(19 / 158) 浦原娘主 (019)

「ただいま帰りましたよ〜」

「旦那様、お帰りなさいませ。…おや夜一様に砕蜂様…」

「久しかったな。邪魔するぞ」

「邪魔する」


喜助が帰ってきて出迎えに出たのは愛娘ではなく真由美の世話係りのトキだった。
トキは夜一と砕蜂の姿を見て目を丸くする。
だが長年浦原家に仕えているので突然の訪問に慣れているためか、すぐ笑顔で対応する。
多分この屋敷で飲むのだろうとトキは思い、後で料理長にツマミを作るよう言わなくてはと考えながら何時もの部屋へ案内する。


「真由美サンはもう寝てるんスか?」

「あ、はい。お友達と遊ばれお疲れになられたのでしょう。お風呂に入られたらすぐお休みになられました」

「お友達…?外に出たんスか?」


友達…あの子に友達…とブツブツ言いながら歩く喜助はとても気持ち悪い。
その証拠に夜一と砕蜂は少し離れて歩く


「はい。やちる様と申しておりました。」

「やちる!?」

「え…あ、はい…旦那様?」


行き成り大声を出した主人にトキは困惑し、喜助に振り返る。
喜助は唖然としていて、頭を抱えていた。
夜一も砕蜂も、驚いた顔をしている。


(何か問題のある子なのだろうか…?)


とトキは不安に思う。
もし問題のある子供なら遊ぶのを許したトキが悪いのだ。
そして聞くと今までずっと真由美と遊んでいたらしく、気付かなかったこの屋敷の者も責められることになる。


「き、喜助様!!申し訳ありません!!」

「は…はい?」


急に土下座した古株の使用人に戸惑う喜助。


「なんで土下座を…というかどうしたんスか!?行き成り…怒ってないんで顔を上げてください!」

「しかし……」

「喜助、もしやトキはやちるを悪い人間と勘違いしているのではないか?」

「へ…?」

「なるほど…」


今まで黙って見ていた夜一が口を出し、喜助はそれに納得する。
トキは夜一を見つめ、『違うのですか?』と首を傾げる。


「やちるサンは別に悪いお人じゃないッスよ。まあ、ちょっと問題がありますが…」

「問題とは…?」

「あー…彼女は十一番隊の副隊長なんスよ…」


言い難そうに目を逸らしならがら言う喜助の言葉にトキは絶句し、気絶する。
喜助は慌てて彼女の身体を支えたため身体を打ち付けることはなかった。


「気絶するか?普通…」

「しょうがないっスよ。トキは真由美サンの世話役なんスから。」

「……だからって…」


それではやちるが可哀想ではないか?と夜一は思う。
そんな夜一に気付かない喜助は使用人を呼んでトキを運んでもらっていた。
そして別の使用人に部屋に案内してもらい、お酒とツマミを運んでもらい、三人で飲んでいた。


****************


「お父さま…」


襖が開き、出てきたのは愛らしい子供だった。
寝巻き姿でまだ眠いのか目を擦り喜助のところまで覚束ない足で歩く。


「真由美サン、起きたんですか。ダメじゃないですかこんな格好でお部屋を出ちゃ。」

「んー…」

「真由美サンは可愛いから誘拐されちゃいますよ?それにその格好はアタシしか見せちゃ駄目ですよ?」

「んー…」


そう言って喜助の膝の上に座ってうとうとしてた真由美を夜一と砕蜂に隠すように上着で包み込み、抱き締める。
にやにやと気持ち悪い顔と言葉の喜助を信じられないような顔で見る夜一と砕蜂。


「それに誘拐されたらアタシと離れ離れになっちゃいますよー?」

「やー…」


ちゃんと聞いているのかどうか分からないが、離れ離れになると聞き真由美は喜助に抱きつきイヤイヤと頭を横に振る。
喜助はその仕草にノックアウト状態。
そんな喜助にドン引きな二人。


「もー!何なんですか!!可愛すぎるでしょ!!!お二人もそう思いませんか!?思うでしょう!?」

「そうじゃの、真由美は可愛いのう…」

「…………」

「おおっと!!夜一サンと砕蜂サンでも流石に真由美サンをあげませんよ?というか触っちゃ駄目です。見ちゃ駄目です。」

「「………………」」


予想以上の親馬鹿ぶりにドン引きどころじゃなく、真面目に真由美の将来を心配する二人であった。

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