(132 / 158) 浦原娘主 (132)

ザエルアポロの腕にいる真由美は襲い掛かり向かってくる恋次の卍解の衝撃に備え目をキツく閉じるのだが、オレンジ色の光とゴオオ、という低い音にゆっくりと目を開ける。
目の前には無残にも粉々に砕け散る恋次の斬魄刀が目に入り、目を丸くさせ唖然としていた。
それは恋次も同じようで…いや、恋次の方が衝撃が強いのかこれでもかと目を丸くさせ信じられないと顔に書いてあった。
そんな恋次を見てザエルアポロは口端を上げる。


「なん、だと…」

「残念だったね…君の卍解はここでは使えない…」

「……俺の卍解は…だと…?」

「ああ、そうだよ…声に出して確認するのはいいね…馬鹿にしては上出来だ…」


馬鹿にしたような言葉と態度に恋次は舌打ちを打つ。
真由美は今だ唖然とし、ザエルアポロの腕の中で恋次を見ていた。


(今の…恋次くんの攻撃…本気だった…本気で私を…ッ)


真由美は恋次の攻撃に拒絶を感じ胸が張り裂けそうな感覚に悲しみ、泣き出しそうになった。
敵の、大ボスとも言える人物の姉……例え前世が血縁関係だとしても死神からしたら倒すべき相手に映ったのかもしれない…
真由美は恋次の拒絶に心に傷を負う。
そんな真由美に気付いていないのか二人は話を続ける。


「君の卍解の情報は形状、能力、霊圧から霊視蘇生に至るまで全て完璧な状態で僕のもとに入っている…その情報に応じて、この宮の中に君の卍解を封じる仕掛けを施しておいたのさ…」

「俺の卍解の完璧な情報だと…?そんなもん直に食らった奴しか分からねえはずだ…一体どうやって…」

「…兄貴だよ…」

「なに…?」

「僕の名前記憶しているかい?…出来てないだろうね……仕方ない、もう一度言うよ…僕の名前はザエルアポロ・グランツ…イールフォルト・グランツは…僕の兄だ…」

「……!!」


その言葉で卍解の情報というのを理解した。
恋次は一度その名前の破面と戦った事がある。
現世に現れたグラムジョーに従い恋次と戦ったのがザエルアポロの兄だというイールフォルト。
恋次は目を丸くしザエルアポロを見つめ、ザエルアポロは目を細める。


「あいつか…!」

「おや…あんなカスを覚えていてくれたのか…それは感謝しなくちゃね。」

「その口ぶりじゃ兄貴の敵討ちというわけでもなさそうだな…」

「ハッ!馬鹿の考えそうなことだ…そんな理由で君を狙ったと?君の卍解の情報は奴の傷の治療の際に全身に寄生させていた録霊蟲から得たものだ……僕にとって奴は霊蟲を運ぶただの箱…箱を壊されて怒るほど、僕は子供じゃないつもりだよ…」

「………カスだな…てめえ……」


ザエルアポロの言葉に恋次は怒りをあらわにさせる事もなく静かにザエルアポロを睨みつけ呟いた。
その呟きにザエルアポロは片眉をあげ、腕に閉じ込めていた真由美を放し壁側へと背中を少し強く押す。
押された真由美は止まれず壁の近くに離れさせられザエルアポロを振り返った。


「悉く予想を出ない物言いだね…君もこの方が我が王の姉だと知った途端攻撃したのに僕だけが悪者かい?……眩暈がするよ…本当に…」


ザエルアポロは真由美を拘束していた腕を天井へと上げ、そのまま下ろす。
すると天井からオレンジ色の透明な板が降って落ちてきて真由美の周りを囲む。
突然大きな音を立て周りに落下してくる板に真由美は目を瞑るが痛みはなく、ゆっくりと目を開けると左右前後ろの全ての視界がオレンジ色に染まっていた。
否、染まっていたのではなく、守るようにオレンジ色の板が真由美を囲っていた為視界がオレンジ色になってしまっただけである。
その証拠に頭上を見るとオレンジ色ではなかった。
恋次は突然真由美の周りをオレンジ色の板で囲った事に目を見張る。


