(129 / 158) 浦原娘主 (129)

アシドと別れ、一護たちは傷心も後に織姫を救出するため足を進める。
一護達の中でアシドと長い時間を過ごしたルキアは涙を流すが目的を思い出し、泣き叫びたいのを我慢し前を向く。

一護と恋次は藍染達が住まう虚夜宮の壁を2人で壊し、あたりに爆音が響き渡る。


「貫通したか?」

「らしいな…風が抜けてる。」

「な、なんてことするっすか!!」


砂埃が虚夜宮へと入っていくのを見て恋次は貫通したのを確認するが、後ろで甲高い声が悲鳴に似た声を上げ、二人は振り返る。
その声の主は一護達の中で1番小さく、1番か弱いであろうネルだった。
ネルが声を上げたことで、真由美達全員の目線を独り占めしているのだが、ネルは唖然としているので気付いてはいない。


「門なら向こうに三日ほど歩いたところにあるっすよ!」

「アホ、友達んちじゃねえんだぞ…正面から入るわけねえだろ?」

「三日も歩くほど暇でもねえしな。」


一護達の言葉にぐうの音もでないネルだったが、一護に声を掛けられ開けていた口を閉ざし一護へと目線を移す。
目線の先の一護は優しげな表情で微笑み、自分を見上げるネルを見つめていた。


「ありがとな、ここまで連れて来てくれて…でもこれ以上俺たちと関わるとお前らまで裏切り者にされちまう…だから、お別れだ……」


『じゃあな』、と言って一護は虚夜宮へと入ってしまう。
それに続きルキア、恋次、チャド、雨竜、と次々と入り、真由美は一護達を見送るネルの前に歩み寄り目線を会わすようにしゃがみ込んだ。


「真由美…真由美も行っちゃうんすか…?」

「…ごめんね…私も死神だから……行かなきゃ…ネル、ドンドチャッカ、ペッシェ…元気でね…」


寂しそうに瞳を揺らして見上げるネルに真由美はネルの頭を撫でて小さく笑う。
そしてすぐ一護たちを追いかけ虚夜宮へと姿を消した。


「…ま!…待つっすー!いつごー!真由美ー!」


完全に姿を消し、ネルは我に返ったように声をあげ、懐いている二人の名を呼ぶ。
しかし2人は完全に闇と同化し、姿は見えず足音も段々と小さくなっていく。


「いつごーーー!!真由美ーーーー!!」


そして、我慢できなかったのかネルはペッシェたちの止める声も聞かず虚夜宮へと足を踏み入れて一護と真由美を追いかけてしまう。
2人の名を叫び、涙を流しながらネルは走り、その後ろを兄だという2人の虚が続く。
一護と真由美は後ろから響いて近づいてくるネルの声と足音に走っていた足を止め、振り返る。
するとネルが何かを叫ぶように声を上げながらこちらに向かってきているのは分かるが何分電気もなく暗闇につつまれているので姿は見えない。


「ネル達はもうルヌガンガ様に見つかった時点で裏切り者っすー!!いやいつご達と出会ったときからディオス様はお見通しだったのかも知れないっすーッ!!藍染様もご存知かもしれないっすー!!藍染様はそれを決してお許しにならねえお方っすー!!もしディオス様や藍染様がお許しになられてもディオス様を裏切ったネル達を十刃の人達がお許しにならないっすー!!だからって!別に連れてってくれなんて言ってないっすーーー!!」


走りながら、そして泣きながら必死にこちらに向かってくるネルに一護を抜いていく恋次達も立ち止まりネルの言葉を聞いていた。
心が締め付けられるネルの言葉に恋次達は先を急ごうと二人に声をかける事もなく、ただ立ち止まりネルを待っている。
ディオスという新しい名前が少々胸に引っかかる物があるが、それは今聞く雰囲気でもないので恋次達は黙っていた。
真由美はネルの泣き声に近い声に自分も泣きそうになり必死に涙を流すのを我慢していたのだが……何か崩れる音がしたと思ったらネルの声が段々小さくなっていく。


「なんだ?」

「声が小さくなってる…どうやら地下に落ちたみたいだな…」

「まあ!地下に!?それは大変!!ネルー!大丈夫ーー!?」


真由美が声をかけても返事がない。
返事のないネルに真由美は心配し来た道を戻っていきそれに一護も続く。


「真由美様…!!」


2人が走っていくのをルキアが慌てて続き、恋次たちも仕方ない、と言わんばかりに息をついて3人の後を追った。
だが、先に進んでいた真由美と一護は暗闇から突然現れたドンドチャッカとペッシェと衝突してしまい、ネルが落ちたより大きな音が通路に響き渡った。


「いったぁ…顔面思いっきり打っちゃった…」

「痛いではないか!」

「痛いでやんすー!」

「それはこっちのセリ…」

「真由美様になにをしているのだ!たわけどもがあああ!!!!」

「「「ギャーーーーーッ!!!」」」


人に近いのと中身はともあれ少女の姿の真由美は一護より痛みが強いのか、ぶつかった衝撃で尻餅をつき、ドンドチャッカの硬い仮面に顔面を強打したらしく、鼻先を赤くさせて痛みに涙を溜めていた。
4人とも痛みに声を漏らしていたが一に真由美、二に真由美、三四も真由美なルキアが一護の後頭部に飛び蹴りを食らわし、一護もろとも真由美以外の3人はルキアの蹴りに飛ばされてしまう。


「きゃー!一護様ー!!」

「真由美様!ご無事ですか!?」

「ル、ルキア!あなた何して…」

「真由美様の…っ真由美様の愛らしいお鼻が赤くなっておられるだとおおッ!?い、一護!!貴様あああ!!!真由美様になんて無礼をーー!!」

「きゃーーー!!!一護様ーー!!」


最初にルキアに蹴られたのを見た以上に叫び声を上げながら真由美はルキア無双に顔を青ざめる。
真由美の鼻を赤くさせたのはドンドチャッカなのに何故か一護がルキアに絞められるのを疑問に思うものは今ここには居ない。
今、ここにいるのはルキアの怒りの矛先を自分に向けないように口を閉ざすヘタレな男達しかいなかった。


「いっ…いってえだろ!!何すんだルキア!!」

「黙れ馬鹿者め!!真由美様のお美しく愛らしいお鼻をよくも汚してくれたな!!!」

「なんで俺なんだ!?俺じゃねえよ!!あいつらのどっちかだろ!!」

「真由美様は貴族の…いや!尸魂界全ての憧れの的なのだ!!アイドルなのだ!!ハリウッド女優なのだ!!ヒル○ン姉妹なのだ!!!貴様のような小童が怪我させていいお方ではない!!!身を弁えよ!!」

「おいルキア…それ以上言ってやるな…真由美さんが恥ずかしくて死にそうになってんぞ……」


ルキアは現世にいた時に見た女性の憧れという存在を覚えている限り出す。
真由美の事になると暴走するルキアを止められるのは兄である白哉だけだろう。
今真由美が止めると逆に暴走が酷くなるに違いない。
そして白哉がこの場に居ても妹同様一護に千本桜を仕掛けるためどの道止められる人物は居ない、という事になる。
この兄にしてこの妹…である。
当の本人である真由美はハリウッド女優とまで言われ恥ずかしくて居た堪れなくてつい赤くなっている顔を手で覆って恥ずかしさに耐えるように俯いていたのだが……それに気付き止める恋次の言葉などルキアの耳には届かず真由美が復活し止めるまで永遠と一護は濡れ衣なのに怒鳴られていた。

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