真由美は今横に秋斗、後ろにウティルというメンバ−で薄暗い研究室に来ている。
真由美自身も研究員の端くれだから平気なのだが…
(こうやって研究材料とか研究器具とかあったらこう…副局長の血が騒ぐというか…ものすっごく何か造りたい…)
根っからの研究者な真由美はウズウズして仕方なかった。
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「ザエルアポロ」
「これは…我が王…いかがしました?このような場所に…」
「姉さんに父と母を会わせに来ただけだ、そう畏まるな。」
「姉さん…?」
ザエルアポロと呼ばれたピンクの髪の男は王の横にいる子供を見る。
「この者が王の姉君で?」
「あぁ」
「しかし…この霊圧は死神ではありませんか」
「姉さんは死神だ。」
「!!……なるほど…」
何が成る程なんだ、と真由美はザエルアポロの気持ちの悪い目線に顔を背ける。
彼の目線は実験動物を見る目だ。
自分もたまに同僚をそういう目で見るので分かる。
「…ザエルアポロ、もし姉さんを実験対象にしたら…分かるな?」
「承知しております…」
承知してると言いつつ顔は不満顔だった。
秋斗はザエルアポロに父と母がいるところまで案内させるよう命令する。
そこは地下だった。
薄暗い場所からさらに暗く、明かりがなければ何も見えない。
真由美はこけると危ないからと秋斗に抱き上げられる。
正直恥ずかしい。
だがザエルアポロは気にせず明かりをつけて先に進む。
明かりをつけてもまだ慣れない目には何も見えない…
****************
暫らく長い階段を下った。
そして奥に光が漏れて見える。
何処かの部屋に繋がっていたらしい。
ザエルアポロがドアを開きその後秋斗とウティルが続く。
真由美は秋斗に降ろされながら目の前の光景に絶句する。
「……なに、よ…これ…」
目の前にはホルマリン漬けにされた父と母の首があった…
一つの容器に一つずつ入れられている首を見つめる。
容器には空気を入れられているのかボコボコと音を立てていた。
フラ、と真由美は立ちくらみがしてふらつく。
「我が君!」
倒れる前にウティルに支えられゆっくりと座る。
それでもウティルに支えられないと床に倒れてしまう。
真由美はただ首だけになった父と母を見つめていた。
「ぐっ!!」
ガッ、と重い音がして何かがぶつかる音がする。
そちらの方を向くとウティルが倒れていた。
「必要な時以外は姉さんに触れる事は禁じていたはずだ」
「…申し訳…ありません…」
ウティルは殴られたところを押さえ立ち上がり秋斗に跪く。
真由美は秋斗に支えられながらウティルから父と母だったものを見る。
「秋斗…コレは…なに…」
「何って…父さんと母さんだよ、姉さん」
「父さんと母さんって…ただの首じゃない…」
「うん、まだ小さかった僕には首が精一杯だったからね。」
え…、とそこで真由美は初めて秋斗の顔をみる。
秋斗は真由美を見つめ、笑っていた。
「僕だけでも良かったんだけどやっぱり姉さんが寂しがるかなって思って二人を連れて来たんだ。」
「意味がわかんないんだけど…」
「僕は死ぬ前に二人の首を切断したんだよ。」
「な…」
「その後僕も二人の首を持って死んだんだ。ここに来たときも二人の首を持ってたから此処に仕舞っておいたんだよ。」
姉さんと会わせる為にちゃんと保存しておいたからその時のままだよ。と残酷な事を無垢な笑顔で言う弟に真由美は震えが止まらなかった。
「なんで殺したの…!?」
「だって家族なら一人でも欠けたら駄目じゃない?なのにあの二人は犯人を社会的に復讐するだけで姉さんを忘れようとしたんだ。それは許されない…」
「それだけのために母さんと父さんを殺したのか!!!」
行き成り怒鳴り始める姉を見て秋斗は首を傾げる。
「なんで怒るの?姉さんだって父さん達に会いたいでしょ?此処に来ればいつでも会えるよ?」
「えぇ、そうね。私も父さん達に会いたいと思ってた!でも…こんな…こんな形で会いたいとは思わない!!!」
「?だって姉さんも僕も歳をとらないから丁度いいじゃない…それにこっちの方が姉さんを独り占めできるし、ね?」
「……あんた…」
「あぁ、それとも浦原喜助がいないから不満なの?」
真由美は目を丸くして秋斗を凝視する。
そんな姉に秋斗は誰もが見惚れる笑みを浮かべる。
「大丈夫、浦原喜助ももうすぐここに…」
秋斗が言い終わる前にパシーンと乾いた音が部屋に響く。
真由美が秋斗の頬を叩いたのだ。
その真由美の行動にウティルもザエルアポロも唖然とする。
「あんた…お父様に手を出したら許さないから」
真由美は声を低くし秋斗を睨みつける。
秋斗は叩かれたまま呆然としていた。
だが我に返り真由美へと手を伸ばすが…
「ねえさ…」
「私に触らないで!!!」
真由美に拒絶されてしまう。
そのまま真由美は部屋を出て行き、ウティルが後を追った。
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