(147 / 158) 浦原娘主 (147)

大きな音を立てて倒れるとその拍子に砂煙が舞う。
ヤミーと戦っていた剣八がヤミーを倒したのだ。


「チッ…ようやくぶっ倒れやがったか……頑丈な野郎だ…」


動かなくなったヤミーに剣八はお終いか?と言いながら蹴りつける。
それでも動かないところを見るとすでにダウンらしい。
息をするたびに胸を上下へ動かしているので死んではいないが、剣八はもうヤミーに興味は無いようで黙って見ていた白哉に声をかける。


「おい!朽木白哉!こいつはもう駄目だ!!後はてめえにやるよ!」

「言葉の意味が分からぬが?」

「馬鹿かてめえは…今まで見ているばっかで暇だただろうが……後は止めだけだからてめえに譲ってやるって言ってんだ」

「成る程…私に貴様の半端な仕事の後片付けをしろと言っているのか?…………身の程を知れ。」

「なに…?」


白哉はハラハラと見上げる真由美の頭をひと撫でしてから歩き始め、真由美は戦争が起きないか心配そうに白哉の背を見送る。
剣八は白哉の言葉に片眉をあげ、誰もが震え上がるであろう低い声と顔つきで睨みつける…が、白哉がそんな剣八に恐れるのなら剣八に喧嘩は売らない。


「び、白哉様…剣ちゃん…喧嘩はやめて下さいよ〜?…一応人間がここに居ますからぁ……」

「いいじゃーーん!!」

「うわっ!!…ぶッ!」


剣八と白哉のまとう空気が凄く怖くて真由美はつい声を小さくして忠告する。
――が、急に背後からタックルされ真由美は踏みとどまることできず砂漠に前から倒れてしまった。


「アハハ!!真由美ちん!マヌケー!!」

「や、やちる…ちゃ……」


後ろからタックルするように抱きついたのはやちるだった。
剣八あるところにやちるあり……これは尸魂界では常識である。
やちるは真由美の背中に乗り、楽しそうに声を上げて笑っていた。


「もう!真由美ちん何処行ってたのー?剣ちゃんとずっと捜してたんだよ!!」

「そ、そうだったの?」

「そう!剣ちゃん十刃の人と戦っててもう忘れてると思うけど最初は真由美ちんを捜してたんだよ!!」

「よく迷子にならなかったね…」

「びゃっくんのところに真由美ちんがいると思ってびゃっくんの匂いを辿ってきたの!」

「白哉様の匂い…?」

「甘いお菓子のにおい!」

(ああ……ワカメ大使…の人形焼………常に持っているのね…白哉様…)


もう方向音痴という名前を我が物にしている十一番隊の隊長と副隊長に真由美は苦笑いを浮かべるしかなかった。
真由美が嫌がらないためウティルは驚いていたがやちるを無害と判断し命令をされるまで待機していた。
笑っていたやちるは満面の笑みを消し、後ろから無理矢理真由美の顔を自分の方へ向けさせ、真由美はゴキッという音と共に激痛に小さく声をあげる。


「い"ッ……や、やちるちゃ…痛い…」

「心配したんだよ、真由美ちん…」

「やちるちゃん…?」


痛みに涙目になりながらやちるに手を離すよう言おうとしたその時、普段とは違う声色のやちるに真由美はやちるを見る。
やちるはいつもの可愛らしい笑顔ではなく、悲しい瞳で真由美を見ていた。
そんなやちるに真由美は目を丸くして言葉が出なかった。


「真由美ちんが四番隊に入って十二番隊になってから…死神になってから全然会ってくれなかったし……同じ副隊長なのに会議には来ないし……あたし凄く寂しかったよ…」

「やちるちゃん…」

「遊ぶ時間がなくなったって真由美ちんの友達だもん…だから、すごく心配したんだよ……攫われた場所でひどいことされてないかなって……殴られたり、痛い思いしてないかなって……剣ちゃんにそればっかり聞いて怒られてばっかりで……心配、したんだよ……」

「やちるちゃん………」


眉間にしわを寄せて今にも泣きそうなやちるに真由美は上に乗るやちるを落とさないように体をうつ伏せから仰向けにさせ上半身を起こし、不思議そうに見上げるやちるに微笑を向けた。
そして、優しくやちるを抱きしめて安心させるようにやちるを抱きしめる腕の力を強める。


