(148 / 158) 浦原娘主 (148)

憤怒を司るヤミーは怒りで更に力を付けて不死身の如く立ち上がった。
しかしヤミーは剣八と白哉…2人に倒されてしまった。


「…………」


真由美はヤミーを倒した後2人で本気の喧嘩をし始めた六番隊と十一番隊の隊長に呆れて物も言えない状態となっていた。
隣で剣八を応援するやちるの元気のいい声を聞きながら目の前のドンパチの現実逃避していた。


「真由美様…!!」

「きゃッ!…ル、ルキア!!」


ハハ…と乾いた笑いを浮かべながら斬り合いを見ていた真由美だったが背後からまたタックルのような抱きつきにあう。
今度は座っていたため、腕で支えたお陰で倒れる事は免れたが、突然のことで心臓がバクバク言っていた。
後ろを向くと真由美を抱きしめていたのはルキアだった。


「真由美様あああ!!!よくご無事でえええ…ッ!!!」

「お、落ち着いてルキア…ちょ、首…首絞まってるんだけど…っ」

「もう別れてから恋次なんかに真由美様を任せてよいのかとばかり考えて戦いに集中できなかったし海燕殿に化ける馬鹿十刃はいるし!!もう心はボロボロなんです!!真由美様!こんな私を慰めてくださいませ!!」

「慰めるって……こ、こう?」


ルキアはすでにキャラ崩壊し、『お前誰だよ』となっているがそんな事にツッコム暇なく真由美はルキアの迫力に負けてしまっていた。
慰めろというルキアに真由美はどう慰めればいいか分からず、ぐずぐず、と鼻を鳴らしながら泣くルキアの頭を優しく撫でてやる。
『よしよし、頑張ったね、いい子だったね』という優しい言葉をオプションで付けてルキアを慰めていた。


「―――ッ真由美様……!!」


真由美に頭を優しく撫でられ慈母神だと誰もが言うであろう優しく暖かい微笑み(ルキア視点)を向けられルキアは抱きついていた真由美から離れ、ブワッと再び涙を流し背後には色々な花が咲き乱れていた。
お前はどこの乙女だ、と一護が居たらそう突っ込んでいるルキアは頬を染め、憧れる真由美に慰められてもう死んでもいいと思っていた。


「あーーー!!ルキるんずるーーい!!真由美ちん!あたしにもしてー!!」

「えー…」

「む…!駄目です!真由美様の頭撫で撫では私だけの特権です!!!例え草鹿副隊長でもそれは譲れません!!!」

「え?は?」

「ブーーー!ルキるんのケチー!!やっぱりびゃっくんと兄妹だよね!!!超ケチなところが似てるよ!!」


胸を張って言い切ったルキアにやちるはブーブー、と頬を膨らませていた。
睨み合う2人に挟まれ真由美はハラハラしており、どうしたらいいか分からなかった。
そんな喧嘩慣れしていない真由美のところに織姫を奪い返しに行っていた恋次達が現れ、ルキアが恋次を巻き込み、やちるが織姫を巻き込み、現状は更に悪化していく。


(もう、好きにして……)


もう何時間こうしているのだろうか…もしかしたら数十分なのかもしれないが、ここには時計がない。
だから時間が分からず、真由美的には数時間経って感じていた。
すると今までじっと真由美の側に寄り添っていたウティルがハッと何かに気付き弾けたように顔をあげ、偽の空を見上げる。


「ウティル?」

「……………」

「ウティル?どうしたの?…ウティル?」


そんなウティルに気付いた真由美はウティルに声をかけるが、ウティルは無言のまま真由美には目を向けず空を見上げているままだった。
それには真由美も首をかしげるばかりで、ウティルは数分空を見上げる姿のままだった。
首が痛くないのかな?とずれた事を思っているとウティルがやっと口を開く。


「我が、君……」

「なに?」

「藍染様が……封印…されました……」

「「「―――!!」」」


ウティルの静かな声は喧嘩の騒がしい中でもはっきりと聞こえた。
それは真由美だけではなく、斬り合いをしていた剣八と白哉、どちらが真由美に撫で撫でしてもらうかを言い争っていたやちるとルキアもウティルの声が届き口と手を止めた。
その場は煩かったのが一変し音が突然止み、静まり返った。


