真由美は恋次と共に行動する事になり、必死に恋次の後を追いかけていた。
霊力も人間並みになり瞬歩も使えない真由美に恋次は恋次なりに気を使いいつもより走る速度を緩めていた。
別れ道に置いて来たネル達が何故かはぐれて1体ずつ一護、雨竜、恋次の所に来てしまい、恋次と真由美にはドンドチャッカが来てしまう。
そのせいでドンドチャッカとの漫才にて止まったり走ったりを繰り返し言い合いをしながら先へと進む。
途中ルキアとチャドの霊圧が消えたのには真由美も気になるが今は1人でも多く生き残り織姫救出に行かなければ鳴らないから、と2人は確かめに行きたいと焦る心を落ち着かせ足を速めた…
だが…
「…!」
目の前を走っていた恋次が行き成り立ち止まり、真由美とドンドチャッカはぶつかりそうになるも何とか止まることに成功し、不思議そうに前にいる恋次を見つめる。
「どど…どうしたんでやんすか?恋次?」
「恋次くん?」
「……道が別れてる…」
恋次の言葉に前を向くと確かに道は二手に分かれていた。
「私と恋次くんとで別れる?」
「それは駄目っすよ…いくら真由美さんが強いからって今は普通の人間と変わりないんですから…何かあれば浦原家の人達と朽木家の人達と十二番隊の人達に殺されるんで一緒に行動しましょう。」
「うん…」
真由美は真剣な表情で言う恋次に『どうしよう、否定が出来ない…』と乾いた笑みを浮かべる。
もし真由美に何かあれば確実に恋次はトキ達と白哉とルキア達によくて半殺し、悪くて本殺しになるだろう。
本殺しってなんだよ…そう自分の頭で自分に突っ込みを入れる真由美だったが何かが開いた音と同時に後ろにいたドンドチャッカの悲鳴が聞こえ、振り返ると穴が開いており、その穴を覗き込んだその後ろで今度は恋次の悲鳴が聞こえ振り返るとそこには恋次はおらずドンドチャッカ同様穴が開いていた。
「え……え!?れ、恋次くん!?ドンドチャッカ!?…っ!…きゃああ!!!」
突然落とし穴で2人が居なくなったことに混乱していた真由美だったが今度は自分の番らしく、真由美は突然の落下に背筋をヒヤッとさせ凄い勢いで落ちていくのを止めることも出来ずにアトラクションのような穴を悲鳴を上げて滑っていく。
****************
「お帰り、我が王の姉君」
放り出されたと思い床に落ちると痛みに耐えようと目を瞑ったその瞬間真由美の体は床ではなく柔らかいものの上に落ちたらしく痛みは一切なかった。
しかし、上から声を掛けられその声に真由美は先ほどとは違う意味で背筋を凍らせる。
「ザ……ザエル…アポロ………」
恐る恐る目を開け顔を上げるとそこには王宮から脱出するのを見送った破面が微笑みを浮かべ真由美を見下ろしていた。
真由美は顔色を青くさせ、目に見えるその反応にザエルアポロは目を細めて笑う。
「うおおおおおお…!!!」
「…!」
「………」
聞いたことある声が真由美の耳に届き真由美はザエルアポロから目を逸らし辺りを見渡した。
辺りは煙に包まれ足元が見えない状態で、真由美はそれでも恋次を捜しキョロキョロと頭と目を動かす。
暫くすると壁に大きな丸い穴が開き、そこから恋次が放り出されるように落ちてきた。
「…どこだ…ここは……こうしちゃいられねえ…真由美さんを見つけねえと…本気で隊長とルキアに殺されちまう…」
恋次はドンドチャッカだけなら置いて先に行けるだろうが真由美では話が別である。
真由美関係になると暴走してしまう義兄妹の鉄拳を受けたくない恋次は早く真由美を見つけて先に進みたいと1歩前へ踏み出そうとした……が、突然辺りに笑い声が響き恋次は辺りを見渡す。
「ハハハ…!最高!」
「!!」
「色々と仕掛けは施しといたけど…まさか…あんな1番安い仕掛けに引っかかる奴が居たとはねえ……」
背後から聞こえるゆっくりと人を馬鹿にしたような声に恋次は振り返る。
煙が晴れ姿を現したのはピンクの色の髪を持つ破面、そして捜そうとしていた真由美だった。
真由美は何故かそのピンク色の髪の破面に横抱きにされ捕まっていた。
「自己紹介といこうか…一度しか言わないよ…君の頭で覚えられるといいけど……僕は……」
「吼えろ!蛇尾丸!!」
「きゃ…!!」
「真由美さん!!こっちへ!!」
恋次は蛇尾丸を始解し、ザエルアポロが話している途中で蛇尾丸を向ける。
蛇尾丸の刃を避けようとしたザエルアポロはつい真由美を放してしまい、真由美を放したのを見て恋次は真由美へ声を上げた。
真由美は声を掛けられ状況を理解するよりも体が動き恋次の元へと駆け寄り恋次の後ろに隠れる。
