(152 / 158) 浦原娘主 (152)

ちょいグロ注意!

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真由美はたった一人の弟に拒絶され憎まれる。
悲しみはあるが真由美は心の底から弟を嫌いにはなれず閉じていた瞳をゆっくりと開け、真っ直ぐに弟を目に捉える。


「それでも…死神を憎んでいても……秋斗、あなたは私の弟なのは変わりないわ」

「な、に……?」


ディオスは相変わらず憎しみに鋭くさせる目線を真由美に向けていたが真由美の言葉に目を見張る。
だがすぐ苛立ちと怒りで表情を歪ませる。


「何度も言わせるな!!死神の弟など虫唾が走る!!寝言は寝てから言うがいい!!」

「私はあなたが分かってもらえるまで何度も言うわよ!!あなたは私の弟よ!!!あなたはディオスでもない!虚達の王でも陛下でもない!!!私の弟の秋斗よ!!!」

「黙れ!!」

「黙らない!!弟を恐れる姉がいてたまるものですか!!!」

「黙れ…!黙れ…!!黙れ!黙れ!!黙れ!!!!」

「――!!」


声を荒げるディオスに真由美も負けじと声をあげる。
弟と名前を連呼する死神にディオスは我慢できないと己の斬魄刀をヒュ、と音を立てて振り一瞬にして真由美との距離を詰める。
真由美は咄嗟に姫桜でディオスの斬魄刀を受け止めるが怒りで手加減が出来ないディオスに負け押されてしまう。
それでも死神としての力を取り戻した真由美は踏み止まりギリギリと刃と刃が擦られる音を立てながら体全体を使いディオスの刃を受け止める。


「貴様等死神に何が分かるというのだ!!!弟だからと言って私を理解し私を止めれるとでも言うのか!!!」

「弟のッ…弟の悲しみを一緒に背負うのは姉の役目でしょう!!!私達姉弟はそうやって生きてきたじゃない!!思い出して秋斗!!」

「また…その名を…ッ!!!」


ギリギリと押していたディオスだったが真由美に再び名前を呼ばれ力を入れて真由美を突き飛ばす。
倒れないように数歩下がって体制を整えようとしたその瞬間、


「遅い!!」


真由美は振り下ろされた斬魄刀に斬り付けられ鈍い痛みが全身に襲う。


「真由美…!!」


激痛に叫び声を上げる娘に喜助は娘のもとへと駆け寄ろうとしたがウティルに止められてしまい失敗に終わる。
遠くからでも白い服が赤く染まっていくのが見えて喜助は泣きそうになってしまう。


「私に勝てる者などいない…そのくだらない意地のせいで皆より先に死ぬ事になったのだ……せいぜい後悔しながら死ぬがいい!」


痛みに体を震わせる真由美を冷たく見下ろし、止めを刺そうとディオスは真由美の首へ斬魄刀を振り下ろす。
しかしカキン、と甲高い音共に真由美に防がれディオスは片眉を上げた。


「≪森羅万象・一章≫!」

「!」


真由美は痛みであまり出ない力を振り絞りディオスの斬魄刀を受け止める。
斬魄刀を受け止めながら真由美は治癒能力のある技を出し、傷を完璧に癒していった。
ディオスがそれに少し目を見張った隙に力の限りディオスの斬魄刀を押し返して距離を置く。
姫桜の力で傷が消え娘の立つ姿を見た喜助は安堵の息をつき胸を撫で下ろす。
距離を置かれたディオスだったが自分の手を見つめ唖然としていた。


「……治癒能力を持っていたのか…」

「………」

「だが、敵も味方も関係ない無差別のようだな………私の体も治癒されたぞ?」

「1つも傷負っていないんだから関係ないわ」


肩をすくめる真由美にディオスは目を細め『それもそうか…』、と小さく笑った。


「だが、正直体を治されるというのは私にも少々分が悪い……一気に殺すとしよう…」

「!」


そう言ってディオスはゆっくりと斬魄刀の切先を地面に向け前に出す。
それに真由美は警戒心を高め何されても対処できるよう姫桜を構える。
ディオスはゆっくりと瞳を閉じ…


「≪全てを"無"に返せ…≫」


静かに始解した。
斬魄刀から手を放し、手を放された斬魄刀は地面に転がることなく地面に吸い込まれるように柄頭まで沈んでいく。
その瞬間、一瞬にしてディオスと真由美を黒いモノが覆い、真由美は目を丸くし辺りを見渡す。


「どこを見ても無駄だ…ここは私の斬魄刀である"無"の世界…どこを見てもどこに意識を置こうと全て無の前では無駄な足掻きに過ぎない…」

「秋斗…これが…あなたの斬魄刀、なのね…」


また名前を呼ばれディオスは眉をひそめる。


「……この世界では無が絶対……私が絶対なのだ…」


『例えばこのようなことも…』、とディオスが呟いた瞬間真由美はドス、と鈍い音を耳にし、次に再び痛みが全身を襲った。
口から血を吐きながら痛みの原因を見ようと横腹へと目を落とすとそこには黒い斬魄刀の刃が刺さっていた。
それに目を丸くし背後を見るが誰も居ない。
この場は真由美とディオスしかいないのだから誰もいなかった。


「そして、こんなことも出来る…」

「……ッ!!」


ドン、とまた鈍い音共に先程より更に強い痛みが体を走った。
咄嗟に左腕に手をやり、しゃがみそうになるが横腹の刀を一気に抜かれ膝を突き倒れてしまった。
痛みにもがき体をくねらせる真由美をディオスは冷めた目で、だが愉快そうに見下ろす。


