「けほっ」
ポタ…
ポタ…
手の隙間から血が垂れ落ち布団に赤い粒が幾つか出来る。
あれから数週間布団の中で安静にしていた。
時々吐血が出てはお父様が騒ぐ。
感染病ではないとの事で数日前から夜一様たちがお見舞いに来てくれた。
寂しかったから嬉しかった。
でも吐血は空気を読まない子らしく、皆の前でも吐血してしまう。
それで皆に心配をかけてしまった。
白哉様なんて自分のハンカチで血を拭ってくれた。
みんな私を心配してくれる。
生前の父も母も弟も私が風邪引いたとき心配してくれたことを思い出してしまう。
まだ、姫椿のことは話していない。
話したらお父様と白哉様が絶対頷いてくれないのは目に見えてる。
だから完全に身体が完治したら言おうと思っている。
****************
「真由美、本当に大丈夫か?」
「もう、お父さまも白哉さまも心配性ですね」
「しょうがないだろう、お前が心配なんだから…」
わかっておりますよ、と座って言う私を心配した目をした白哉様が見つめる。
白哉様は少しの間だがお父様が居ない間居てくれる。
白哉様にも修行があるのに申し訳ないと思っているのが分かったのか白哉様は『修行よりお前だ』と言う殺し文句と微笑みで私を黙らす。
王子の微笑みは一撃必殺ものだ。
私は笑っていたが咳込んでしまう。
「真由美!」
白哉様は急いで私の背中を擦ってくれる。
それで少し落ち着き、咳は弱まる。
私は安定し始めると布団に寝かされた。
「ほら!寝てないからだぞ?」
「でも、最近は血も出ませんし」
「それでも駄目だ。また再発するかもしれないからな」
「もう。白哉様ったら…」
私が咳き込むたびにこんな調子だから少し困ってしまう。
それでも本当に心配されているのがわかるので嬉しくも思っている。
「おうおう、白哉坊は過保護な兄じゃなぁ!」
「何しに来た!化け猫!!」
「何しにって見舞いじゃ。み・ま・い」
夜一様が来られると白哉様は対抗心が生まれ、今までの姿が一転して子供っぽくなる。
「それに大声だすと真由美に障るぞ?」
「……ちっ」
白哉様は舌打ちをしてそっぽ向いてしまう。
そんな白哉様に夜一様はにやにやと含み笑いをする。
私はそんな二人に苦笑してしまう。
「真由美、調子はどうだ?」
「砕蜂さま…はい、もう平気です。」
「何が平気なんだ。さっきも咳しておっただろ」
「でも…」
「血が出てないから平気だって言うのか?先も言ったが再発したらどうする。」
先も同じやり取りをしているのだが私は全く返す言葉が無い。
決して血が出なくなったわけではないのだから。
うー、と掛け布団を顔半分まで上げ唸って眉を八の字にする私と、頭を撫でながら諭す白哉様を見て夜一様はしみじみと呟く。
「まさかあの白哉坊が此処まで過保護になるとはなぁ…」
そんな夜一様に白哉様は睨む。
白哉様の睨み等気にしない夜一様はニヤニヤとまた含み笑いをなさる。
からかってるのが見て分かる。
一瞬白哉様は言い返そうとするが私がいるからか、グッと我慢する。
「おうおう、白哉坊にも我慢というものがあるようじゃなぁ…」
「貴様…!」
「もう、夜一さまったら…」
お父様が帰られる前はこんな感じで終わる。
それがとても楽しくて、このままみんなで居れたら、と思う。
太陽が沈みかけるとき、みんなは帰ってしまう。
夜一さまも砕蜂さまも白哉さまも頭を撫でてお帰りになられる。
玄関まで見送ると言って私は起き上がろうとするが、また白哉様に布団に戻される。
その繰り返しだ。
やちるちゃんも来てくれる。
みんなとは会わずに来るんだから偶然なのか夜一様達と会いたくないのか、わからない。
でもやちるちゃんは綺麗な花を持って来てくれる。
花瓶も花が沢山生けてあって見てて安らぐ。
銀嶺様も忙しい合間を縫って来てくださる。
銀嶺様もお父様と白哉様同様少しの咳でも大げさにするのだから面白く思う。
吐血をしてしまった時、銀嶺様もご自身のハンカチで拭ってくださる所を見てやはり血が繋がっているんだなぁと実感する。
お父様は帰ってきたらずっと側にいてくれた。
寝るときも一緒の布団には入れないが隣で寝てくれる。
白哉様も銀嶺様も夜一様も砕蜂様もやちるちゃんも嬉しかったけれどやっぱりお父様が一番嬉しい。
血の繋がりがないけれど、私はお父様の子で良かったと、思っている…
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