ザエルアポロは怪我をした訳ではないが話しの途中に攻撃され、せっかく捕まえた真由美も逃がしてしまい不機嫌そうに眉をひそめ恋次を見つめていた。
「人の自己紹介の途中に遮るだなんて感心しないな…………まあ、いい…改めて自己紹介といこうか…僕は第8の十刃…オクターバ・エスパーダ……ザエルアポロ・グランツだ…その小さい脳みそで覚えられないとは思うがな…」
「エスパーダ?…なるほどな…てめえが破面どもを指揮ってやがる10人の1人って……」
不機嫌そうに声を低くするザエルアポロに恋次は睨みつけるが、頭上から聞きなれた…というか自分達と同じく穴に落ちたドンドチャッカの声に言葉を切り恋次と真由美は顔を上げる。
「この声…ドンドチャッカか?」
「そう、みたい……あの子私達より最初に落ちたのにまだ落ちてきてないみたい…」
ドンドチャッカの叫び声は段々と近づいてきており、恋次は後ろにある自分が落ちてきた穴からの声だと気付き真由美の腕を引っ張り隣へと避けるように移動する。
「危ねえ、危ねえ…危うく味方に押しつぶされるところだった…」
危機一髪、と額の汗を拭うような仕草をする恋次だったが……
後ろの壁に新たな穴が開けられそこからドンドチャッカが勢いよく恋次の上へと落ちてくる。
真由美は恋次に腕を掴まれていたため恋次と一緒に押しつぶされる事はなかったが、恋次が真由美の腕を掴んで放さなかったため恋次が押しつぶされたと同時に床に座り込む形となってしまった。
「痛いでやんすーー!お尻が…!お尻が痛いでやんすーー!!」
「う、うるせえぞ…」
「あと穴ん中も怖かったでやんすーー!!」
「いいから…!早く退け…!!」
「ド、ドンドチャッカ!早く恋次くんの上から退いてあげて!じゃないと恋次くんの蛇尾丸の餌食になっちゃうよ…!!」
恋次を下敷きにしているとは思っていなかったドンドチャッカは泣き叫び涙を大量に出していた。
ドンドチャッカの流す涙に濡れないように避けながら真由美は泣き叫ぶドンドチャッカをあやそうと声をかけると真由美の言葉にドンドチャッカは涙を止めてくれた。
止めてくれた…のだが…
「…………」
「ああああ…!!あなた様は…!オクターバ・エスパーダ、ザエルアポロ様あああ…!!」
「………………」
涙を止めてくれたのだがそれは真由美の言葉でもなければ恋次がいるからでもなく、ジッと黙ったまま静かにこちらを見ていたザエルアポロの存在に気付いたからで、しかも止まっていた涙が恐怖からかまた流れ始め、真由美は自分に降りかかってくる涙から逃れようと今いる場所から少しずれる。
そんな自分を避けるような真由美と自分が押しつぶしている恋次を余所に涙を止めドンドチャッカは顔色を悪くさせながら誰に言っているか分からないがザエルアポロの説明をしてくれた。
「ザエルアポロ様…!!虚圏最高の研究者でありあらゆる霊性兵器開発のスペシャリスト!!しかしその研究の多くは謎に包まれオラ達下っ端の破面には全くと言っていいほどの…」
「おい!俺だよな!!俺たちに説明してんだよな!!だったらそこをどけ!!俺にちゃんとリアクションを取らせろ…ッ!!」
「おやー?恋次?オラの尻の下で何してるでやんすかー?」
恋次は自分の体の上で無駄な説明口調のドンドチャッカに声をかけ、ようやく存在を認識してもらった。
しかしドンドチャッカは本気で分からなかったようで、首をかしげて恋次を見下ろしていると自分からドンドチャッカの下から這い出た恋次の蹴りを右目に食らい、その痛みで後ろに尻餅をついてしまった。
「痛いでやんす!何で蹴るんでやんすか〜!!」
「うるせえ!喚くともう一回蹴るぞ!このボケ!っつーか顔かてぇんだよ!てめえ!」
「酷いでやんすー!暴力反対でやんすーー!!」
「あー、もう泣くな!鬱陶しい!」
「あああああっ!!体より心の痛みが大きくて涙が止まらないでやんすうううう!」
恋次に蹴られ泣き出してしまったドンドチャッカに恋次はなんだか自分が悪いような気がしてバツの悪そうな顔を作り背を向けて気まずそうに謝る。
そんな恋次にドンドチャッカは泣き止み一回は一回、と恋次の顔を蹴飛ばそうとしたのだがその前に恋次の蹴りを食らってしまい失敗に終わった。
「……もう茶番は終わりかい?…じゃあ、姉君を返してもらうよ。」
「なに…!?」
「…っ!!」
余計泣き出したドンドチャッカと恋次の喧嘩と言えるか分からない喧嘩にオロオロしていた真由美だったが背後からの声に振り返ろうとしたその時、一瞬にして恋次達が遠くなり何故か再びザエルアポロの腕の中に拘束されてしまった。