「貴女の体をあの死神に傷つけられでもしたら我が王に怒られてしまうからね……僕が死神を殺すまで、そこで大人しくしててもらおうか…」

「……っ」


ザエルアポロは横目で真由美を見つめ、真由美が大人しくしているのを確認した後に自分の腰に刺している斬魄刀に手をかけ抜き、それに気付いた恋次が真由美からザエルアポロに目線を戻し警戒を高める。


「暴れるなよ?…卍解を使える個体を直接見るのは初めてでね…正直僕も興奮している……だから暴れるなよ……できるだけ完品に近い形状で死んでくれ。」


完全に抜いた斬魄刀を始解するわけでもないザエルアポロに恋次は眉をひそめる。


「吼えろ!蛇尾丸!!」


頭で動くタイプではない恋次は一直線に先手を打ちザエルアポロへと蛇尾丸を向けた。
しかし蛇尾丸はザエルアポロに真っ直ぐ向かったと思ったが突然曲がりザエルアポロから逸れてしまう。


「どこを狙って……、…まさか…!?」

「行けえええ…!!」


ザエルアポロはコントロールミスだと思い小さく笑うが曲がった先の方向を思い出し慌てて振り返る。
蛇尾丸が向かった先、そこは…


「きゃあ…ッ!!」


オレンジ色の板で守られている真由美だった。
真由美は蛇尾丸がオレンジ色の板に当たった衝撃に悲鳴をあげ、立っていられずこけてしまう。
蛇尾丸の一撃を受けてもオレンジ色の板はヒビ1つ、汚れ1つない。
ザエルアポロは自分ではなく真由美を狙った恋次に顔を戻し睨みつけるが、ザエルアポロの睨みに怯えず恋次は勝気な笑みを浮かべながら蛇尾丸を戻していく。


「……、…それほど…敬意を払っていた彼女に裏切られたのがショックだったのかい…?案外死神というのも繊細な生き物なんだな…」

「ハッ!馬鹿かてめえは!」

「なに…?」


苛立ちを隠しながらのザエルアポロの言葉に今度は恋次が鼻で笑う。
恋次の言葉にザエルアポロは低い声で呟き片眉を上げた。
恋次は笑みを保ったまま蛇尾丸を肩に乗せ見下したようにザエルアポロを見つめる。


「真由美さんの前世が虚の王の姉だろうが、そうでなかろうが関係ねえよ!真由美さんが死神だっていう事実は変わらねえし、真由美さんをそんな事で敵だと判断する野郎は例え味方だろうが俺が潰す!!俺は真由美さんが虚だろうが破面だろうがどっちでもいいんだよ!!」

「恋次、くん……」

「……………」


恋次の言葉に座り込んでいた真由美は目尻が熱くなり、涙を浮かべて恋次を見つめる。
さきほどまで暗く重かった心が恋次の言葉で一気に晴れた気がした。


「そうか……だったら…僕から奪い返してみるといい!!」


ザエルアポロはヒュッ、と音をさせ刀を振る。
恋次は『言われなくともそうするつもりだ!!』と蛇尾丸をオレンジ色の板へと振りかざす。
そんな恋次にザエルアポロは響転で真由美の前に移動し、自分の斬魄刀で攻撃を防いでいく。
恋次も休む暇もないほど攻撃を続けるのだが中々ザエルアポロをどかす事は出来なかった。


「どうした!!姉君を僕から奪うんじゃなかったかい!?」

「…ッるせえ!!」

「れ、恋次くん!!無茶は……」


「≪守れ、白龍寐≫」


「「「―――!!」」」


ザエルアポロの防戦を破れない苛立ちが斬魄刀にまで伝わり、最初より雑になっていき力任せになっていくのを真由美も分かるのか、無茶をしないで欲しいと伝えようとしたその時―――…


「な、に……!?」


パリン、とガラスが割れるような音がした瞬間真由美を囲っていた壁が粉々に砕け散り、唖然とし目を見張る真由美を何者かが目に見えない速さで奪っていった。


「――ッ真由美さ…、…!?」


恋次が白い物が後ろへ去っていくのを視界の先で捉え慌てて後ろへと振り返ると、目の前の光景に目を丸くする。


「ご無事ですか、我が君」


恋次の目の前にはザエルアポロと真由美と同じ白い色のチャイナ服を身に纏い、青龍刀を持ち、長身の体を真由美の前で跪いている破面の姿だった。

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