「真由美お嬢様、トキです。」
「どうぞ」
トキは真由美に呼ばれ、すぐさま真由美の部屋へ向かい、障子の前で膝ま付き真由美の了解を得て障子を開ける。
しかしそこには真由美しか居ないはずなのにもう一人、居たのだ。
「あの、真由美お嬢様…この子は…」
「この子は…」
「真由美ちんの友達のやちるだよ!」
「真由美…ちん!!?」
「そうだよね?真由美ちん!」
「うん、そうだね。」
やちるに満面の笑みを向けられ、真由美は優しくやちるに微笑み返す。
「お友達、ですか…」
「そうなの。だから外で遊びたいんだけど…」
「外…ですか…」
トキは考えるように顎に手をやる。
真由美は座ったままトキを見つめる。
その顔には何時も通りあまり表情がない。
やちるは自分の時とは違い、表情を少しだが失くす真由美を見て少し優越感を感じる。
「なりません。」
「何故?そう遠くは行かないわ」
「怪我をなさったらどうなさるのです。」
「怪我なんて気にしてたら何も出来ないと思うの」
「もし誘拐されたら喜助様に面目が立ちませんわ」
「誘拐犯など早々いません」
「しかし世の中なにが起こるかわかりません…お嬢様の身に何かあれば喜助様は悲しまれます。」
「………………」
ああ言えばこう言う。
真由美もまさかここまで過保護とは思いもしなかった。
しかも父の名を出されては何もいえない。
多分真由美が誘拐や事件に巻き込まれたら父の喜助は血眼になって探してくれるだろう。
そして犯人を痛めつける可能性が高い。
喜助の親馬鹿は異常だということは娘の真由美はよく分かっている。
そして父の上司である夜一もその異常の人の中に入っている。
「どうしても、というのでしたら庭園なら構いません。」
「庭園…」
確かに浦原家の庭園は広い。
しかも何個もある。
何故そんなに必要なんだ、と言いたくなるほどある。
外は駄目だったが庭園ならいいという事で、真由美はやちるの方に目を向ける。
「やちるは真由美ちんと遊べるならどこでもいいよ!」
「やちるちゃん…」
トキのことなど忘れたかのように二人は笑い合う。
微笑む真由美を見たトキは不法侵入であろう少女を咎める気になれなかった。
ほんと言うと、トキだって外に出して遊ばせてやりたいのだ。
どこかの三流小説ではないが、身代金や、恨み目的で誘拐や傷つけられる事だってあるかもしれない。
愛するが故に過保護になってしまい、非現実的な事を考えてしまう。
そしてもし本当に起こってしまったら当主である喜助に顔向けできない。
喜助は娘の真由美をトキ達以上に愛しているのだから。
怪我などしてもいいように自分が側にいるからいいかと、トキは見張る気満々でいる。
17 / 158
← | back | →