大きな音を立てながら建物が破壊されていく。
倒しても倒した以上の数に増殖していく自分自身に埒が明かず、この宮では狭すぎる、と恋次が卍解をしたのだ。
そのせいでコピーである自分自身も卍解をし、その数に耐え切れなくなった宮は粉々に崩れてしまう。
「ふう…思ったとおりだぜ…俺のコピーだけあってどうも攻撃を真似されてる気がしてたんだよなあ……」
卍解した蛇尾丸をグルグルと自分の周りに巻きつかせ衝撃と瓦礫から守った恋次は砂埃が舞い、風通しが良すぎる宮跡地を見渡す。
すると背後に瓦礫を退ける雨竜が現れ、恋次は振り返った。
「よう!生きてたか!どうだったよ、俺の頭脳プレイは」
「どこが!?本当に君はなんというか…黒崎とよくにているな…!」
「よせよ、一護の名前出されちゃ褒められた気がしねえぜ」
「当たり前だ!!貶してるんだよ!!」
雨竜の突っ込みは綺麗にスルーされる。
「ご無事ですか?我が君…」
「な、なんとか…」
雨竜と恋次が漫才し終えたその時、少し離れた場所から真由美とウティルが姿を現す。
真由美はウティルの"水守"に守られていたお陰で傷1つなくピンピンしていた。
ただ真由美は突然の崩壊に驚いていたが…
「真由美さん!無事だったんですね!!よかった…!」
「う、うん……なんていうか…恋次くん無謀すぎるね…」
「無謀というより馬鹿の1つ覚えですよ、我が君。」
「んだと!?頭脳プレイだっただろうが!!」
「この作戦といえない作戦が頭脳プレイというのなら、死神とはなんとも馬鹿の集まりなのだな。」
「ああ!?てめえ黙って聞いてりゃ好き勝手言いやがって!俺が死神の全てだと思うなよ!!大体な!お前何なんだよ!!何で敵である死神の真由美さんを守ってんだよ!!」
「そいつは姉君を守るためだけに作り出された破面だよ」
「「……ッ!!」」
ウティルの言葉に頭に来た恋次はウティルを指差す。
しかし、恋次の言葉を返したのはウティルでも真由美でもなく、ザエルアポロの声だった。
恋次と雨竜は背後からのザエルアポロの声に振り返ると瓦礫の山が崩れていき、下から現れたのはザエルアポロではなく、赤い塊だった。
その赤い塊がゆっくりと開いていくとその中にいたのはザエルアポロだった。
どうやら赤い塊だと思っていたものはザエルアポロの羽の部分だったらしく、赤い物を小さくしていきながら背後にある椅子のようなものに腰を降ろしながら詰まらなさそうに呟く。
「我が王が作られた姉君のためだけの破面……力なら僕達十刃同等の力を持つ男さ…」
「…………」
溜息をつきながらザエルアポロはゆっくりと腕をあげ、指を鳴らす。
するとザエルアポロが指を鳴らした瞬間コピーだった恋次と雨竜の分身が紫の液体へと戻っていく。
液体が散っていくのを2人は目を丸くして見つめる。
「クローン達が…」
「やめよう…どうにもつまらない戦いだと思ってたんだ……僕が直接やろう…見せてあげるよ、この邪淫妃の本当の力をね…!」
椅子から立ち上がったザエルアポロを余所に雨竜が素早くザエルアポロの横へと走り、移動する雨竜をザエルアポロは目だけで追っていく。
「せっかくの心遣いを申し訳ないが…生憎、こっちはそんなものに興味はないんだ!お披露目は邪魔させてもらうよ!!」
「そういうこったあ!!!」
2人はザエルアポロへと攻撃しようとしたが、矢と斬魄刀は椅子だった破面に防がれてしまった。
それに2人は驚き、真由美は悪い予感が当たってしまい無意識に眉をひそめる。
「申し訳ないのはこちらの方さ…悪いが君達に選択権はない……鑑賞会は強制参加だよ…」
「――!、滅却師さま!後ろ…!!」
「な…ッ!?」
ザエルアポロが目を細め、戦いの蚊帳の外である真由美がザエルアポロの羽の一枚が凄い速さで雨竜の背後にまわったのに気付き声を上げた。
真由美の声に雨竜も気付くが…
「遅い」
雨竜は逃げる隙もなくその羽に頭上から食べられるように囲まれてしまった。
「石田!!」
「滅却師さま…!!」
息苦しいのか赤いものの隙間から腕だけが出ており、脱出しようともがく。
くぐもった声を聞きながら恋次が助け出そうと蛇尾丸を放つがソレはビクともしない。
その後すぐに雨竜は解放されるが、体にはどこも異常はなかった。
