(146 / 158) 浦原娘主 (146)

真由美は数十分、または数時間、歩きっぱなしだった。
遠くで目的地は見えるものの目的地の目印が大きすぎるからか、歩いても歩いても近づく気配もない。
ぐったりし倒れるかもしれない、と思いながらも真由美は恋次達と隊長の元へと向かう。
目的地に近づけば近づくほど戦っている音は大きくなり、振動も体に響いていく。
だがやっと着いたと喜んだ時、ふと視界に入った人物に真由美は目を丸くする。


「白哉様!?」

「真由美…」


その人物は白哉だった。
他にも剣八や一護がいるが真由美は驚きすぎて白哉しか見えていなかった。
真由美は白哉の姿を見て満面の笑みを浮かべ白哉の元へと駆け寄る。
それによってマユリの機嫌が悪くなり、一護に呼び捨てにされ機嫌は絶好調に降下していく。
一護はマユリに人を殺せるような目で睨みつけられ冷や汗をかきまくっていた。


「白哉様!!」


砂漠で足元が覚束ないが走って駆け寄ってくる真由美を白哉は嬉しそうに、そして愛しそうに見つめ待ってくれる。
最後はこけるように抱きついたが、白哉は真由美をしっかりと抱き止めてやる。


「真由美…無事だったか…」

「はい!霊力は封じられちゃいましたがウティルと恋次くん達とマユリさんのお陰で怪我はありません!!」

「ウティル…?」


白哉の心の底から安堵した声に真由美は白哉と再会できて嬉しそうに笑う。
聞き覚えのない名前に白哉は首をかしげ、そんな白哉に真由美は後ろにいたウティルを振り返った。


「あの破面です!ウティルはどうやら私の味方らしくて十刃の1人からも守ってくれました!」

「そうか……」

「………」


ウティルは主である真由美に自分を紹介され、顔をあげ真由美から自分へと目線を移す白哉に小さく頭を下げる。
白哉はルキアの方を取ったとは言え自分の知らない間に自分以外の者が真由美の側にいることに少々嫉妬心をあらわにさせ鋭い目線をウティルに向ける。
ウティルはそれに気付いているが真由美以外どうでもいいので無視である。


「心配には及びません、私も一緒に参りましょう」

「卯ノ花さん…!」


嫉妬心を燃やす白哉に気付かず真由美は久々の白哉に寂しさもあるのか普段お嬢様教育の賜物で人前でも2人っきりでも力の限り抱きしめない真由美が白哉に抱きつく。
真由美にとって力を思いっきり入れても白哉にとっては微弱なもので…真由美の温もりに白哉はウティルを睨んでいた瞳を真由美へ戻し、優しい瞳へと戻す。
白哉も敵のど真ん中にいて心細かったのだろう、と気付いており真由美の頭を撫でてやるが、卯ノ花が現れ、マユリとの言い合い(?)に2人は顔を上げる。


「ほう、黒腔を解析したのか…」

「はい、マユリさんが戦った十刃は研究者だったらしくて…その十刃の集めて解説した黒腔のデータをマユリさんは貰っていました。」


真由美の説明に白哉はそれほど興味をしめさず『そうか』というだけで真由美を堪能していた。


「…よく考えて喋る事だネ……"解析した"という事は黒腔を途中で閉じる事も出来るという事だヨ」

「それは流石ですね……勇音」

「はい!」

「貴女はここへ残って朽木隊長達の補佐を…さあ参りましょう、黒崎さん」


片方は微笑み、片方は睨みつける。
双方の話しも終わり、一刻も早く現世へ向かおうと卯ノ花が一護に声をかける。
だが一護は目の前の敵に引くことはなく、焦った声で首を振った。


