【やちる視点】
かっしーを初めて見たのはあたしが日課の散歩をしていたときだった。
名前を知らなくていつもお菓子を食べているところしか見てないからかっしーと名づけた。
いつの間にかどっかの屋敷に来ていたあたしはある部屋で女の子を見つけた。
その女の子はあたしと同じくらいで、一人で空を見ていた。
あたしはその子がとても悲しそうに見えて目が離せなかった。
それから毎日あの子のところに行った。
あの子はとても大人しい子だった。
使用人なのだろう。
その人達にも気を使ったり、あまり我が侭を言わない子だ。
あの子はいつも広い部屋で一人だった。
たまに勉強をしているときに来たりするが終わった後は疲れた顔をして寝転がる。
あたしはジッとその子を観察した。
寝転がった後はいつも本を読む。
本を読むときのあの子の表情は何もうかばない。
でも本を読み終わった後はいつもみたいに空をみてるだけ。
何故かその子が気になった。
普段なら何の特徴もないあたしと正反対の大人しそうな子には興味がわかないのにその子と仲良くしたいと不思議と思うようになる。
その思いは毎日強まっていく。
仲良くなって一緒に遊びたい。
一緒に外に行って泥んこまみれになって笑いあって遊びたい。
剣ちゃんの肩に一緒に乗って走り回りたい。
つるりんや弓っち達に悪戯して一緒に逃げて…
でも駄目。
まだお友達になってないから無理なのだ。
いつものあたしなら目の前に姿を現してすぐ仲良くなれるのだがあの子の事になると少し不安になる。
行き成り出てきたらあたしに怯えないだろうか。
嫌われないだろうか。
そればっかり考えて見つめることしか出来ない。
だから最近溜息ばかりついてしまう。
「副隊長、最近どうしたんすか。」
「うるさいなー。今あたしは悩んでるの!邪魔しないでよ」
「悩み〜!?副隊長がぁ!!?」
「あたし、つるっぱげと違うもん。」
あたしが悩んでいるというのにつるっぱげが煩く話しかける。
それにイライラしてしまう。
「ねぇ、弓っちは気になる人がいるけど見ることしか出来ないって時どうする?」
「は?何ですか、行き成り…」
「いいから答えるの!」
「そうですね、僕は忍ぶ恋なんてガラじゃないのでとりあえず仲良くなる事からはじめます。あとはどうにかなるので。」
「話しかける…」
「障害があってこそ恋は燃えるものです。」
「そうだよね!話しかけなきゃ何も始まらないもんね!!ありがとう!弓っち!!」
あたしは急いであの子がいる家に向かった。
後ろで弓っちが何か言っていたが構っていられない。
さっそく家につきあの子の部屋に来るとあの子はいつものように一人でいた。
丁度おやつの時間だったらしく女の人が大量のお菓子を運ぶ。
いつも思うけど子供が食べる量じゃないと思う。
あたしならすぐに完食するのだが、あの子はいつも辛そうに食べる。
そんなに辛いのなら食べなきゃいいのに、と思う。
あたしはその子の部屋に近づいてジッと見つめる。
その子を見つめず、お菓子だけを見つめる。
お菓子に釣られた子供、というのを偽ればもし大人にバレても言い訳は出来るからだ。
その子はあたしの視線に気付き、ビクっと身体を揺らしてあたしを凝視する。
そして手に持っているお団子を横に移動する。
あたしも団子を目で追う。
それの繰り返しだ。
「た、食べる?」
「わー!ありがとう!」
言うタイミングを計っていたらあの子から話しかけてきてくれた。
あたしはそれに喜ぶ。
お菓子ではなくあの子が話しかけてきてくれたことに。
それから喋るのはあたしだけだった。
たまにあの子、かっしーも話しの途中に話しかけてくれるけど、それでもかっしーは口数が少ない。
貴族ってそうなのかな?
それでも嬉しい。
やっと一歩を踏み出せた!
あの子とあたしは友達になれた!
あぁ、でもまだだ。
あの子は外に出たいとは言わないから。
きっとあの子は外の世界を知らないのだ。
だから外に興味を示さない。
だったら、出してあげればいいんだ。
あたしがかっしーを出してあげれば遊べる。
それまでもっと仲良くならなきゃ!
15 / 158
← | back | →