(37 / 42) 一護夢 (37)

藍染の反乱から2日。
あかりは一護君の病室に居た。
織姫の治療のお陰で大分良くなった一護をあかりは見つめる。


「あかり」

「浮竹さん…」


名前を呼ばれ振り向くと浮竹がいた。
その手にはお見舞いなのだろうか、花を持っていた。


「わぁ、ありがとうございます!」

「いや…いいんだ。こんなところじゃあかりのほうが気が滅入ってしまうだろうからね」

「……ありがとう、ございます…本当…なんて言っていいか…」

「あかり…?」


花を受け取り俯くあかりに浮竹は首をかしげる。


「…浮竹さんが私なんかを匿ってくれなければ私は今頃病室のベットで寝ていたかもしれません…」

「あかり…」

「浮竹さんは本当にいい人ですね。敵だった私をルキアちゃん助けにきたからという理由だけで匿ってくれるなんて…」

「そ、れは違う…」

「え…?」


浮竹の言葉にあかりは顔を上げる。
顔を上げ浮竹の顔を見ると真剣な顔をしてあかりを見つめていた。
何か緊張しているようにも見える。


「君が、俺の………姪だからだ…」

「…………め、い…」


あかりは浮竹が何言っているのか分からず固まる。
小さく呟くあかりに浮竹は頷く。


「あぁ、君は俺の弟の娘だ」

「…そんな事…言われても……私…両親とも人間だし…私だって…人間、だけど…」

「…言いにくいが…君は養子に出されたんだ…」

「…ッ!?」


絶句するあかりに浮竹は気まずそうに芽を逸らす。
そしてあかりの隣にあった椅子に座る。


「俺の弟は…君の父親はね、あかり…あかりの母親と現世で知り合い恋に落ちた……俺達は勿論反対したが最後は折れたんだ…そして君が身篭り私達は君の誕生に喜ぶ…はずだった…」

「はずだった…?」

「あぁ、はずだった。だけど母方の一族が父親との結婚に反対しててね。君の両親は駆け落ちして身を隠してたんだ」

「か、駆け落ち!?」


違う所で驚くあかりに浮竹は苦笑いする。


「駆け落ち言っても俺達には居場所を教えてくれたからちょっと違うかな?……とにかく、身を隠しながらも幸せだった弟は君という宝物を得たんだ…だけど母君の一族が君と弟達を引き離したんだ…」

「なんで…」

「…"ロイムリヒ"というのは知っているかな?」


"ロイムリヒ"と言う言葉にあかりはしばらく考えるが首を振る。


「そうか。ロイムリヒというのはクインシーと同じく数が少ない一族なんだ」

「数が…」

「あぁ、その原因は力がある代わりに体が弱く、寿命が少ないからだと言われているからだ…ロイムリヒは空間を操る種族だといわれている。」

「空間…」


先ほどからあかりは浮竹の言葉をオウムのように繰り返すしかできない。
だが頭では理解しようと、受け入れようと必死だった。


「一族は数か少ない。しかも寿命も短い。だからこそ他種の血を受け継ぐ事は許されない…そう考えていたのだろう。母君の一族は君と離れ離れにさせようとしたらしい。…だが……」


説明を途中で止める。
そんな浮竹にあかりは首をかしげ見つめる。


「君の母君は……君を別世界に送り命を散らした…」

「!!…別…世界…!?」


あかりは驚愕し絶句する。
口元を手で覆い目を泳がす。


(別世界…という事は私は元々この世界の住人だったってこと?
そんな事ってあるの?
あぁ、でもこの世界に帰ってきたことすらありえない…こと…って待って…)


ある事に気付いたあかりは浮竹を見る。


「待って…じゃぁなんで私ここにいるの…?」

「それは俺もわからない…だがロイムリヒの血を受け継いでいるからと言って自然に力が発動する、というわけではないらしい…だから…」

「誰かが…私を…」

「あぁ、それが出来るのは同じロイムリヒの人間だろう…」

「……………」


あかりは俯く。
俯くあかりに浮竹は何もいえない。
だがあかりは直ぐに顔を上げ浮竹を見る。


「お父さんは…?」

「え?」

「お父さんは生きてるの?」

「それは…」


浮竹はあかりから目を逸らす。
そんな浮竹にあかりは悟る。


「死んだのね…何で…」

「…弟は…ロイムリヒに…殺されたんだ…」

「!!」

「………あの子も必死に君たちを守ったらしいが守りきれなかったらしい…」

「そ、んな…私が…私のせいで…」

「それは違う!」

「違わない!!!」


浮竹はあかりの肩を掴む。
だがあかりは浮竹の手を拒もうと暴れる。
立ち上がった時椅子が倒れる。


「私が!私がっ…!!生まれなければお父さんもお母さんも死ななかった!!静かに暮らせたんだ!!私が…!!」

「それは違う!違うんだ、あかり!!」

「…っ!!」


暴れるあかりを浮竹は抱きしめる。
抱き締められ身じろぐ。
浮竹の声にあかりは肩を揺らす。


「君を身籠ったから弟達が死んだわけじゃない!…弟達が身を隠れるのは限界があった……いずれにせよ弟達が見つかる日は来ていたはずだ…だから君のせいじゃない…」

「……………」

「それに俺達は嬉しかった…君が授かったと弟に聞いた時両親より俺達が一番喜んだんだ…会ったら何してあげよう、会ったらどんなことをしたら喜ぶだろう…一族全員で君に会うのを夢見ていたんだ…!だから…そんな事いわないでくれ…自分を否定しないでくれ…」

「―――ッ!!」


あかりは浮竹に縋り泣く。
両親の死に、浮竹の言葉に今まで押さえていた悲しみが湧き出たのだ。
自分の胸で泣き叫ぶ姪に浮竹は優しく髪を撫でる。

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