「ま…待ってくれ卯ノ花さん!あのヤミーって奴は強いんだ!俺も残って3人で戦った方がいい!」

「思い上がるな黒崎一護…護廷十三隊の隊長に兄如きが助けになる腕の者などおらぬ」

「白哉…」


渋る一護に痺れを切らしたのはマユリでもなく白哉だった。
白哉は真由美の方に手を置きながらいつもの表情へと戻し一護へと振り返る。


「兄の勤めは何だ…兄の勤めはあの街を護ることだ……行け、兄は空座町の死神代行だろう」


白哉の言葉に一護はハッと我に返り、目の前の敵ばかり見ていた瞳を今は遠くある自分の生まれた街に向ける。
黒腔はマユリとネムが起動させ来たときより大きく安定した黒腔が姿を現した。
その黒腔を見上げ、一護と卯ノ花は現世へと向かうため闇に包まれている黒腔の中へと入る。


(一護様…卯ノ花隊長……どうかご無事で…)


真由美は攫われなければマユリについて行っていたか現世で戦っていただろう。
今は虚王の姉だからと傷はないがもし姉ではなければ傷ひとつで済む話ではない。
真由美はこの戦いの激しさに拳を握りながら2人の…否、仲間達の無事を祈る。


****************


一護が去り、その場はヤミーと戦う剣八と、それを見つめる真由美達が残されている。
虚圏にはすでに十刃はヤミーしかおらず、上位の十刃は既に現世におり、虚圏には誰一人いない。
1番厄介な虚達の王であるディオスもこの戦いには手を出さないと言っていたと言うのだから数に数えることはないだろう。
因みに白哉達はディオスの存在を十刃から聞き、既に知っていた。


「兄は何故此処へ残った、涅マユリ」


楽しそうに笑いながらヤミーと戦う剣八を見ながら真由美はその激しすぎる遊びにあわわ、と顔を青ざめる。
過去に何回も剣八とやちるに連れ回されたことはあるが、やはり彼らの底なしの体力と戦闘馬鹿な脳みそにはついていけなかった。
ハラハラさせる真由美をよそに白哉は黒腔の起動に必要な2つの黒い柱の一つに座って暢気に剣八の戦いを見物していたマユリを横目で見つめて声をかける。
白哉の言葉にマユリと真由美は白哉へ目を移し、マユリは惚けるたように顎に手をやるが白哉は表情崩さずマユリを見上げていた。


「はて…その答えに君が興味を持つとも思えない質問だネ。」

「兄の興をさかせるものなら現世の方が多い筈だ…それに兄には真由美は私が救出すると言ったはず………何の意図があって此処へ残ったのかと訊いている」

「おお、用心深い事だネ…安心し給え、君が肝を冷やす様な事は何も企んじゃいないヨ……そもそも真由美を君に任せる事ほど心配なことはない…ただ真由美を心配しただけだヨ……それによく考えてみ給え、こちらの方が面白い死体が多い…どうせ現世での戦いが終われば向こうから勝手に黒腔が開く……それからゆっくり現世へ行って死体になった連中を一体一体じっくり調べさせて貰うとするヨ。」

「…………」


真由美の事になるとお互い引くことを知らない両者だが、マユリの言葉を聞き白哉は黙ってしまう。
体は剣八の方を向け顔だけマユリに振り向いて一言も喋らずじっと見つめる白哉にマユリは無意識に眉をひそめ、真由美もそんな白哉を不思議そうに見上げる。


「白哉様…?」

「…………」

「…何だネ?」

「…………」

「何だネ!?何だと訊いているんだヨ!私は!!言いたい事があるなら言い給えヨ!!」

「マ、マユリさん…!落ち着いて!ね?」


興奮して苛立つマユリを白哉の隣から落ち着かせようとするが、白哉は青筋を立てるマユリから背を向け剣八の戦いに目線を戻した。


「いや、兄の口から出た言葉とも思えなかったのでな…少し驚いた…」

「…何……?」

「今の言葉は黒崎一護を現世に送ったことで戦いが終わると言っているように聞こえる…黒崎一護の勝利を信じていると言っているように聞こえるぞ…」

「下らん。」


白哉の言葉に真由美は白哉からマユリへと見上げ、マユリは片眉をあげ自分が苛立ちで高ばった気持ちが一気に冷めるのが分かる。


「下らんヨ、それこそらしくない言葉じゃないのかネ?朽木白哉」

「…………」


白哉はマユリの言葉に小さくだが口端を上げ、側にいた真由美は白哉が小さいが笑ったことに目を見開いた。

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