(135 / 158) 浦原娘主 (135)

戦いは再開され、見た限りでは恋次が押していた。
しかし良く見ればザエルアポロはその場を動くことなく焦ったような演技を見せ、いかにも押されています、と言わんばかりで恋次の攻撃を受けていた。
だが止めを刺そうとした恋次の攻撃をザエルアポロは力を入れず受け流し、逆に唖然とする恋次の体に剣で斬り付ける。
肩から斜めに切られた恋次は膝を突き笑みを貼り付けるザエルアポロを睨みつける。


「この…っ!」

「随分遅い斬撃だね…情報以下だ…」

「てめえ…」

「まだ気付かないのかい?君は僕の手の平の上で踊らされていただけなんだよ…」


笑うザエルアポロに恋次は睨みを強くさせるがある事に気付く。
ザエルアポロの足元をふと見ると一歩もその場からずれていない、というのに気付き目を丸くさせ、ザエルアポロは恋次が気付いた事に笑みを深める。


「おや、気付いたようだねえ…」

「てめえ…殆ど動かねえで俺の攻撃を…!」

「君の攻撃がどの程度か試していたんだが……期待はずれだったね…卍解なしではこれが限界なのかな?」

「舐めるなあ!!!」


馬鹿にするような言い方のザエルアポロに恋次は再び蛇尾丸を仕向けるがザエルアポロに避けられ再び斬りつけられてしまう。


「その攻撃は僕には通用しないよ…」

「この野郎…ッ!!」


何度向かって行っても避けられ斬りつけられるばかり。
恋次は痛みで震える指に力を入れて蛇尾丸を握った。


「ザッエルアポロ様!」

「ザエルアポロ様!」

「ザエルアポロ様!!」


恋次が睨み合い、恋次が傷ついていくのをただ見るしかなかった真由美の耳に2人の男にしては甲高い声が届く。
ザエルアポロの後ろへと目を移すとピョンピョンと跳ねてこちらにくる玉のような丸い体系を持つ破面が2体こちらに来ていた。


「ルミーナにベローナか…どうした?」

「アーロニーロ死んだ!」

「しーんだ!死んだ!死んだ!!」


2体の報告にザエルアポロは耳に手を当て、報告を確認する。


「ああ、本当だ…報告が入っているねえ……こっちに夢中で気付かなかったよ………へえ…相打ちだってさ…死神くん?」

「…なんの話しだ…」


感心したような声を上げ、肩で息をする恋次、そして守られるようにウティルの後ろにいる真由美へと教えるように呟いた。


「だからさ、君達の仲間と十刃の1人が相打ったって話し…おめでとう、大殊勲じゃないか。」


ザエルアポロは拍手を数回し、恋次は眉をひそめる。
真由美は霊圧すら感知できないほど人間になっているので誰の霊圧が消え、誰が敵と相打ったか分からず不安な気持ちで一杯だった。


「相打ちかどうか…」

「まだ分からないって?楽観論ならよした方がいい……死んだ子の名前も届いているんだ………………朽木っていうのは君の仲間の名前だろう?」

「―――!!!」

「う、そ…」


ルキアの名前が出た瞬間真由美は唖然とし、恋次は蛇尾丸をザエルアポロへと向ける。
――が、ザエルアポロは斬魄刀で受け止める事もなく鋼皮で硬い手首で受け止めた。


「予想通りの反応だ…本当に面白いな、君は……だが何度も言っているだろ?始解ごときじゃ十刃に傷を負わせることなんかでき……、…ッ!!」


恋次はザエルアポロが最後まで言う前に赤い光を放ち爆発が起こる。
その爆風が真由美を襲うが長身のウティルが盾となり爆風と煙から守ってくれた。


「ごちゃごちゃ…うるせえぞ………どけえ!!」


ルキアが相打ち死んだと聞き恋次の霊圧は一気に上がる。
霊圧を感知できない真由美ですら分かるほど恋次は怒りにまかせ霊圧を上げていた。
真由美もルキアが死んだと聞かされ動揺しているのか手が震えているのが自分でも分かり、真由美は震える手を抱きしめるように胸元で手を組む。


(ルキアが死んだ…そんな…そんな事…あるわけが……)


この時、例え封じられたとはいえ霊圧が感知できない自分が憎い。
普通の人間となってしまった真由美は感知したくても霊圧が分からない。
知りたくても知る術を持たない。
ザエルアポロの言葉が真実なのか、嘘なのか…分からない。
真由美は信じたくなくてザエルアポロの言葉を頭の中で必死に否定していた。


