海軍は追ってはこないが、時間は迫っていた。
「おい!!もしかしてこのまま走ってアルバーナへ行くなんてことねェよな!!」
「そうだ"マツゲ"!"マツゲ"はどこに行ったの!?」
「この町に馬小屋とかあったぞ!馬もらおう!!」
「でも町には海軍が…!」
「ご安心あれ!…前を見な!」
走って街を出るのはいいが、もしかしてこのまま走って砂漠を抜けるとか言い出さないかとウソップがそう切に願いながら聞く。
そのウソップの言葉にナミは途中で出会ったエロ思考を持つラクダ…ナミ命名『マツゲ』の存在を思い出す。
周りを見てもマツゲの姿はなく、ルフィは途中に馬小屋があったと思い出したが、サンジがみんなに前を見るよう言う。
その通りに前を見ると一匹の大きなカニがいた。
「あっ!!いたぞ!!おーーい!!みんなーー!!」
「チョッパー!!」
丁度街を出ていた時にタイミングよく現れたそのカニの上にはチョッパーといつの間にかいなくなっていたマツゲも乗っており、チョッパーはどうやらサンジの指示で香水をつけたナミの匂いを辿ってここまで迎えに来てくれたようである。
アスカ達はカニが来たこともだが、その大きさに驚きが隠せなかった。
ビビ曰く、このカニは"ヒッコシクラブ"と呼ばれており、いつも砂に潜っていてアラバスタでは幻のカニとも呼ばれているらしい。
そのカニが今、アスカ達の前にキキーッと砂を撒き散らしながら止まる。
そのでかさにアスカは口を開けて見上げていた。
「乗ってくれよ!!」
「乗れるのかァ!?うほーっ!!」
「またスゲーの連れてきたな」
「顔がでもちょっとヤラシーわよ!?」
「"マツゲ"の友達なんだ!!マツゲはこの町の生まれでこの辺には友達がいっぱいいるんだ!!…エロいけど」
「コイツ結構速ェんじゃねェか!?」
「類は友を呼ぶと言うか…なんというか…」
このカニはどうやらマツゲの友達だといい、やはりこの友達もエロ仲間だという。
それに納得するアスカの呟きにカニはアスカを目を向ける。
いきなり目線を自分に向けるカニにアスカは思わず怖くて一歩後ろに下がる。
すると巨大なカニは大きなハサミを上下に上げたり下がったりし、妙な動きをし始めた。
「え?な、何?なんなの?何やってんの??」
目線はこちらに固定をしているためアスカに向けての動きなのだろう事はうかがえるが、何をしているのか全く分からず、アスカは困惑しながらチョッパーを見た。
助けを求めるかのような目線を向けるアスカの問いに、チョッパーはそっとアスカから目をそらし言い難そうに零す。
「…………け、"結婚してくれー!!"って…言ってる…かな?」
「けッ…!!?」
「「「け、け…けけけ…結婚ーーー!!!???」」」
チョッパーの翻訳曰く…この動きは求愛ダンスだという。
それを知ったアスカは驚きのあまり言葉を失くし、チョッパーの言葉に皆も驚愕する。
一番この言葉に反応したのはナミとサンジだった。
「な…!なな!な、何言ってやがるこのクソカニ!!!料理にして食うぞ!!!」
「そうよ!!カニなんかにアスカはあげないわよ!!カニなんかにッ!!!」
「ハハハ!!カニからの求婚かよ!!」
「「笑い事じゃ(ねぇよ)(ない)!!!」」
衝撃過ぎてタバコを手にするサンジの手が震えていた。
ナミもグッと拳を握りカニを睨みつけていた。
笑い出したゾロの声に自称アスカの保護者である2人は力の限りゾロの頭を殴り、ゾロはたんこぶを二つ頭に作る事になってしまった。
「と、とにかく…乗りましょうか…」
幻だと言われているカニを見ることが出来る事は幸運なのだろうとビビは思う。
そして幻のカニの求愛ダンスを踊る姿も貴重すぎるのだとも。
だが、その対象がアスカだと思うと素直に喜べないのも現状だった。
同情めいた目で見ながらビビはそう提案し、それにアスカも頷きカニに乗ろうとする。
カニに求愛をされた事がショックなのかその口は閉ざされていた。
「みんな早く!」
「お、おう…」
カニに乗り込むときもじっとねっとりとしたいやらしい目で見つめられ、アスカは必死にカニと目と目を合わさないように頑張った。
中々乗り込まない仲間にアスカは急かすように声をあげ、アスカの迫力にみんな急いでカニに乗る。
それでもまだカニの目線がしつこく、アスカはカニから避けるようにゾロの背中に移動し、隠れる。
実はゾロが笑った事に根に持っていたらしい。
「よーーし!行くぞーーーッ!!出発!!!」
チョッパーの掛け声で進む。
だが…
「――――ッあ…!!?」
「え!!」
ビビの体がふわりと浮かんだ。
ビビの声で全員が振り返ればビビの体にフックのようなものがかけられ、ビビはそれに引っかかる形で体を浮かせていた。
そのフックの先は砂の塊になっており、その更に先を見れば人影が二つあった。
「あいつだ!!!…こいつ!!!」
クロコダイルの姿を見た瞬間、ルフィが素早くビビをフックから助けるのだが、自分からフックに引っかかり引っ張り込まれてしまう。
アスカは引っ張られる幼馴染に慌てて手を伸ばす。
「!―――ッルフィ!!!」
だがアスカの手は届かず空を切る事になり、それでもアスカは諦めず駆け寄ろうとした。
だが、これ以上進めばカニから落ちると気づいたサンジがアスカの腰に腕を回し引き留め、それでもやはりアスカはルフィへ手を伸ばした。
「前ら先に行け!!おれ1人でいい!!ちゃんと送り届けろよ!!ビビを宮殿までちゃんと!!」
ルフィは手を伸ばすアスカに腕を伸ばすわけでもなく仲間達を先に行かせる選択肢を選ぶ。
アスカはあっという間に消えた幼馴染に唖然としており背後でゾロがそのまま進むよう指示をしている声がするもアスカは聞こえていなかった。
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