恋次は一瞬にして真由美を奪われ一瞬にして間合いを取ったザエルアポロに斬魄刀を手にかけいつでも抜けるようにし、前にいるザエルアポロを睨みつける。
「おっと…そう怖い顔はしないでくれたまえ…僕は十刃と言ってもそれほど戦闘能力は高くないんだ…そこのデカイのが言ったろ?僕は研究者だ…戦闘はあまり得意ではないんだ……だから君と本格的に戦う前に僕は取られたモノを先に返してもらっただけだよ」
「取られたモノ…だと…?」
「そう…それがこの方、だ…」
「……ッ」
恋次がやる気なのを見てザエルアポロは真由美を捕まえていない手を前に出し止める。
立ち止まった恋次に見せ付けるようにザエルアポロの手が真由美の顔の輪郭をなぞり、真由美はその感覚にゾクリとさせ息を呑んだ。
その様子に恋次は逆上しやめるよう声をあげ、ザエルアポロはその反応が面白いのか目を細めて薄く笑う。
「そうカッカしないでくれないか?君の声は叫ばずともイヤでも僕の耳に届くんだ…鬱陶しい事この上ない…」
「うっせえ!!とっとと真由美さんを放しやがれ!!大体真由美さんを取ったのはてめえらだろうが!!!」
「……それは違う」
「何が違うってんだ!!」
「僕達が取られたのだ……我らの王からお前達死神が取ったのだよ……」
「な…んだと…っ」
ザエルアポロは先ほどまで恋次に嘲笑を向けていたのだが、その笑みを消し表情なく恋次を見つめる。
恋次はザエルアポロの言葉の意味が分からず唖然としてしまう。
ザエルアポロから逃げ出そうと真由美は力を入れて首に回され固定されているザエルアポロの腕をどかそうとするも細い体の何処から力を出しているのか分からないほどザエルアポロの腕はビクともしなかった。
身動きする真由美を気にしていないのかザエルアポロは恋次を真っ直ぐ見つめ続ける。
「お前達は言わば王の宝を奪った盗賊と一緒だ…」
「盗賊だと!?宝だと!?さっきから聞いてりゃ好き放題言いやがって…!!真由美さんは物じゃねえ!人形でもねえ!!勝手に私物化して宝だのなんだの言ってんじゃねえよ!!真由美さんは死神だ!虚の王って奴のモノになったことなんて一度もねえよ!!てめえの言葉を借りるってんならそっちこそ俺たちの宝を奪った盗賊じゃねえか!!!虚の王が盗賊の王だとは笑わせるぜ!!」
「―――ッ口を慎め!!死神風情が…!!!」
「…!」
恋次は真由美を物扱いし、自分達を盗賊扱いされ頭にきたのか叫ぶような声をあげ、虚の王という者を盗賊呼ばわりしだす。
恋次の言葉を聞き、先度まで冷静だったザエルアポロが怒りを見せ、初めて怒鳴り声を上げた。
それに恋次も驚き目を丸くさせ、真由美は突然の怒鳴り声にビクリと肩を揺らした。
ザエルアポロは眉間にシワを寄せて恋次を睨みつけ、霊圧を高める。
「我が王を盗賊呼ばわりをするとは…!!これだから低俗な死神は嫌いなんだ!!いいか!知らないようだから教えてやる!!この方は我が王であり虚圏を治める王の姉君だ!!我が王の姉君であるこの方を死神風情が触れることも名を呼ぶことも吐き気がするのにこの方を我々が奪っただと!?我が王を盗賊呼ばわりした挙句この方をお前達の所有物としている死神のその傲慢な性質に虫唾が走る!!!」
「あね、ぎみって…どういう……虚の王の姉が真由美さんだと!?そんな訳がねえだろ!!真由美さんは死神で…」
「馬鹿が…!!この方は我が王が人間だったときの姉だ!!」
「―――ッ!!」
心底馬鹿にした表情と声色に本当なら頭にくるのだが、ザエルアポロのその言葉に恋次は全ての考えを止めた。
真由美はザエルアポロの腕の中で何も言わず唖然と見つめてくる恋次の目線にゆっくりと逸らし目を伏せ俯く。
恋次は信じたくなくて、信じられなくて何も言わない真由美をただ見つめていた。
ザエルアポロは黙り込む恋次にヒートアップしていた感情が落ち着き始めたのか少しずつ冷静になり疲れたように息をつき荒れた髪を手で掻き上げる。
「……分かったかい?この方はお前達死神が簡単に触れていい方ではない…分かったならとっとと…」
「卍解!!狒狒王蛇尾丸!!」
『帰りたまえ』、というザエルアポロの言葉は恋次の卍解で消える。
恋次の卍解、狒狒王蛇尾丸が襲い掛かろうとしているなか、ザエルアポロは冷静で表情なく狒狒王蛇尾丸を見つめていた。
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