「う、で…が…ッ!」

「ここにあるが?」

「ッ!」


横腹より左腕の方が痛みが強く真由美はうつ伏せになりながら目をやるとそこにあったはずの腕がなくなっていた。
切断された所から大量の血が止め処なく出ており、真由美は目を丸くする。
腕がなくなっていることに驚きが隠せない真由美にディオスが静かに呟く。
ディオスの言葉に顔を上げるとディオスの手には自分の腕らしきものが握られていた。


「な…!」

「何故、と言いたいだろう?知っているよ、その表情は…何度も見てきた顔だ……私の斬魄刀は少し特殊でね…始解すると刀がなくなる代わりにこうして黒いモノが現れる。これは外から見ると丸い円状の玉になり私達は宙に浮いている状態となっているのだ…今頃お前の父親は唖然と私達を見上げているだろうな………そして…先ほどお前は横腹を刺され右腕を切り取られただろう?それで分かってもらえたと思うが…この黒く包まれている場所は全て無の刃となっている…いつでもどこからでも私の思う通りに無の刃を出すことが出来るんだ」

「……ッ」

「このようにな…」

「―――ああああああッ!!!」


痛みに耐え息を荒くする真由美に目を細め指を差す。
するとドス、と体に衝撃が走った。
肩に手を当てていた右手の甲を肩もろとも串刺しにしたのだ。
真由美は左腕を切断され血管から血を出していたが痛みに慣れてきたため新たな痛みに絶叫してしまう。
その声にディオスは鬱陶しそうに眉間にしわを寄せる。


「いつ聞いても死神の叫びは不愉快極まりない…」


両手共々使えなくされた真由美は刀を抜かれた痛みにまた声を上げる。
痛みの生理的な涙で頬を流しながら真由美は体を震わせ、ディオスはそんな真由美に完全に興味を失せたように感情の無い瞳で見下ろしていた。


「つまらないな…死神というものはやはりつまらない……何度殺しても痛みを与えただけで叫ぶしか脳がない…本当につまらない……」


はあ、と重い溜息をつくディオスに真由美は痛みで震え血だらけの手で転がっていた姫桜の柄を握り、姫桜を支えに肩膝を立てて立とうとしていた。


「はあ…ッ……あ、きと……やめて……」

「またその名前を…!」

「もうやめて!秋斗!!!」


真由美は涙で濡れた瞳でディオスを見つめる。
ディオスはその涙に少し息が止まり目を見張った。
しかしそのディオスの様子に気付いていない真由美は痛みではない涙に頬を濡らしていく。


「もう、やめて……ッ…こんなことしたって…死神を全部殺したって何も変わらない!!もう初代霊王はいないのに…今の霊王を殺して秋斗は満足するの!?」

「………」

「霊王を殺したら初代の血は途絶える…でも……秋斗が殺したいほど憎んだ霊王はもういないの!!憎しみは殺したからって消えるわけじゃない!!悲しみは殺したからって消えるわけじゃない!!今の霊王を殺したからって何の解決にはならない!!!」

「――ッではどうすればこの憎しみと悲しみを消すことができるというのだ!!!どうしたら死神のせいで死んでいった私の兵士達の恨みを晴らすことができる!!!何も知らぬ餓鬼が戯言を抜かすな!!!お前のような何十年しか生きていない死神如きが我らの気持ちなど分かるはずがない!!!私は王だ!!王は民を…兵士達を守らねばならない!!!守られるだけの王など愚王に過ぎない!!!私は王だから霊王を殺す!!王だから今の霊王に命を持って我々にしてきた事の責任を果たしてもらうまでのことだ!!!初代の血を継いでいると言うのなら当たり前のことだ!!!」

「でもきっと今の霊王を殺したって秋斗は満足しない!!きっと憎しみは増えるばかりよ!!!」

「黙れ…ッ!!」


真由美の言葉に頭に血が上ったのかディオスは一瞬で真由美との間合いを詰め真由美の口を片手で塞ぐ。
突然の事に目を丸くしてディオスを見るがディオスの手を退かそうと残った右手を伸ばすが少女の力では勝てずもがくだけだった。


「黙れ…!!黙れ!黙れ!!黙れ!!!」

「んーーッ!!」

「憎しみを消すことが出来ないのは当の昔に知っている!!!だが……だがッ!私ならまだしも霊王の命令で死神に殺された虚や破面達の思いはどうしたらいい!!どうしたら……、…ッ!」


ディオスが言い終わる前に真由美は姫桜でディオスを斬ろうと腕を振った。
しかしそれに気付いたディオスに避けられたが、真由美は解放され強く塞がれた為両頬が痛み手の甲で方頬を擦る。


「……どうしたら…この憎しみの連鎖を止められるというのだ…」

「秋斗……」

「私とてもう居ない者を憎む事はしたくはない…だが…それが出来ないほど憎しみが大きくなっているのだ………だから、私は尸魂界を消滅させる…」


斬り付けられそうになりディオスは冷静になったのか小さく呟くが最後の言葉に憎しみを込め真由美を睨みつける。
真由美は一瞬の悲しみを見せた弟にかける言葉もなくただ憎しみの篭もった瞳を見つめるだけだった。


「私はお前を斬る……お前は?」

「…私も…秋斗を斬るわ…それが…それしか止める手立てがないもの…」

「……ならば、殺し合いと行こう…」


真由美の言葉にディオスは目を細める。

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