「はッ!やっとかよ!!一護のやつ今まで何してたんだ!」


その静まり返った中で1番に言葉を口にしたのは剣八だった。
剣八が言葉を口にしてからは各々安堵の息をついたり隣の者と喜んだりしていた。
剣八は今まで封印に至るまでどんなに時間をかけるんだ、と文句を言い、何で殺さねえんだ、とやはり文句言っていた。
それにやはり白哉が喧嘩を売り、剣八がその喧嘩を買う。
また斬り合いが始まるかと思ったがそれは次のウティルの言葉に中止になる。


「………藍染様が封じられ、陛下が動かれる……」

「陛下…だと…?」


ポツリと呟いたウティルの声はやはり小さい。
だがそれでも全員の耳には届き、その場は再び静まり返った。
虚王は動かないと聞いていた白哉は眉をひそめ、深刻な表情を見せるウティルを睨むように見つめる。
真由美は弟が動くとは思っていなかったのか唖然となっていた。


「秋斗が…動くって…どういう……」


真由美の言葉にウティルは俯き、眉をひそめ、何かに耐えているようだった。
震えるほど拳を握るウティルに真由美はゆっくり拳から俯くウティルへ目を戻す。
しかしウティルはゆっくりと顔をあげ、真由美を真っ直ぐに見つめ静かに口を開いた。


「我が君…どうかお逃げください……」

「え…」

「陛下は尸魂界の全ての者を殺した後現世の死神、仮面の軍勢をも殺し、そして……虚圏に取り残された死神たちを殺す気でいらっしゃるのです……それは我が君とて例外ではございません!ですから…!どうか陛下の手の届かない場所へとお逃げください!!」

「それはどういう……意味、なの……どうして……」

「どうか…我が君…どうか…!」

「…秋斗が…私を、殺す…?」

「我が君…どうか…っ」


ウティルの言葉に白哉達は目を丸くさせる。
そして真由美は弟が自分さえ殺すと聞かされ周りより更に目を丸く驚いて見せた。
ウティルは真由美の問いに答えずただ『逃げてください』、と言うだけでそれ以上は何も言わない。
そんなウティルに恋次が大股に近づきウティルの胸倉を掴む。


「俺達が殺されるってどういう意味だよ!!この戦いには王って奴は手を出さないんじゃなかったのか!!!」

「それは……」


胸元を掴まれ少々息苦しいがウティルは口篭る。
口篭るウティルに恋次は苛立ち更に声を上げるとやっと口を開いた。


「陛下が藍染様の戦いには手を出す気は本当にございませんでした…」

「じゃあなんでこの戦いにその陛下って奴がが出てくるだ!!」

「……藍染様の戦いは藍染様の封印とともに終わりです……」

「だから手を出してもいいってか!?ふざけてんのか!!?」

「………ッ……」

「やめて!」


王がどれほどの力を持っているのか知らないが藍染の下でも同等の力を持っているとは思えない。
藍染以上の力を持っている…その考えにいたるのが普通だろう。
一護はすでに藍染の戦いで消耗しきり、戦えるほど力はないだろう。
隊長達も同様である。
恋次達は一護が死神の力を失った事など知らず、新たな敵に焦り始める。
ググ、とウティルの胸元を掴む力いれた恋次だが、真由美の声に手を離す。


「やめて……今…ウティルを責めてもなにもならないわ…」

「真由美さん……」

「……………」

「…ウティル……」

「…はい……」


俯く真由美に恋次は何も言えず気まずそうに目を逸らす。
真由美は俯いていた顔をゆっくりと明け、力強い瞳でウティルを見つめ、ウティルはその瞳にいやな予感がしてならなかった。


「私の中にある殺気石を取れる?」

「…………はい…」

「じゃあ、取って」

「……………」


ウティルはイヤな予感が的中したと苦虫を噛み潰したような表情をし、取れという命令に従おうとはしなかった。


「ウティル、取りなさい」

「……仰せのままに…」


そんなウティルに真由美はもう一度強い口調で命じ、ウティルは頷くしかなった。

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