喜助は黙って俯く真由美を見つめる。
「私は…」
突然真由美が口を開く。
そして顔を挙げ、喜助を見つめる。
「わ、たしは…椿ちゃんが好き。殺人者でも、主人を殺していても椿ちゃんが好き。……まだ、会ってそんなに経ってないけど嫌いにはなれない…」
「真由美サン…」
真由美の強い眼差しに何も言えなくなる。
「お父さま、私ね椿ちゃんに認めてもらったの。だけど椿ちゃんと触れ合った瞬間前のように血を吐いたり痛かったりした…」
「……………」
痛みを思い出したかのように真由美は顔を歪め、自分の胸を掴む。
「でも、それじゃ椿ちゃんがあまりにも可哀想だから…桜ちゃんに触れれるのに椿ちゃんだけ触れれないなんて……」
「……………」
「お父様が椿ちゃん達をよく思ってないのはわかってる。死神になるのも嫌がってるってのも…」
今まで俯いていた真由美は喜助を再度見上げる。
「私、椿ちゃんに触れて、三人で笑っていたいの!お願い!お父様!私を鍛えて!!!」
喜助は黙って真由美を見つめる。
何も言わない。
真由美を見つめるだけで表情は変わらなかった。
真由美も黙って喜助を見つめる。
手に力を入れているせいで白いのが余計白くなっているがそれを気にする余裕などない。
暫らく見合っていたが突然喜助が立ち上がり黙って部屋を出て行く。
真由美は慌てず、父の背中を見つめる。
****************
「はぁ…」
真由美は完全に喜助が見えなくなると溜息をつく。
分かっていた。
自分を愛してくれている父のことだ。
一筋縄ではいかないだろうと思い長期戦も覚悟の上で話した。
だが気が重いのは正直辛い。
また寝込みそうになるのを我慢してようやく言えたのだ。
絶対頷かせて見せる、と真由美は気合を入れていた。
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