「我が君…?」

「………そ…うそよ…うそよ…うそよ…」


真由美の感情の変化を感じ取ったウティルは真由美へ振り返り不思議そうに見つめていたが真由美の瞳が揺れているのを見て無意識に眉をひそめる。
そしてその原因を作ったであろうザエルアポロを睨みつけるように目を移した。
ザエルアポロは倒れはしないが額から血が流れ口端を上げる。
恋次は立て続けに攻撃を仕向けるがやはりザエルアポロは軽々避ける。
だが、伸びた蛇尾丸が背後に回り込むが気付いたザエルアポロにまたしても避けられてしまった。
飛び上がり避けたザエルアポロは恋次の攻撃に嘲笑を浮かべる。


「単純だ…」

「動かしたぜ」

「…!」

「まだ気付かないのかい?…予想通りじゃなかったのか…」


ザエルアポロは恋次の攻撃で先ほどから動くことがなかったその足を動かすことができ、恋次は動いたザエルアポロに口端を上げ、鼻で笑う。


「卍解封じがなんだって?データがどうしたって?蛇尾丸は俺の手足同然だ!!見切っただのなんだのと舐めて掛かるのは早えって言ってんだよ!!!」


恋次は勝機だと蛇尾丸を伸ばしザエルアポロへと襲い掛かる。
しかしザエルアポロは無言のまま笑うだけで蛇尾丸を避け続け、追い詰めたと思ったが響転で間合いを詰められてしまい、恋次は咄嗟に後ろに下がった。


「何処までも低脳の奴は不幸だな…君のデータは全て届いていると言ったはずだ……勿論、君の攻撃速度などはもっとも基礎的な情報さ…」


そのザエルアポロの言葉を聞き恋次は逆上し更に蛇尾丸を仕掛けるが、逆上した攻撃など先ほどより簡単に避けることができる。
だがザエルアポロは避ける行為も飽きてきたのか蛇尾丸の出っ張っている刃の部分を思いっきり蹴り付け、踏みつけられ折れた刃は飛び上がり、降ってきた刃をザエルアポロは見ることなく指先でキャッチした。


「言っただろ?君にはもはや勝つ術も逃げる術もないと…」

「なにを…!」

「切り札は使った時点で切り札ではなくなる…」


蛇尾丸の刃を見ながら喋っていたザエルアポロは見飽きたといった感じに蛇尾丸の刃を後ろへ投げ捨てる。
その蛇尾丸の刃はルミーナにベローナ達の前に落ち、その刃をルミーナにベローナ達は取り合う。


「…飽きたな……」

「なんだと…」

「飽きた、と言ったんだよ…言葉も分からなくなったのか?」


ザエルアポロは聞き返す恋次に溜息をつき肩をすくめる。
背後には何故か蛇尾丸の刃で遊び始めたルミーナにベローナ達の姿が見える。


「君の斬魄刀はパワータイプだ…何の変哲もない、ね………形状変化の理論も実に単純だ…失礼を百を承知で言うが、もう見るべきところがないんだ…」

「……ッ…」


見下す言い方のザエルアポロに恋次は奥歯を噛み締めザエルアポロを睨みつける。
ザエルアポロは恋次の睨みなど痛くも痒くもないと鼻で笑い、首に仕込んであった何かのスイッチを取り出し、そしてそのスイッチを押す。
すると両側の壁にヒビが入り異形の破面達が壁を壊して姿を現した。


「なに…これ…っ!?」


床からも屋上からも多くの普通ではない破面達が現れ、真由美は怖くなり後ずさる。
真由美と恋次の疑問に答えてくれたのはザエルアポロだった。


「従属官…僕ら十刃は支配権の証明として11以下の破面から直属の部下を与えられる……それが従属官だ…一人しか選ばない十刃もいれば山ほど選ぶ十刃もいる…うちの従属官どもは少し異色でね…僕が改造した虚どもを藍染様の手で破面にしていただいたものだ…」

「だからどうし…うおお!!?」

「恋次くん…!」


説明を聞いてもだからなんだという恋次の下からまた新しい従属官が這い上がって現れ、恋次は後ろに倒れこんでしまった。


「まあ、無駄話しはやめにしようか…とにかく君はもはや僕が直接手を下すには値しないということさ…」


ゆっくりと起き上がる自分の従属官を見つめながらザエルアポロは前髪を掻きあげる。


「…さて…劇終だ…」

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