…」


アスカはナミに殴られ叱られているウソップとルフィを横目で見つつ額に手を当て呆れたようにため息をつく。
あれから突っ込むようにカジノへ入ったアスカ達だったが、どういう訳かVIPルームへ案内された。
しかしそれだけならまだマシで、突き当りで左右に別れており、看板に『←VIP / 海賊→』と書かれておりルフィは迷うことなく自分達が海賊だからという理由で右へ曲がった。
どっちにしろどっちも罠だと思っていたアスカはルフィに続いたのだがそこが抜け落ちた先が檻の中だったという初歩的な罠に引っかかり少し自分が恥ずかしく思う。
アスカは立っていても仕方ないと少し離れたスモーカーの横に座って成り行きを見ていた。


「それよりおれさっきから力が抜けて…」

「何だハラでも減ったのか?」


膝を立て肘をつくアスカは何となく幼馴染の後姿を見つめる。
するとルフィが檻に触れた途端ガクリと肩が下がり気迫もなくなり、ウソップは空腹なのかと聞いた。
その瞬間アスカと離れて座っていたスモーカーが動く。
アスカはスモーカーが動いたのを視界の端に映りハッとさせルフィの名前を叫んだ。


「「ルフィ!」」


それはアスカだけではなく、ゾロも気づいていたようで2人の声が重なった。
ゾロとアスカにルフィが呼ばれ振り向くとスモーカーが十手ルフィに向け、ルフィは勢いよく転がり柵に当たる。
そしてスモーカーは十手をルフィの腹に十手を置く。
それにウソップは慌てるがルフィは力が出ないとだらけてしまう。


「…なんだ…?力が入らねェ…!!……水に落ちた時みてェに…」

「…ああそうだろうな…」

「な…何だ何だてめェルフィに何をした!!?」

「…それ…"海楼石"ね」

「…!」


ルフィに攻撃したという事からゾロは刀を鞘から弾き、アスカは椅子から立ち上がっていつでも反撃できるよう警戒を高める。
しかしスモーカーはルフィの腹に十手を置いただけで何もせず、アスカはルフィが力が出ないという言葉に全てを察し、思わず首へ手を伸ばす。
スモーカーはアスカの呟きにルフィからアスカへ目をやり、若干目を丸くさせた。


「知っていたのか」

「聞いたことあるから」


東の海は4つの海の中で一番平和な海で、海賊の懸賞金の額も少ない。
だから能力者自体珍しく、その弱点である海楼石の名前もあまり広まっていない。
だから東の海出身である海賊の一人、アスカが知っていることに驚いていた。
アスカはスモーカーに問われ咄嗟に嘘をつく。
スモーカーは表情はないが何故か首元を擦っているアスカに怪訝とさせたが問う事もなく『そうか』と納得させた。


「そのあんたの"十手"の先端…その"海楼石"が仕込んであるんでしょ?それにこの檻の柵も"海楼石"で出来てるってわけよね…さっきルフィが触って力が抜かれたのもそのせい……でしょう?」


アスカは先ほど檻の柵に触れて力が出なかったルフィを思い出しそう結論付ける。
そのアスカの言葉にスモーカーは訂正もせず頷くだけだったが、アスカにはそれで充分だった。
2人のやりとりを聞いていたナミ達は"海楼石"自体初めて聞いたのかアスカに首を傾げながら問いかけた。


「その…"海楼石"?っていうのって…何?なんで力が抜けるの?」

「"海楼石"っていうのはまだ謎の多い鉱物だって聞いたわ…ある海域でしか取れなくて詳しい事は今でも謎なんだって…ただ、"海楼石"で分かっているのはその石が海と同じエネギーを持っていて、それに触れた能力者は海に入ったように体に力が入らないの……まァ、"海"が固形化したって考えた方が分かりやすいかも。」

「それでルフィが弱っちまうのか…!!」

「…じゃあこの柵も同じ物で……」

「そうでなきゃ私達は今頃檻を壊して出てるし、"ケムリン"も易々と私達を見逃すはずないでしょ?腐っても海兵なんだし」

「…………」


アスカの言葉、そして呼び方にスモーカーは睨み付ける。
しかしアスカもルフィを押さえつけられ海楼石の檻に入れられているせいか苛立っておりスモーカーを睨み返す。
ゾロも同じことを思っているのか刀から手を放さず、一触即発な状況に一般人を自称しているウソップとナミは頭を抱える。


「お、おいおい!アスカ!ゾロ!!やめろって!!」

「そうよ!こんな所で争ったって何もならないわ!」


今こんな狭いところで命のやりとりをすれば一番の被害を受けるのは自分達である。
何とか止めようとウソップとナミはアスカとゾロを宥めようとした。
その時…


「その通りさ、やめたまえ。共に死に行くもの同士…仲良くやればいいじゃねェか……!」


スモーカーと睨み合い、ウソップとナミに止められていた時、低い声が響き渡った。
その声に全員が檻の外へ目をやれば、そこにには二人の男が居た。
一人は七武海のクロコダイル。
そしてもう一人はアスカといい勝負な無表情の細身の男。
その男はクロコダイルの後ろに控えてじっと檻を見つめていた。
その瞳からは何も感じられない。


「クロコダイル………!!!」

「オーオー…噂通りの野犬だなスモーカー君。おれを最初から味方と思ってくれてねェようだ。だがそう…そりゃ正解だ。てめェにゃ"事故死"してもらうことにしよう!"麦わら"って小物相手によく戦ったと政府には報告しておくさ!!」


クロコダイルの出現にスモーカーはギロッと睨みつけるが、立場的に上なのはクロコダイルだったため、クロコダイルは余裕に流す。
元々檻にいなくてもクロコダイルならばスモーカーの睨みを流すであろうが、ルフィはクロコダイルの姿に力が抜けてだるくなっていた身体を起こし声をあげる。
その時柵に触れた為また力なく倒れる。
アスカはクロコダイルの事はそれほど興味がないのか椅子に座り直し周りを冷静に見渡していた。

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