すると雨竜を食べ?ていた羽の赤い物の1つが膨らみだし、他の赤い物の倍以上の大きさになると突然破裂する。
ポトリとザエルアポロの手の平に落ちたのは雨竜の人形だった。
恋次はそれに目を見張っていると倒れていた雨竜がゆっくりと起き上がるのが見え、雨竜の側へと駆け寄る。
「石田!!おい!石田!!しっかりしろ!!」
「…ッ」
「大丈夫か!?おい!意識は!?」
「大丈夫だッ…耳元で騒がないでくれ…」
「はあ〜〜い」
「「「――!」」」
「僕はここだよおー」
普段から音量が高めのため意識が朦朧としていた雨竜にとって恋次の声は少し頭にくる。
するとザエルアポロが手元にある先ほどの雨竜の人形で、その人形が返事をしたかのような口ぶりで返事を返した。
「石田の…人形…?」
「なんの、真似だ…」
「んー?何って…返事をしただけさ……君が呼ぶもんだから…」
ふざけた事を、と表情を険しくさせる雨竜にザエルアポロは笑みを深め雨竜へと指差す。
「ご苦労さま、石田くん…今をもって君の石田君としての役目は終わった……これからは彼が石田くんだ…」
「なにを…、……ッ!!」
雨竜はザエルアポロの言葉に反論しようとしたが、その瞬間頬になにか触れた感触に言葉を切った。
ザエルアポロは目を見張る雨竜に目を細める。
「あったろ?触られた感触が…さっきの説明は上手くなかったのかもしれない…簡単に言えばこれは君の五感を支配するコントローラーだ………つまり…」
パシン、とザエルアポロが手の中にある雨竜の人形の額をデコピンのように指で弾いたその瞬間本物の雨竜が額から血を流しながら倒れてしまった。
「石田!?」
「滅却師さま…!?」
「こういうことだ…さらに…」
「――ッ!!、やめろ!!!」
突然何もされていないのに倒れた雨竜に真由美は慌てて雨竜へと駆け寄って傷の具合を見る。
傷は額の皮が切られているだけで骨に異常はなく、大事がない事に真由美は胸を撫で下ろす。
恋次がザエルアポロを睨みつけながら振り返るとザエルアポロは雨竜の頭と下半身になる部分を持ち、引っ張るように力を入れる。
それに恋次は声を上げて止めるよう言うがザエルアポロは止める気などなくポン、とマヌケな音をさせて雨竜の人形は真っ二つに外れてしまう。
先ほどを見ていた恋次は慌てて雨竜へと目線を戻すが雨竜は痛む事も血を流して真っ二つにすることもなく上半身を起き上がらせながら唖然としていた。
「馬鹿め…何を慌てている?この人形は元々そういう構造なんだ…腹が割ったら本人も真っ二つに割れるとでも?」
唖然とする3人をザエルアポロは鼻で笑い、『まあ、いい』と言いながら割った人形の中を3人に見せる。
その中にはカラフルな小さい物がいくつも入っており、遠くて分からないが何か文字が書かれていた。
「ほら、見えるかい?この中に小さなパーツが沢山入っているのがさ…」
「…それがなんだ……」
「カラフルで綺麗だろう?子供の玩具みたいでさ…こいつはこの人形の楽しいところでね…ま、君らみたいな馬鹿には見せた方が早い…」
「……まさか…」
ザエルアポロは容器に入っているものをかき回していると1つにパーツを手にとった。
真由美はそれにいやな予感しかせず、脂汗が額から流しながらザエルアポロを見つめているとザエルアポロは指で摘まんでいるそのパーツを粉々に壊してしまう。
「――――ッが……、…っ!!」
「石田!!」
その瞬間雨竜の口から大量の胃液が吐き出され、苦しそうに体を震わせる。
苦しげに息をする雨竜に真由美は微弱だろうが苦しみが軽くなるよう雨竜の背中を擦る。
「てめえ…!!」
「恋次くん!!駄目よ!!」
「騒ぐなよ…こんなものを潰したぐらいでさ」
雨竜の異変に頭に血が上った恋次は蛇尾丸を手にザエルアポロへと向かっていく。
構造が分かった真由美は怒りに任せてザエルアポロの元へと向かった恋次を慌てて引きとめようとしたが恋次は真由美の声など耳に入らないのか、雨竜と同じように捕まってしまい、ザエルアポロの手の平には恋次の人形までもが握られる。
「お前達が藍染様に滅ぼされる理由があるとすれば……それは…その低劣さが罪なのだ…!」
ザエルアポロの笑い声が青空に響く。
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