(153 / 158) 浦原娘主 (153)

ちょいグロ注意!


****************


先に動いたのは真由美だった。
ディオスは動くことなく暗闇の中から自分の斬魄刀を出現させる。
真由美は片手だがディオスの攻撃をかわし受け止め大きな怪我はなく斬り合いが続く。
どこからでも何本でも襲ってくるディオスの刃を器用に受け止め避ける。
だが、真由美の背後から刃が迫り真由美は避けきれないと"霞の風盾"で回避しようとしたのだが…


「な…!」

「ああ、気をつけた方がいい…無は他の斬魄刀を嫌う子でな…技は一切出ない」


技を出そうとしても出なくて驚きが隠せない真由美にディオスは笑って伝える。
そのディオスの言葉に真由美は咄嗟に体を捻り後ろへと向け姫桜で受け止める。
刺された横腹が痛いが構っている暇などなかった。
技が出なかったことで出来るだけディオスと距離を置こうと飛び上がる。
この暗闇の場所では外と同じように空中で足をつけるようで、真由美は上へと上っていくがそれをディオスに防がれてしまった。


「その足、邪魔だな…」

「……ッ!!」


その言葉を理解する前に真由美の右足が突然切断され落ちていく。
左腕同様切断されてしまい、真由美は激痛にその場に倒れてしまった。


「あああ"ああああ"あ"ああッ!!!」


言葉にならない声を上げ、痛みを中和しようとするのだが、それでも痛みは弱まることなく服ごと斬られ服の切り口から足の切断面が見える。
ディオスから切断面が丸見えで、ディオスは血を噴出し白い服を赤く染めていく様を見ながら愉快そうに小さく笑い声をもらしていた。
真由美は痛みで汗が大量に出し姫桜を放さず痛む足へと手を伸ばす。


「さあ、次はどこを切って欲しい?」


クスクスと楽しんでいるディオスに真由美は悲しげな目で見つめ、ディオスの休む暇も与えない攻撃に痛みに耐えながら片足で避けていく。
受け止める事が出来なくなった真由美はこけながらもギリギリに避けていった。


「―――ッしま…!」


片足では避けるのが精一杯で気を取られていた真由美の周りにいくつもの刃が襲い掛かってきた。
真由美は飛び上がる時間もなく避ける時間もなく一瞬の出来事だった。
真由美は姫桜で受け止めることも出来ず真由美は抵抗もなく左右前後の刃に体を貫かれてしまう。
幸い上半身と下半身が切り離される事はなかったが皮を切り脂肪を切り硬く脆い人間の骨を貫き柔らかい内臓を刺し、内臓を傷つけられた真由美の口から大量の血が吐き出されていく。
真由美の体を刃が貫通し、姫桜を持った右手が力なく垂れ、姫桜も持ってられず真由美は姫桜を放しディオスの斬魄刀に当たる音を立てながら暗闇に消えていく。
口から血を垂らしながら前へ項垂れたのを見てディオスは口端を上げゆっくりと真由美に近づく。


「口程にもない…たった数十年しか生きていない子供に私が敵うわけが…」

「あ…き、と…」

「!」


フン、と鼻で笑っていたディオスだったが真由美が突然目の前に歩み寄ってきたディオスの服を掴み、ディオスは目を丸くする。
死んだと思っていたのかその驚き加減は表情に出ていた。
真由美は血を吐いた事で声が掠れてしまっているが気にする余裕はなくゆっくりと重い頭を上げ、ディオスを見上げた。


「あきと…あきと…」

「だからその名前を呼ぶなと…!」

「あきと……帰ろう…」

「なに…」


秋斗と聞きたくもない名前にディオスは苛立ちを覚える。
肩の服を握られディオスはその手を退かそうとするもどこから力を出しているか不明だがディオスの力でも真由美の手を退かす事は出来なかった。
だが、ディオスは真由美の右手首を掴みながら真由美の言葉に怪訝そうに見つめる。
真由美はゆっくりとディオスの服を放しディオスの頬へ手を当て悲しげに見つめる。
真由美に悲しげに見つめられディオスに戸惑いが生まれたのか息を呑み体が動かなかった。


「もう、帰ろう……もういい……あきとが…悲しむ事はない………死神が、霊王が憎いなら…私を殴ればいい……だから…帰ろう?」

「ど、こに…どこに帰るというのだ…虚圏は虚の世界…死神如きが住める世界では…」

「家に、帰ろう……家に帰って…お母さんとお父さんと4人で暮らそう…また、あの時みたいに……秋斗が幸せだった時にもどろう………私は秋斗が憎しみだけで生きていくのを見たくない…から…」

「……ッ」


真由美の言葉にディオスの瞳は揺らいだ。
だが真由美の片方しかない手を払い後ろへ下がりその衝撃で刺さって貫いているディオスの斬魄刀が更に刺さり痛みに声をもらす。


「ね……」


痛みに顔を歪める真由美にディオスはつい手を差し伸べ支えようとしたが我に返り手を引っ込める。
真由美は痛みに体を震わせながら腹に刺さっている斬魄刀に手を当て体を支えて体を起こす。


「あき…と……あき…」

「……ッ」


弟を求めて真由美は手を伸ばす。
しかし血を流しすぎたのか意識が次第に薄くなりそして、伸ばしていた手はゆっくりと下がり上半身も重力に従って項垂れる。
ディオスは無言のまま動かなくなった姉を見つめ続けた。


****************


黒い丸い物が出現してから数分……喜助は心配で落ち着けずにいた。


「…………」


しかしウティルは黒い物ではなく妹であるベルシダへと目線を送っていた。
ベルシダも黒い物を見上げていたが兄の目線に気付いたベルシダはウティルへ目線を移す。


「兄さん…なぜ…」

「…………」

「陛下のお気持ちは兄さんも知っているはず…なのに…」

「ベルシダ、陛下は仰ってはいなかったか?私は姉君のために生まれた、と…お前もどんなことをしてでも陛下をお守りするように、私も姉君をお守りする。」

「……兄さんも…死神に殺されたではありませんか……私を庇い死神を殺され陛下に助けられた…それは体が再生されただけではなく記憶も残っているのに…」


ベルシダは兄を悲しげな表情を浮かべながら見つめる。
兄であるウティルは無感情を貫き眉1つ動くことはなかったがベルシダの言葉にウティルは瞳を閉じた。


「…確かに、私はお前を庇い殺された…殺され陛下を悲しませた死神は憎い…だが、姉君が死神だと分かった瞬間その憎しみは消えうせたのだ…」

「な…」

「私はそういう風に作られているのだ…陛下にな……」

「…………」

「姉君を守るために作られた私は姉君が死神だったからこの憎しみは消え、姉君が死神だったから姉君を純粋に守ろうと思える…ベルシダ、お前と命を取り合おうとその気持ちは変わらない」

「兄さん……」


ウティルは真由美を思い優しく微笑んだ。
兄の言葉、そして微笑を見つめベルシダは泣きそうに顔を歪め目を伏せる。
悲しむ妹にウティル何も声をかけることなく主を思い黒い物を見上げる。
ウティルが見上げた瞬間下から黒い物が消えていく。


「真由美…!」


喜助は悲痛の声で娘の名を呼ぶ。
ウティルも目の前の光景に言葉を失う。

真由美は、無残な姿となっていた。

153 / 158
| back |