「ごめんね、やちるちゃん……心配かけさせちゃったね…」

「真由美ちん…」

「ありがとう、やちるちゃん…こんなところまで探しに来てくれて…帰ったらまた遊ぼう?」

「本当…?」


おずおずと顔を上げるやちるに真由美はにこりと笑みを浮かべて頷く。


「うん、遊ぼう。きっと一護様や他の隊長達が藍染達を倒してくれる…終わった後暫くは遊べないかもしれないけど…だけど、また遊ぼう。」


真由美の言葉にやちるは悲しげだった表情が一変して満面の笑顔と変わる。
いつものやちるになり真由美は安堵したように笑い抱きついてくるやちるを真由美も抱きしめる。



「くそ…、くそ……、くそおおおお!!!!」


「「!」」



再会を噛み締め、そしてルキアが羨ましそうにやちるを見ていたその時、倒れていたヤミーが起き上がり虚閃を剣八と白哉へと向け、その爆風に真由美は目を瞑りやちるを抱きしめる。
すると突然爆風が止み、顔を上げて後ろへ振り返るとウティルが己の斬魄刀を地面に差し"水守"で守っていてくれていた。


「ウティル!?」

「ご無事ですか、我が君」


先ほどまで黙っていたウティルの登場に真由美は目を丸くさせ、ウティルは真由美の無事を見て安堵する。
突風が止み、ウティルが真由美の前から退くと真由美の目の前には起き上がったヤミーに向かっている二人が見えた。


「大した虚閃だぜ…このやろォ…まだ力余ってるんじゃねえか!」

「全くだ…よくもこの状態で後は止めだけだと言えたものだ浅薄な見立てに哀れみすら覚えるな」

「ハッ!俺にとっちゃあのくらいで後は止めなんだよ!てめえにゃ荷が重かったみてえだがな!!」


剣八の言葉に白哉は珍しく端麗な眉をひそめ、下を走る剣八を睨みつける。
剣八も白哉の睨み以上に睨みつけ、お互い一歩も引く事はない。
最初に動いたのは白哉だった。
白哉は『面白い』、と言って飛び跳ねている状態のまま千本桜を放し、卍解する。
それを見て真由美は顔を真っ青にさせた。


「ちょ……白哉様!剣ちゃん!ここまで来て本気で喧嘩しないでくださいよーー!!!」

「アハハハ!!剣ちゃん楽しそうーー!!」

「笑ってないでやちるちゃんも止めてよ!!あの2人本気で喧嘩しそうなんだけど!!」

「なんでー?剣ちゃんが楽しそうだからいいじゃん!」

「いやいや!!良くないよ!?良くないから止めようとしてるんだけど!?こちとら今は人間だっつーの!!」

「いいじゃないか、真由美。どっちが死んでもいい研究材料になるしネ」

「マユリさんまで何を言ってるんですか!もう!!」


柱の上で暢気に両者共倒れを希望するマユリに真由美はええ!?と振り返ってツッコミを入れる。
そんな真由美をよそに2人は今にでも斬り合いが始まりそうになっていた。


「荷が重いかどうか…その身を以て確かめるが良い」

「面白れえ!!俺もてめえとは一遍戦り合ってみたかったんだ!!」


剣八もやる気な白哉に恐れるどころか不敵な笑顔を浮かべ、本人共々やる気になっていた。
むしろ漢字で表すと"殺る気"である。
しかし、お互いの剣がぶつかり合う寸前にヤミーが2人を襲いかかり、二人は邪魔者であるヤミーを倒す。
転がっていくヤミーを見ながら真由美は(なんでこういう時だけ息ぴったりなんだろう)と思ったとか思わなかったとか…


「さて…」

「続きと行くか…!」


邪魔者を排除し、斬り合いを再開しようとして2人が構えたとき、倒れたはずのヤミーが再び起き上がった。
起き上がったヤミーにまた斬り合いを邪魔された苛立ちから2人はヤミーを睨みつける。


「しつこい奴だ…本当に…」


白哉は本気で鬱陶しそうに眉をひそめ、鬱陶しそうに呟いた。

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