(30 / 158) 浦原娘主 (030)

あれから真由美は吐血もしなくなり、体力も回復し、やっと布団から解放された。
そして、今までの生活に戻ることが出来、銀嶺のところで学び、やちると駆け回り、喜助と白哉の過保護に苦笑いし、夜一と砕蜂に撫でられる日々が戻ってきた。


「お父さま、おはなしがございます」

「お話し、とは?」

「ざんぱくとうのことです。」

「………………」


真由美は喜助の正面に座り、真剣な目で喜助を見つめる。
喜助は斬魄刀という言葉に真剣な顔になる。


「私がたくさんの血をだしたのは…そのざんぱくとうが原因なのです。」

「姫桜サンっすか…?」


真由美は喜助のと言葉に否定し、首を振る。
すると喜助は険しい顔を更に険しくさせ呟く。


「まさか…姫椿…」

「…はい。」


真由美が頷くと喜助は顔を青くし、黙る。
真由美は沈黙を破り、聞きたかったことを聞く。


「お父さま、桜ちゃんのときも、椿ちゃんのときもそのようなお顔をなさってましたね。…なぜですか?」

「………そうっすね、お二人は真由美サンの斬魄刀っすから知っていてもいいでしょうね。」


少し間をあき喜助は何時もの口調に戻り、苦笑する。
それにホッとしながらも緊張はまだ抜けてない。


「まず姫桜サンは天使にも悪魔にもなる斬魄刀と知られています。」

「天使と、悪魔…?」

「姫桜は治癒に長けている斬魄刀らしいっす。」

「治癒…では悪魔と言うのは?」

「治癒には衰いますが攻撃力も長けているから、との理由でしょうね。主によって強弱があったらしいですが。」

「桜ちゃんは万能なんですね」


喜助さんはそう言う真由美を見て『そうですね』と微笑み、頷く。
真由美は自分の中にいる姫桜を思い浮かべ、目をつぶる。


「しかし…」


先まで微笑んでいた喜助は苦い顔し、ふと目線を下にやる。
そんな父に真由美は顔を上げる。


「姫椿サンは問題児なんスよ」

「もんだいじ?」


そうっス。と頷く喜助に真由美は首を傾げる。


「アタシ達も姫桜と姫椿が姉妹刀で二刀一対の斬魄刀とは知りませんでした。調べてみたところ過去に何度かやらかしたようですし…」

「やらかした…? 何を?」


喜助は言葉を止める。
真由美は眉を顰め首を傾げ喜助を見つめる。
急かすことをせず、じっと喜助が口を開くのをまつ。


「……人をね、大量に殺害しているんです…」


一瞬何を言われたか分からなかった。
でも殺害の意味を分からない歳でもない真由美は喜助を大きく開けたまま見つめる。
喜助は真由美から目を逸らす。


「過去…姫椿を使った死神は三人だけなんス。その三人は全て姫椿に精神を乗っ取られ同じ死神達や流魂街の人の命を奪い続け、最期には飽きたと言わんばかりに主を殺し姿を消した、と書かれていた。……それが本当か、嘘か。アタシには分かりませんが三人とも死んでいるのは本当です。」

「……………」

「多分三人目の死神が話で聞いた姫椿を呪縛、封印したのでしょうね。三人目の時はそんなに酷い被害ではなく、死因も空白になっていました。」

「……………」


真由美は何も言えなかった。
ただ父を見つめるしか出来ない。
周りの音なんて聞こえない。
喜助の声しか聞こえなかった。
喜助も言葉と切り、その場は静まり返っていた。
真由美は下を向いてしまい、喜助はそんな愛娘を見て心を痛める。

もし、姫椿サン達に選ばれなかったら今頃静かに眠れていたのに。
山賊に殺される運命だったのは可哀想だが強力な斬魄刀のせいで血を吐き、痛みに耐えるような苦しみを味わうことも無かった。

あの子がもし姫椿を起こしてしまったら。
喜助はそれを前から考えていた。
もしかしたら娘が死神になるかもしれないと思うと胸が張り裂けそうになる。
真由美には死神なんていつ死ぬか分からない職に就かずにずっとこの屋敷で暮らしていて欲しかった。
預かった時からその思いは変わらない。
このまま姫桜だけで済んだら良かったのに、と。
でも現実はそんなに甘くは無い。
あの子は姫椿を起こしてしまった。
認められていないから血も吐き激痛が起こるのかと思っているが…本当のところは娘と姫椿しか知らない。

30 / 158
| back |