(141 / 158) 浦原娘主 (141)

マユリの登場に目を丸くし驚いているのは真由美だけではない。
恋次も雨竜も助けに来たとは思えない人物の登場に驚いていた。


「く、涅隊長…!?」

「ど、どうしてお前が…こんなところに…!?」

「なんだ、知り合いか?滅却師…」

「知り合い?はて…知らんよ、そんな下等種は」

「なんだと…!?」


マユリの言葉に雨竜はマユリを睨みつけるがマユリは雨竜の睨みなど何も感じなく不敵ないつもの笑みを浮かべるばかりだった。


「滅却師など希少性を除けば私にとって今やこれと言った価値も興味もない連中だよ。」

「お前!!ここまで来ても侮辱するのか…!!」


雨竜が頭に来たのか真由美が止めるのを聞かず立ち上がりマユリに突っかかったその時、瓦礫の音がしたと思ったその瞬間に何かが飛び上がり瓦礫の下に生き埋めだったペッシェとドンドチャッカが華麗に登場する。


「貴様ら!我々の居ない間に何を争っている!!それに!そんなボロボロな姿で粋がっても説得力ないぞ!一護!あ、雨竜。」

「…一々絡むな、君は……」


ペッシェ達の登場でマユリに怒る気力すら奪われた雨竜は肩を落とす。
下等生物(仮)と実験動物(仮)が漫才をしていたがマユリは本当にもう興味ないのか、部下である真由美を視界に納める。


「マユリさ…っ」

「…………」


真由美は一年も半年も数ヶ月も離れていないというのにマユリとその後ろにいるネムの姿に酷く懐かしく思えて目頭が熱くなりうるうると瞳を濡らしていく。
泣きそうな顔を見せる真由美にマユリは目を細めゆっくりと座り込む真由美の元へと歩み寄る。
そんな死神の隊長にウティルは何もせず、何も言わず、ただマユリの動き一つも見逃さないようにと見つめていた。


「無事かネ?」

「はい…ッマユリさん…あの……」

「いい、言わなくていい。生憎とここに来れたのは浦原のお陰だからネ…お礼言われてもこれっぽっちも嬉しくないヨ」

「お父さまが…?」


マユリは真由美の前にしゃがみ、優しく真由美の髪を撫でてやる。
久しぶりのマユリの匂いと優しくて暖かい手に真由美は涙がポロポロと流れ出ていく。
それを手で拭っている真由美をマユリは優しげな目で見下ろすが、喜助の事になれば忌々しい、と不機嫌そうに鼻を鳴らした。
真由美は父親の名前に俯き涙を懸命に止めようとしていた顔をあげ、涙で濡れた頬と瞳をそのままで目を見張ってマユリを見上げる。
マユリは言いたくないが仕方がない、と渋々と教えてくれた。


「全く、一月かかると言っておいてこうも短い間で完成させるところは昔と変わらず頭に来る奴だヨ。」

「そう、ですね……昔と…変わりませんね……お父さまは…」

「……真由美、…」


「仲間割れはよしてくれ、見苦しい……」



父の名前を呟き再び泣き出しそうな表情をつくる真由美にマユリは何か言おうとしたのだが、雨竜とペッシェの漫才に飽きたザエルアポロに遮られ口を閉ざした。
ザエルアポロは雨竜達からマユリへと目線を移し余裕の笑みを浮かべる。


「さて…改めて聞こうか…君は一体誰……いや、やはり聞くのはよそう…所詮君も僕に消されるだけの存在…名など聞くだけ無駄なことだ。」

「そうかネ?…だが、私は君の名前を聞かせてもらわないと困るんだがネェ…」


ザエルアポロに問われマユリは立ち上がり喋りながらザエルアポロの前に立つ。


「なぜ…?」

「なぜ?馬鹿かね君は?そんなもの決まっているじゃないカ……君を瓶詰めにした時に瓶に名前を書くためだヨ!」


ニヤリ。とマユリは笑う。
その笑みと言葉にザエルアポロはピクリと片眉を上げた。
しかしその後すぐ自分を瓶詰めにするというマユリの言葉にザエルアポロは笑い出す。


「先ほど僕は君の名を聞くなど無駄だと言ったね……しかし、僕に対し興味深い事を言ってくれた君に敬意を評し僕も名前を聞いておくとしようかな?僕のマリオネットになってもらう為にね…!」

