(142 / 158) 浦原娘主 (142)

ドサッと倒れたマユリに恋次と雨竜は言葉も出なかった。
ただ、真由美だけは相変わらずの無表情で顔色1つ変えず倒れるマユリを見つめる。


「アッハハハハハ!!!簡単すぎてつまらないなあ!!!もっと手応えがあると思ったのに!!」

「なーーんてネ。」

「――!!」


手応えもなく、簡単に死んでいったマユリに高笑いを上げていたザエルアポロだったが、いつの間にか死んだはずのマユリが目の前に舌を出して現れ、目を丸くし距離を置く。


「ふう、やれやれ…と」

「お前…!なぜまだ立てるんだ…!?」


倒したはずなのに、殺したはずなのに、と理解が出来ないザエルアポロは混乱する。
マユリは混乱しているのが目に見えて分かるザエルアポロに手を前に出し、手を前に出したマユリに何かするのかと思ったザエルアポロが構える。


「何が?」

「く…ッ!」


だが攻撃ではなくマユリのその手は耳(?)へと持っていき、馬鹿にするような声を出す。
確実に馬鹿にされたことにザエルアポロは奥歯を噛み締め、残りのパーツを粉々に握りつぶした。
するとマユリは口から胃液のようなものを吐き出し全く効いていないというわけではなく少しだがザエルアポロは胸を撫で下ろす。


「なんだ…効いているじゃないか…」

「…やめ給え」

「…!!」

「もうそのゲームは飽きたんだ。」


安堵していた矢先、平気そうな声でマユリは立っていた。
平然と立ちこちらを見ているマユリにザエルアポロは1歩後ろへと下がる。


「起きろネム。」

「はい。」


ネムもどうやら演技だったようで、先ほど叫び声を上げていたのが嘘のように無表情に戻り立ち上がった。


「あいつがそう簡単にやられるとは思わなかったが……ここまでされると正直ムカツク…」

「つーか…本当にどうなってるんだ?」

「我が君…これは……」

「これはー…」


「くそお…!!」


唖然とする恋次と雨竜とウティル。
ウティルは今まで無反応だった真由美が何故ザエルアポロの技が効かなかったか、聞き、それを真由美が答えようとしたその時、ザエルアポロの声に真由美は言葉を切り前を向く。
真由美が前を向いたので自然とウティルも前を向く事になり、目線の先には悔しがりマユリの人形を地面に叩きつけ、その上足で踏みつけるザエルアポロの姿が映っていた。


「くそ!くそ!くそ!くそお!!!」


マユリの人形を踏みつけ粉々にすると確かにダメージはあるようだ。
だが、マユリは悲鳴の1つも上げず笑っていた。


「――ッ何故だ!!内臓も健も全部潰した!!なのに何故お前は死なない!!!一体なんの能力だ!!」

「…煩いやつだねえ、なんの能力でもないヨ…ただ君の能力は、もう見飽きた…と、言っているだけだ。」

「なんだと…!?」


唖然とするザエルアポロをよそにマユリは倒れている雨竜へと指差す。


「そこの滅却師、私はとても用心深い性格でネェ……一度戦った相手には必ず戦いの最中にある仕掛けを施しておくんだヨ…奴の体内に私は無数の監視用の菌を感染させている」

「な…ッ!」

「君らの戦いはその菌を通してすべて観察させて貰ったヨ…だからここへ来る直前に全ての腱と臓器にダミーを1つずつ揃えてから来た」

「馬鹿な!!僕がこの能力を見せてからまだ一時間も経っていないぞ!…そんな短時間でそんな真似…出来る訳が無い…」

「それができるから此処に居る訳だが?」


マユリの言葉に真由美とネム以外の全員が驚愕し、特に驚きが大きいのは雨竜とザエルアポロだろう。
恋次はそんなことできるはずがねえ、と思いながらも変人の集まりと言われている十二番隊をまとめて(いるかは不明)いるマユリのことだから、と半信半疑なのだろう。
…というかマユリだから出来るんだろうなあ、と認めていた。


「ま…待て!」

「何だネ…五月蠅いヨ」

「う、うるさい!?まだ一言しか喋ってないだろ!菌て何だ!いつの間にそんなものつけた!?あの戦いの最中にか!?僕は何も聞いていないぞ!!か、監視って一体どの程度見えてるんだ!?普段の生活も監視してるんじゃないだろうな!?人権侵害だ!!今すぐ外せ!!大体お前は…ってさっきから何だその顔!人の話聞いてるのか!?」

黙れ外道。

「先に言われたーーー!!外道はお前だろ!!お前が…ぐッ!…げほッ!…っ!」

「止めろ!石田…!もう喋るな!」

「止めるな阿散井ッ!」

「つーか、それ今聞かなきゃなんねえことか?」

「今聞かなきゃいつ聞くんだよ!!」


『だったら喋ってくれなさそうな涅隊長より親切に分かりやすく教えてくれそうな真由美さんに教えてもらおうぜ』、という恋次の提案の雨竜もマユリは喋ってくれないと思っていたのか頷き、咳き込む雨竜の代わりに恋次が真由美に聞こうとした、その時…


「!」


1人瓦礫の上で立っていたネムが後ろから触手のような物に捕まり空高く吊られてしまう。


「ネム…!!」

「ハッ!油断だな!隊長格!!部下の足元に気配りが足りないぞ!!」

「貴方は勘違いをしておいでのようです、私を捕えても人質にはなりません」

「黙れ!!僕はお前に喋ってるんじゃない!!!」


真由美は突然ネムが捕まりネムの名を呼ぶ。
ネムも勿論人間ではないので丈夫(すぎる)類に入るが、一応生みの親の1人でもある真由美は大事なネムが捕まり心配でならなかった。
だが、マユリはただ黙って顔1つ変えず吊られるネムを見上げるだけだった。
自分に見向きもしないマユリにザエルアポとは苛立ちの声を上げる。


「聞いているのか隊長格!!僕はお前に喋ってるんだ!!」

「………全く…どいつもこいつも…ピイピイと五月蠅い事だヨ…」

「――!!」

「卍解…≪掻きむしれ、金色疋殺地蔵≫」


はあ、と溜息をつきながらマユリはゆっくりと斬魄刀を抜き、卍解する。


「…な…何なんだこいつは…!?一体どこから…!!」


突然現れた芋虫と赤ん坊を掛け合わせたような物にザエルアポロは唖然とし、声を震わせる。
すると金色疋殺地蔵の口が開かれ紫色の煙を吐き出した。
それを見て真由美はウティルに高い場所へと避難して、と命じウティルは素早く真由美を横抱きにしてネムを捕まえている触手の上へと飛び上がり着地する。


「これは…!このガスは病原菌か…!?くそっ!こんなもの…すぐに解毒して…!!」


ザエルアポロの肌は段々と紫色に染まっていき、指先を光らせ解毒しようとするが毒が回るのが早いのか追いつかず手にも紫色に染まっていく。


「なに…!?くそ!どうなっているんだ!この毒は!!」


今度は羽の赤い部分で解毒を作ろうとするが羽の部分も毒に染まっていき、腐っていく。


「時間さえあればすぐに…くそっ…くそ!くそ!くそ!くそおおおおおおおお!!!!」


その間にも金色疋殺地蔵はゆっくりとザエルアポロの元へ向かい、そしてザエルアポロは声を上げながら金色疋殺地蔵に食べられてしまった。

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