「まずい…!あの羽は…!!」

「涅隊長…ッ!!」


ザエルアポロの羽が素早くマユリを食らいつく。
2人は助け出そうにも体が上手く動かない為救出はこんなんとなった。
そして真由美は苦しんでいた恋次達を見てきたのに関わらず慌てる様子もなく泣いてゆるくなった鼻をウティルから貰ったティッシュでかんでいた。
真由美とネムだけが心配しないなか、ザエルアポロの手にはマユリの人形が握られていた。


「隊長格かなんだか知らないが、君らが来たことで何かが大きく変わる事はない……残念だが君達の期待は儚く散りそうだ…!同情するよ、君達の無意味な結末に…」

「そうかね?」

「……!」


マユリの言葉にザエルアポロの笑みは消えた。
マユリは倒れていた体をゆっくりと起こし、眉間にシワを寄せるザエルアポロとは反対に笑みを浮かべる。


「同情するのはこちらだよ…君はこれから君の理解の追いつかない世界を経験するのだからね……」


不敵に笑うマユリにザエルアポロは眉をさらにひそめ、減らぬ口を、と悪態を付く。


「なら、やってみるといい…まあ、やる前から君の死は免れないがな…」

「―――ッ!!」

「マユリ様…!」


ザエルアポロは余裕な態度のマユリに勝気な笑みを浮かべ、雨竜のように額を指で弾く。
その瞬間マユリは後ろに弾かれたように倒れ瓦礫に倒れた。
起き上がり睨みつけるマユリにザエルアポロは次々とマユリを苦しませ、そんなマユリを見たくないとネムが助けだそうとするが逆にネムもザエルアポロに返り討ちにされ瓦礫に叩きつけられた。
苦しげにくぐもった声をもらすネムだが立ち上がることも出来ずただ苦しんでいるマユリを見つめるだけである。
そんな上司と部下が苦しんでいるというのに真由美は無表情で見つめるだけで恋次達のように焦ることも心配することもない。
それをウティルは不思議そうに見るが、今、聞いても多分答えないだろうと思い何も聞かず苦しむマユリへと目線を戻す。


「残念だよ、とても…」


苦しむマユリを見下ろし、ザエルアポロは愉快そうに笑みを深め笑いをもらす。
そして、マユリの腹を割りカラフルな内臓や骨などのパーツを1つ取り出す。


「隊長格といえど所詮この程度……僕の能力の前には手も足もでない。」

「―――ッがは…っぐ…!!」


そのパーツを粉々に粉砕するとマユリの口から胃液が吐き出される。
そして次々と内臓のパーツを粉々にし、外からも中からもザエルアポロはマユリを弱らせていく。


「アハハハハ…!!無様だな!隊長格!!その毒々しい外見はまさしく見かけ倒しと言う訳だ!!」

「貴様ァ!この私にこのような真似をして…!!タダで済むと思うカ!!」


睨みつけるマユリにザエルアポロは笑みを深め上機嫌な笑い声をもらす。
立ち上がり声を上げるマユリにザエルアポロは笑いながらまた1つパーツを粉砕した。
すると足のどこかのパーツだったらしく、マユリは前に倒れこんでしまう。


「隊長格がこの程度とは…まったく残念だよ」

「こ、のォ…!」


怨めしいほどの気持ちで一杯なのかマユリの睨みは更に鋭くなり、ザエルアポロへと手を伸ばす。
だが、ザエルアポロに腕のパーツを粉々にされ、次々と体中の骨を砕いていく。


「まさか…ッこの私が…!こんなところで命潰えるとは……!!」

「終わりだよ…」

「グ…ッ!」

「マユリ様ああああああ!!!!」


首の骨を折ったのかマユリはドサッと瓦礫の上で倒れこみ指1つ動かす事はない。
ネムの叫び声だけがただ虚しく青空に木霊した。

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